コクサイ S&W M19 6インチ

コクサイ S&W M19 6インチ

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

リアルさが身上のモデルガンが唯一、外観の点でエアガンに敵わない部分があるとすれば、それはリボルバーのシリンダーではないだろうか。もちろん、現在の主流となっているペガサス方式のリボルバーガスガンの場合、シリンダーはガスタンクでもあるため、そもそも実銃におけるシリンダーとは意味合いが異なる。

しかし、カートリッジ式のリボルバーガスガンでは、シリンダーの役割は実銃と同だ。したがって、そこには6つの穴が空いている(5連発なら5つだが)。シリンダーの先端にインサート鋼材を鋳込まなければならないモデルガンとは、ここが決定的に違うわけだ。

1986年にコクサイが発売した蓄圧式カートリッジ方式のガスリボルバーM29は銃刀法違反で検挙されたが、あれは、ハンマーがカートリッジの後端を叩くという撃発機構があったからで、いうまでもなく、コクサイのM19はグリップ内にガスタンクを持つ通常のガスガンだ。シリンダーが貫通していることに何の問題もない。

肝心のエアガンとしての性能は、リアルな外観とは裏腹に惨憺たるものだった。ガスルートがカートリッジ後端とフォーシングコーンの2ケ所で分断されてしまうため、バルブから放出されたガス圧をBB弾まで保つことが出来ず、結果的に精度はガタ落ち、BB弾の飛距離は7~8mも飛ぶかどうか、というヒドいものだ。

だがそれでも、コクサイのM19はそこそのヒットを記録した。それはとりもなおさず、「貫通シリンダー」に飢えていたガンファンが一定数存在した、ということだろう。BB弾を撃たず、シリンダーにダミーカートリッジを装填して楽しむ向きも少なくなかったようだ。

モデルガン時代、リボルバーで急成長し、その後、違法なリボルバーで検挙され、それでもなお、リボルバーのエアガンを作り続けたコクサイ。このM19を見ていると、「リボルバーのコクサイ」という称号はダテじゃないことを、しみじみと実感せずにはいられないのである。

コクサイ M19 左
2.5インチのラウンドバットグリップモデルから展開し、すぐ後にスクエアバットの4インチと、6インチモデルも発売された。バレルが取り外せて交換できるのも特徴だった。

コクサイ M19 右
コクサイはモデルガン時代からS&W M19を製造しており、スマートでリアルな外観には定評があった。金型がよく磨かれているためか、表面のツヤが美しく、成型時のヒケもほとんどない。コクサイの技術力の高さが感じられる。

フロントサイト
ランプタイプのフロントサイトには別パーツでレッドインサートが入れられている。マズルクラウンのRもほどよく丸みをおび、ライフリングの表現も力強い。インナーバレルは真鍮製。

リアサイト
リアサイトはプラスチック製で耐久性にとぼしく、残念な部分だ。コストダウンのためだとは思うが、なぜモデルガン用の金属製リアサイトを流用しなかったのか首をひねらざるを得ない。

シリンダー
最大の特徴といっても過言ではない貫通シリンダー。マルシンにも同様のリボルバーガスガンはあったが、実射性能を上げるためシリンダー前面の穴は6mmに細くなっていた。本作発売後、自主規制によりシリンダー内にパイプ状のインサートが入れられてしまい、残念ながらこの景色は見れなくなってしまった。

カートリッジが装填
カートリッジが装填されたこのアングルも素晴らしい。プライマーに相当する部分がガスルートの接点となるため、エアガンとしての実射性能はかなり低かったが、シリンダーストップやリバウンドスライドなど、それまでのガスリボルバーにはなかったモデルガン同様の機構が搭載されていた。

ハンマー
ハンマーノーズはダミーで実銃にくらべるとかなり短い。この部分でカートリッジ後端を叩かない、というのが合法であることの大きなポイントでもある。

グリップ下部
ガスの注入はグリップ下部からおこなう。オートマチックタイプのスライド固定式ガスガンと同じくグリップ内にガスタンクがあり、放出バルブはタンクのすぐ上に配置されている。

カートリッジ
.357マグナムフルサイズのカートリッジ。リム底部にはW-W SUPER MAGUNUMの刻印が入れられている。自主規制後は全長が短くなったり先端にゴムパッキンが露出したりと、リアルではない方向に改修されてしまった。

パッケージ
パッケージ上箱の写真にはドットサイトが搭載されている。シューティングマッチを意識していたのだろうが、ノーマルの状態では実射性能がまるで追いつかない。

マニュアル
マニュアル2
マニュアルの冒頭には、ビル・ジョーダンがM19のアイデアを出したという有名なエピソードが書かれている。フレームトップのネジを外すことで、異なる長さのアウターバレルに交換可能な構造であることがわかる。マニュアル.PDF (5.2MB)

DATA


発売年 1989年1~2月
発売時価格 ¥8,800 (2.5インチ)
¥8,900 (4インチ、6インチ)
全長 実測 293mm
重量 実測 598g (カートリッジ6発含む)
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガス
使用弾 6mmBB弾
装弾数 6発
平均初速 34.2m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/06/14


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