マルゼン KG9 セミオート

マルゼン KG9 セミオート

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

マルゼンのKG9は、発売以来、豊富なバリエーション展開で常に時代のニーズに対応してきた。カート式のエアコッキングにはじまり、BV式フルオートフルオートガスブローバックと、過去にも3回レポートしているので、ご興味がおありの方はぜひそちらもご参照いただきたい。

今回紹介するのはインナーバレル後退式のセミオートガスガンで、シリーズ2世代目にあたる。
※ポンプアクションのKG9 SPが第2世代とする場合もある。

機構的にはこれといって大きな特徴はないが、実は付属のギミックが興味深い。クランク状のパーツをトリガーに取り付け、それを回すことで(さながらフルオートのように)連射が出来るというシロモノだ。

これはもちろん、サバゲーで求められる速射性に対応するために作られた物だが、あれば便利ではあるものの、残念ながらメインウェポンとして使えるほどの性能とはいい難かった。

ちなみにこの装置、実銃の世界ではクランクトリガーと呼ばれ、AR系のセミオートライフルなどに取り付けて、いわゆる「脱法フルオート」をするための道具として知られている。

また、クランクトリガーと同じ目的を持つ装置にバンプファイアーストックという物もあり、2017年のラスベガス銃乱射事件で犯人が使用していたため、これらのギミックとKG9というモデル自体の印象から、どこかアウトローなイメージがつきまとう。

他社からガスガンが続々と発売され、サバゲーブームが加速する1986年、マルゼンとしては人気モデル、KG9のガスガン版を早期にラインアップし、かつ、BV式ガスフルオートにも負けないファイアパワーを実現したかった結果がこのセミオートガスガン KG9だったのだろう。

ただし、急いで開発したからなのか、製品自体の出来ばえはシリーズ中もっともチープでオモチャっぽく、名銃KG9に重厚なイメージを持っていた従来ファンから敬遠されてしまったのは残念だ。
そのぶん、7,200円というシリーズ中最安価格だったので、手軽にガスガンを導入したいエントリー層には受け入れられた。

同じメーカーの同じモデルであっても、時代背景によって構造も雰囲気も大きく変わる、ということがよく分かる1丁である。

サイドビュー 左
サイドビュー 右
前作のエアコッキングガンはスチールプレス製のアッパーレシーバーがウリだったが、後に自主規制でプラスチック製となった。本エアガンはそれをそのまま引継ぎ、セミオートガスガン化したものだ。実銃のKG9はセミオートなのである意味リアルではあるのだが、KG9が持つ攻撃的なイメージが損なわれてしまったのは否定できない。

マズル バレルジャケット
バレルジャケットからむき出しのインナーバレルが見える。トリガーに連動し前後に動くという、セミオートガスガン定番のメカ。作動は安定しているが、これならハンドガンでも良いのではという印象はぬぐえない。

リアサイト
アッパーレシーバーと一体のリアサイト。実銃通り狙いにくいデザインだが、セミオートなのでちゃんと照準に使う機会は増えたはずだ。

グリップ
グリップ底部のバルブからガスを注入する。1チャージで約150発が発射可能で、燃費はかなり良かった。別売のガスジョイントを使用すれば外部ソース化も可能だった。
レシーバー側面にある台形のスライドスイッチはセフティ。

コッキングハンドル
前作ではスチール削り出しだったコッキングハンドルも、プラスチック製のキャップのような物になってしまった。動かない部分なので問題はないのだが、やはりチープな感じは否めない。

クランクトリガー
これがマル秘装置(?)のクランクトリガー。クランク棒を回すと中央に見えるカム状のパーツが回転し、トリガーを連続的に作動させるというものだ。ただし1回転で1発発射なので指で引くのと大して変わらないものだった。

トリガーに装着したクランクトリガー
トリガーに装着した状態。2本のネジで止める必要があり、ワンタッチで脱着できないというのは少々中途半端だったかもしれない。

マガジン
マガジンリップ
マガジンボトム
オールプラスチック製のマガジン。全体的なチープ感をさらに増長させてしまった部分だ。底部のつまみを回すことで20発ずつ4回切り替えて80発が装填可能なロータリー式。リップも装備されており、作動自体はいたってスムーズ。

パッケージ
この頃のマルゼン製品はポップなイラスト入りのパッケージが多かった。上箱に「マル秘装置で激射!!」とある。

マニュアル
取扱い説明書のエアーガン使用のマナーその2、「銃口は絶対に人に向けないこと」という部分に、実際はサバゲーブームでありながら建前にこだわらなければならなかったメーカーの苦悩を感じる。
また、シューティンググラスなどの目を保護するアイウェア着用についてはなにも触れられていないのも当時のエアガン事情が垣間見れる。マニュアルPDF (2MB)

DATA


発売年 1986年11月上旬
発売時価格 ¥7,200
全長 実測 357mm
重量 実測 823g
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガスセミオート
使用弾 6mmBB弾
装弾数 80発
平均初速 67.8m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/05/31


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