潰れるサバゲーフィールドの条件

潰れるサバゲーフィールドの条件

2018年、関東ではサバゲーフィールドが多く潰れた年だった。
ハイパー道楽で把握しているだけでも、2016年に5件ほどだったのが、2017年には11件、2018年には16件と、営業を終了してしまったフィールドは増加している。中にはオープンして数か月でなくなってしまったフィールドもあった。
理由はそれぞれだと思うが、関東の様々なフィールドで遊んでみて、こんなフィールドは潰れやすいんじゃないかという要因をいくつか提起してみたいと思う。

サバゲーフィールドの乱立が要因?

サバゲーブームと呼ばれたのは2010年以降だろうか、リーマンショック(2008)や東日本大震災(2011)以降、各地に有料サバゲフィールドが出来始め、一気に盛り上がりを見せたように感じる。
とくに千葉県を中心とした関東エリアにはサバゲフィールド向きの土地が沢山あったことで、現在でも120件近くのサバゲーフィールドが営業している。1ヶ月に1件のペースで遊びに行ったとしても全部回るのに10年かかる計算だ。しかもその半数が千葉県に集中するという過密っぷり。
これだけ選択肢があれば、どこに行くかはユーザーの気分次第、ということになるだろう。

ここ数年、多くのフィールドオーナー・スタッフに聞くと、「フィールドが乱立し過ぎてお客が分散した。」という話が返ってくる。

スタッフにサバゲーの知識がないフィールド

メディアで取り上げられたり、芸能人がサバゲーを趣味と公言したりすることで、サバゲーが盛り上がりを見せると、当然ビジネスとしてサバゲーに参入しようという企業も増えた。
とくに、サバゲーフィールド経営は他の業種に比べて低リスクと思われているようで、気軽に参入する企業もある。

オーナーはあくまで企業として出資するのみで、その会社の社員に辞令が下って、とくにサバゲーなんかしたこともないのに店長を任される、というケースも多い。
その店長がアルバイト面接したりするものだから、「サバゲーやったことあります」といっただけでバイトが雇われてしまい、経験者としての意見を委ねられたりする。

仕事だからこそ、深い知識を取り込んでお客にサービスしたいと考える積極的なスタッフもいるが、一方でサバゲーに一切興味を持つことなく、他店に遊びに行ったり情報収集したり、あるいは業界に交友関係を広げることもなく、ただ日々の業務を淡々とこなすだけ、というスタッフも一定数いる。
サバゲーの楽しさを理解することなく運営すれば、お客がなにを要望しているか、何に不満を持っているのかもさっぱりわからないままで、自ら企画したり、改善案を出したりということもない。
オーナーは収益が上がらない理由もわからず、思った以上に儲からないから閉店しようか、という流れになるのは必然だろう。

地権者や近隣住民ともめるフィールド

エアガンやサバゲーという趣味はどうしても少なからず世間から誤解されがちで、銃を持った迷彩服の男たちが集まる場所が自分の家の隣や、子供の学校の近くにあるのは許せない、という理由で揉めるケースは昔からある。週末の度に生活道路が県外ナンバーの車で渋滞し、朝から夕暮れまで、ときには夜中まで銃声が響くなどの騒音問題もある。
また、ほとんどのフィールドは地主から土地を借り、賃料を払って運営しているが、この契約更新時に賃料でトラブって更新できずに移転を余儀なくされたり、賃料を滞納して契約を解除されるというケースもある。

法規を守らないフィールド

アウトドアフィールドの場合、予定地が都市計画法の市街化調整区域なのかの事前確認や役所との調整はもちろん、地目が山林だった場合、樹木の伐採にも一定の制限がある。必要以上に樹木を伐採したり、造成したりすると地目変更によって手続きや固定資産税が増えて、地権者から断られるなども良くある話。
地目が畑などの農耕地の場合は農振法の解除申請や、農地法の農地転用申請が、保安林の場合でも解除申請手続きが必要だ。
大規模な土木工事を伴う場合は、文化財保護法による埋蔵文化財の事前確認や発掘調査が必要な場合もある。

また、事務所やトイレ、セフティエリアなどを建築物として建てる場合は、建築基準法の規定により建築確認申請を提出し、行政の建築主事、もしくは民間の指定確認検査機関の確認を受けなければならない。

また、食事を作って提供する場合は、食品衛生責任者の設置が必要だし、警察への営業届けもしたほうがなにかとトラブルも避けられる。

インドアフィールドであればさらに消防法に基づき、防火・難燃素材による構築、避難経路の確保、火災報知機や消火設備の設置等を行ったうえで、管轄消防署による消防検査を事前に受けなくてはならない。床面積などのテナント状況によっては防火管理者の設置も必要だ。

しかし、フィールド運営者がそれを知らなかったり、行政と折り合いがつかないまま進めてしまったりして、あとになって検査・指摘を受けて是正措置や現状復帰を求められることもある。

また、トランシーバーや音響設備などで技適を取得していない海外向けの無線機やBluetooth製品を使うと電波法違反となる。

不衛生なフィールド

トイレなどの水回りが不衛生なフィールドはどうしても避けがちになる。他に強烈な強みがあるフィールドならばよいが、初心者や女性プレーヤーを連れて行くなら快適なフィールドを選ぶだろう。
また、レンタルウェアを洗濯せずに何か月も放置したままとか、リセッシュだけで済ますとか、フェイスマスクゴーグルを綺麗に洗浄しないとか、ウソでしょ?ってくらい不衛生なフィールドも現実問題あった。
またインドアフィールドでは床に散乱したBB弾をどれだけ頻度高く清掃するかも大事。BB弾で足を滑らせて転倒されては困るし、週末定例会の朝イチに床に1週間分のBB弾が散乱していたら気分も盛り下がる。

オープン後に改善しないフィールド

オープンしたときに完璧なフィールドというのはまずない。あれこれ足りないグッズもあるし、改善するべき強ポジションのバリケードや、客層に合わせた追加設備もあるだろう。
なにより、フィールドは遊べば遊ぶほど劣化してゆくものだ。BB弾による被弾や、雨風にさらされてバリケードは壊れていく。
どこが壊れかかっているとか、ゲーム展開で有利不利なのか、スタッフがフィールドを隅々まで把握していないフィールドは危険。毎日の営業終了後、あるいは始業前に必ずフィールドを清掃、見回りをし、スタッフがそのフィールドを知り尽くし、スタッフみんなで共有して改善しないフィールドはいずれ潰れる。

年間を通じてフィールドを保全しない、メンテナンスの予算が計上されていないフィールドは次第にその魅力を失っていくといってよい。穴だらけになったオブジェ、ボロボロになった壁のエッジは戦場の雰囲気を醸し出すかもしれないが、危険でもある。腐った櫓に人が乗ったら崩れて怪我したなんてなったらそれこそ営業終了のお知らせだ。

WEBサイトが適当なフィールド

多くの人はサバゲーに行くとき、そのフィールドの公式サイトを見るだろう。その公式サイトでフィールドの魅力が伝わらなければ、候補から外れてしまう。
定例会の日程やタイムスケジュール、予約や昼食の有無が掲載されていないのは論外として、フィールド内や設備の写真、フィールドマップが掲載されていないとか、レギュレーションすら掲載されていないフィールドもある。また、連絡しようにも問い合わせの電話番号も、メールアドレスやフォームすらない、といった公式サイトもある。

そして全く情報が更新されていないサイトも不安になる。本当に定例会が開催されているのか、何人くらいのプレーヤーで遊べそうなのかなど、公式SNSをトップページに張り付けるなり、フォトライブラリを掲載するなりしてほしい。そういう事を怠るフィールドは新規顧客を獲得できない。
「客が増えない! なんでだ!?」と思ったら、まず公式サイトの情報を確認したほうが良いだろう。

イベントやキャンペーンをしないフィールド

ユーザー任せというか、消極的でイベントやキャンペーンをしないフィールドはどうにも楽しそうに思えない。なにも芸能人を呼んだり、プレゼントを用意したり、割引をしたりするだけがイベントではなく、例えば春なら卒業や新生活、秋ならハロウィーンやお祭り、冬ならクリスマスや初撃ちといった季節をテーマに、ちょっと趣向を凝らした企画ゲームを開催することは低予算で可能だ。1年中何らかのイベントをテーマにすることは、巨大テーマパークから商店街の小さなショップまでやっていることであって、フィールドだってこれに乗っかったって何ら問題ない。季節テーマ以外にもワンメイクマッチや、限定戦、設定戦を盛り込んでいくこともアリだろう。
お客に勝手に盛り上がってくれ、と委ねているフィールドはいずれユーザーの足は遠のいていく。

告知下手なフィールド

せっかく楽しそうなイベントを開催するのに、告知下手なフィールドは多い。公式アカウントのフォロアーが数百人程度だと、SNSで告知しても常連しか見ていないということになってしまう。拡散力、告知力の弱いフィールドは誰にも知られずにある日ひっそりとその幕を閉じることになる。

ちなみにメディアで紹介してもらいたいならば、わかりやすい資料を用意するのが良いだろう。以前、こんなメールが届いた。「なんでウチのフィールドのイベントを紹介してくれないんですか? イベント情報はここ(URL)です。」そのページを開くと、予定されている複数のイベントが箇条書きで書いてある。どのイベントを紹介すべきなのか、詳細情報や写真はないのか、さっぱりわからなかった。

一方で、「イベント告知ご協力のお願い」と題して、ワードファイルにイベント概要や参加申し込みURLをキッチリと記載し、前回の写真やイベントのチラシデータ、ゲストの写真までダウンロードURLを添えて送ってきてくれるフィールドもある。どちらが取り扱ってもらいやすいイベントだろうか?

協力者を作らないフィールド

サバイバルゲームは数名のグループやチームといった単位で参加することが多い。チームメイトの要望はあるにせよ、最終的にどのフィールドかを決定するのはチームリーダーだ。つまり飲み会で言うところの幹事だが、幹事をないがしろにすれば、そのグループごと客を失うことになる。
また、個人レベルでも100名以上のプレーヤーを集められるゲームイベンターはフィールドにとって最も心強い協力者となるだろう。こういった影響力の強い人物の人脈を掴めないフィールドは自力で集客しなくてはならず、じり貧を余儀なくされる。
幹事やイベンターのみならず、ミリタリー業界に人脈を広げていけば、コラボしたりと様々な展開に発展してゆく。
単独で集客しようとしているフィールドは多いが、協力者の人脈作りや、秋葉原のショップ周りといった営業活動こそ、重視すべきポイントではなかろうか。

今後フィールドは減るのか?

2013年11月に「また遊びたくなるサバゲーフィールドの条件」という記事を書いた。この時から5年が経過し、サバゲーフィールドを取り巻く環境も随分変化したように思う。
トイガン業界的に言えば、国内最大手の東京マルイの売り上げは、リーマンショック以降変わっていないと聞いているし、大手ミリタリー・サバゲーショップでもここ数年の売り上げに大きな変化はないという。
つまり、グッズは売れているが、関東のサバゲーフィールドとしてはプレイヤーが減っているという認識があり、これはサバゲーマーが分散したか、減っているかのどちらか、あるいは両方だ。
もうひとつ、少子高齢化的な側面でみると、多感な時期にサバゲーブームにハマった団塊ジュニア世代がそろそろ50代に突入する。これまでの調べからもサバゲーユーザーは50歳を境に一気に減るという傾向があり、若年層の獲得と同時にシニア世代にも楽しめるサバイバルゲームフィールドが求められるのではとも考えたりする。


2018/12/30



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