なぜ、あのフィールドは「また行きたくなる」のか
――運営7割という仕掛け
「検問所を奪取する。俺についてこい!」
――そんな言葉が、ごく自然に飛び交う。
ゲーム開始と同時に無線が飛び交う。
劣勢のチームに立ったスタッフが叫び、プレイヤーが応える。
ルールは理解しているはずなのに、気づけば映画のような“特殊作戦”になっている。
いま、サバゲーフィールドの差は、こうした瞬間にこそ現れている。
サバゲーフィールドの変遷
1990年代、まだ河原や山林で遊んでいた時代から、2000年代に商業フィールドが誕生し、2010年代には各地にフィールドが増え、「サバゲーブーム」と呼ばれる時代が訪れた。
週末に数百人が集まる光景も、決して珍しくなかった。
しかし、コロナ禍を境に状況は一変する。
来場者数は激減し、フィールドの淘汰も進んだ。現在では、集客できているフィールドと、そうでないフィールドの差が、明確に表れている。
なぜ、ここまで差がついたのか。
立地、規模、設備投資など、理由はいくつも考えられる。
だが、それだけでは説明できない部分も多い。
私自身、これまでいくつかのフィールド運営や監修に関わってきた経験から見ると、サバゲーフィールドの成否は、
「運営7割、フィールド作り2割、立地1割」
と言っても、決して大げさではないと感じている。
中でも重要なのが、「スタッフをどう位置づけているか」という点だ。
管理と演出、二つの運営スタイル
従来、多くのフィールドにおいてスタッフは「管理者」だった。
ルール説明をして、安全管理やタイムキープを効率よくこなし、事故やクレームを防ぐ。ブーム期においてはこれが最適解だったが、一方でゲーム内容が単調になりがちだった側面も否めない。
もちろん、こうした管理者型の運営は、現在においてもサバゲーの土台となる重要な要素だ。
安全管理や公平な裁定が徹底されているからこそ、参加者は安心してゲームに没頭できる。
そんな中、異なる方向性を打ち出しているフィールドも存在する。
サバゲーパラダイスに見る運営スタイル

関東圏で高い人気を維持しているフィールドとして、サバゲーパラダイスの名前を挙げる人は多いだろう。
同フィールドの特徴は、単に設備が充実していることではない。
もっとも大きな特徴は、スタッフの立ち位置にあるように思える。
一般的なフィールドでは、スタッフはオレンジ色のビブスなどを着用し、「運営側」として明確に区別されることが多い。
一方、サバパラでは、スタッフが迷彩服を着用し、トイガンを携え、プレイヤーに近い立場でフィールドに立つ。
ルール説明や進行管理を行うのはもちろんだが、それだけではない。
ゲーム中は無線で指揮を執り、時にはチームリーダーのように参加者を鼓舞する。
「あの拠点をとれば勝てるぞ」「いいか、お前ら、アメリカーノスに負けるなよ」
といった声掛けによって、尻込みしがちなチームの雰囲気が一変する場面も少なくない。
人数バランスの調整も当然行われているが、それだけに頼らず、「盛り上げ方」で不利を補正する場面も多い。
これは、単なる管理者ではなく、「演出者」「キャスト」として振る舞っていると言ってよいだろう。
もっとも、その前提として、安全管理やヒット判定といった基本動作が徹底されている点も見逃せない。
スタッフがゲームに深く入り込みながらも、運営としての役割を決して手放さない。その両立があってこそ、このスタイルは成立している。
世界観が生む没入感
サバパラの特徴は、スタッフの振る舞いだけではない。
フィールド全体には、「バルベルデ共和国」という架空国家の設定があり、映画『コマンドー』や『プレデター』に登場した中南米風の国をモチーフとした世界観が構築されている。

あえて「実在しない国家・勢力」を徹底している点は重要だ。 現実の情勢を模倣するのではなく、映画のようなエンターテインメントとしての「戦場」を再構築している。
ゲーム内では、「ドン・ディノス将軍」といったキャラクター設定や、「アメリカーノス」などの勢力(チーム)名も用意され、単なる背景設定にとどまらない“物語の骨格”が作られている。

こういった数々の設定をベースに、毎回異なるシナリオが用意される。
たとえば、航空支援付きフラッグ戦、基地攻略戦、要人警護ミッション、ブラックホークダウンをモチーフにした救出作戦、感染者が増殖していくアウトブレイク系シナリオなど、その内容は多岐にわたる。
いずれも単なる撃ち合いではなく、背景設定と勝利条件が明確に与えられ、参加者が物語の中で役割を担う形で設計されている。

たとえば、あるゲームでは、検問所に設定されたスタート地点に、スタッフが演じる車両が到着するところから始まる。 通行証の確認を行い、いったん通過を許可した後で、偽造だと発覚する。
「これは偽物だ! あいつらを追え!」
スタッフの一声とともに追撃が始まり、いつの間にかゲームがスタートしている。 ホイッスルやカウントダウンによる開始とはまったく異なる、“物語の流れの中で始まるゲーム”だ。

工兵・爆破ミッションでは、あらかじめ設置された爆竹に着火して爆破とみなす設定が採用されているほか、スタッフが発煙筒を使用してスモーク演出を行うこともある。

もちろん、これらは火気管理の徹底された専門スタッフが、安全を十分に確保した上で行う特別な演出だ。プレイヤー個人の火気持ち込みを許可しているわけではないが、煙と銃声に包まれたフィールドは、通常のサバゲーとは明らかに異なる緊張感を生み出す。
中でも人気が高いのが「航空支援ルール」だ。
無線で指定地点に空爆要請を行うと、スタッフが現地まで走り、範囲内のプレイヤーを敵味方問わずヒット扱いにする。
さらに、対空火器を持ったプレイヤーが航空支援スタッフを迎撃できるという設定もあり、演出でありながら戦術的な要素も兼ね備えている。
また、セミオート限定戦であっても、分隊支援火器やマシンガンなどの重火器系プレイヤーには、制限付きのフルオート射撃が認められる場合がある。
いわゆる「ロマン武器」を活かすための配慮であり、役割分担を明確にするための仕組みでもある。

拠点名も記号だけではなく、兵舎、通信施設、検問所、診療所といった名称が使われる。
マップはグリッド化され、無線ではフォネティックコードが飛び交う。それを聞いているだけでも臨場感がある。
こうした仕掛けによって、参加者は自然と“役”に入り込み、没入感の高いゲーム体験が生まれている。
なぜ簡単に真似できないのか
こうした運営スタイルを見て、「真似すればいいのではないか」と考える人もいるかもしれない。
しかし、現実はそれほど単純ではない。
キャスト型運営には、極めて高い人材力が求められる。
- サバゲーへの深い理解
- 状況に応じて判断できる即興力
- 参加者と信頼関係を築くコミュニケーション能力
- チームをまとめる指導力
- 場を盛り上げる演出力
- 空気を読み、出過ぎないバランス感覚
これらを兼ね備えたスタッフを揃えるのは、容易ではない。
しかも、キャスト型は属人化しやすいという問題も抱えている。 特定の人物に依存すれば、その人が抜けた途端に運営が成り立たなくなる。 教育コストや人件費も増大するため、経営的にはリスクの高い選択でもある。 効率化を重視してきた従来型モデルとは、まさに真逆の発想だ。
とはいえ、こうした難しさを乗り越えた先にこそ、運営と参加者のあいだに生まれる「相乗効果」がある。
「あのフィールドは、また何か面白いことをやってくる」。 そう期待されるようになると、今度はプレイヤー側が自発的にネタや装備、演出を用意して参加するようになる。
運営が仕掛け、参加者が応え、さらに場が面白くなる。 こうした好循環が生まれたとき、フィールドは単なる遊び場ではなく、“文化”へと変わっていく。
それは、単にイベントを用意するだけでは生まれない。積み重ねられた信頼関係と期待値があってこそ成立するものだ。
サバパラは、このキャスト型運営によって熱狂的なファンを生み出し、多くの熱心なサバゲーマーとの人脈を構築してきた。その結果、貸切イベントやコラボ企画、協力者も増え、コミュニティとしての厚みが生まれている。
注目すべきは、定例会参加費が千葉県の相場よりも高めの価格設定であるにもかかわらず、 この人気を維持している点だろう。 それは、「価格以上の体験価値」が伝わっている証でもある。
設備投資だけでは説明できない理由
サバパラについては、「設備にお金をかけているから人気なのではないか」という見方もある。
確かに、フィールド造作には相当なコストがかかっている。
しかし、それだけで現在の人気を説明することは難しい。
実際のところ、立地条件は決して恵まれているとは言えない。 インターチェンジからの距離も近いとは言えず、駐車場も広大ではない。 フィールド形状も、いわゆる“瓢箪型”のようないびつなレイアウトだ。
それでもなお高い集客力を維持している点は、立地や設備だけでは説明できない強みがあることを示している。
設備はいずれ他のフィールドも追いつける。 だが、世界観を運営し、現場で演出できる人材は簡単には育たない。
本質は「人」にある。
そう考えるほうが、実態に近いように思える。
一つの成功モデルとして
すべてのフィールドが、同じ方向を目指す必要はない。 現実の情勢や社会的な空気感を背景に、ミリタリー色を抑えたスポーツ・レジャー寄りの運営を選ぶフィールドも増えている。 それもまた、時代に合った一つの選択だ。
管理者型運営の持つ安定性や安全性は、今も大きな価値がある。 効率化が悪いわけではない。
ただ、プレイヤー人口が伸び悩む現在において、サバゲーフィールドに求められているのは、「どんな魅力ある体験を提供できるか」という点では共通しているのではないだろうか。
サバパラは、その一つの答えを示している。
スタッフを「キャスト」として位置づけ、世界観を本気で運営すること。
それこそが、参加者を強く惹きつけ、心に残る“戦場”を生み出している。
あくまで一例に過ぎない。 しかし、これからのサバゲー運営を考える上で、大きなヒントになるはずだ。
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