東京マルイ ガスガン P320 フルサイズ
東京マルイからP320がガスブローバックガンとして登場。FCU(ファイア・コントロール・ユニット)と呼ばれる機関部を独立させた実銃のモジュラー機構を忠実に再現。
東京マルイ ガスガン P320 フルサイズの製品版を購入したのでさっそくレビューしていこう。

パッケージはマットブラック。少し柔らかな手触りで、保護用ビニールの外袋に入っている。パッケージサイズは31.5cm×19cm×5.5cm。

蓋を開けるとGLOCK 17 Gen5 MOSと同様の内蓋。

そしてその下に本体やマガジンが収まっている。内蓋の裏には取説が入っている。マルイはこの梱包方法を気に入ったのだと思われる。パッケージ内容は本体、マガジン、クリーニングロッド、保護キャップ、フォロアーストッパー、BB弾少々、取扱説明書類。

実銃のSIG P320はSIG SAUER社が開発したストライカー式のポリマーフレーム・オートマチックピストル。弾薬は9mm×19を使用し、米陸軍の新拳銃トライアル(MHS)にXM17として参加、2017年1月にトライアルを勝ち抜き、ベレッタ社のM9に代わり米陸軍制式拳銃の座を奪った。

東京マルイはこのSIG P320をモデルアップ。最初の製品発表は2020年7月のマルフェスオンラインだったので、実に5年以上の歳月を費やしてようやく発売となった。

角ばったスライドが新世代のオーマチックピストルをイメージする先進的なデザイン。前後にセレーションの入ったスライド、フレームともに樹脂製で、スライド左側にP320の刻印がある。スライドとフレームでは微妙に塗装の色味を変えてある。スライド素材にはG17 Gen5 MOSで採用されたカーボン入り強化樹脂を使用している。

フロント、リアサイトは金属製の別パーツでドブテイルにはまっている。

フレーム側面には小さな穴が開いていて、個体ナンバーが刻印されたFCUが見える。このナンバーはシリアルではないが、ユニークナンバーで管理されているという。チャンバー横には口径の刻印、エキストラクターは金属製の別パーツ。サムセーフティとスライドストップも金属製で左右から操作できるアンビ仕様となっている。

ピカティニーレイル準拠のアンダーマウントレールを備える。現代ポリマーフレームオートにしては珍しく、トリガーセーフティのないスッキリしたデザインの金属製トリガー。形状は改修後の薄型を再現。トリガープルは1.4kg。

手元にあったSKYWOODS PL500を装着してみたら、なかなか似合う。

フロント、リアサイトにはホワイトドットが入る。またスライドリアキャップやエキストラクターSPガイドは金属製の別パーツとなっていて、こだわりの質感だ。
サムセーフティは開発者が実銃の操作感にこだわったと言っているように、カチッとしっかり目のクリック感がある。

スライドを引いてホールドオープンすれば、バレルが実銃同様にティルトダウンする。インナーバレルは長さ106mmの真鍮製で、マズルのテーパーも綺麗に処理されている。アウターバレルには薄くライフリングのモールドも入っている。スライド操作はとても滑らかで前進時にも引っ掛かる感触はない。

P320のグリップは角度が立った丸みを帯びたデザイン。滑り止め効果も高く握りやすい。実銃のP320はこのグリップフレームを交換して好みのサイズに変更できるモジュラー式だ。マルイはMサイズグリップを採用しているが、もしかしたら今後、別サイズグリップが発売されるかも?
トリガーガード後ろにマガジンキャッチ、グリップ後部にはランヤードリングがある。

スライドを分解してみよう。まずはテイクダウンレバーを125°回転させる。

するとスライドが前方へ引き抜ける。

アンダーハンマー式としたことで、ピストンストロークを最長化したとともに、実銃のストライカーユニットの雰囲気を崩さない見た目となっている。

スプリングガイドとバレルアッシーを取り出してみる。可変ホップアップダイヤルはチャンバー左横にあり、分解せずともホールドオープンしてチャンバーから指で操作できる。

テイクダウンレバーをフレームから抜くと、FCUが上方向へ取り出せる。実銃でFCUを取り出したことがあり、そのときは爪が割れそうなほど硬かったが、マルイのFCUは比較的すんなりと取り出せた。さすがマルイ!

マガジンは亜鉛ダイキャスト製で装弾数は26発。マガジンバンパー底部には本来SIGのエンブレムが入るが滑り止めのテクスチャとなっている。

実測重量は本体と空マガジン含めて685g、空マガジン単体は241g。

室内8mでハイパーターゲットを三脚で胸の高さにセットして実射してみる。
トリガーフィールはトリガーセーフティがない分、カッチリしている印象で引きやすい。立射、アイアンサイトでラフに撃ったが、ターゲット用紙センターに8cmに集弾した。筆者の腕だとこれくらいが限界だが、上手い人が撃てばもっと集弾するんじゃないかという命中精度の高さ。
リコイルの強さ、スライドスピードともにマルイの最近のガスブロハンドガンのなかでは平均的か少し上位くらい。めちゃくちゃリコイルが強いと言うわけではないが、HFC134aを使用して室温25度で初速は76m/s平均、作動も実に安定している。撃っていて安心感すら覚える完成度だ。
別売で32連のロングマガジンが発売しているので、そちらを購入すればさらにファイアパワーが増す。
マルイの人気モデルのハイキャパシリーズ同様に、ハンドガンナーにはおススメの、フィールドで積極的に攻めていけるガスブロだ。
そして、FCUを再現したり、アンダーハンマー構造にするなど、造形に対するこだわりも随所に見られ、さすがマルイと感じる。
こうなると期待するのが、本モデルのシリーズ化だ。
米軍採用モデルのM17(フルサイズ)やM18(コンパクトサイズ)といったミリタリーモデルを望むユーザーは多いだろう。コヨーテカラーにオプティクスを搭載できる仕様は、やはり魅力的だ。
一方で、気になる点がないわけではない。
本製品は2020年のマルフェス発表時に実射も披露されており、今回の発売までの長い期間を考えると、SIGとの正式ライセンス化を期待していたユーザーも少なくなかっただろう。かくいう筆者もその一人だ。
しかし、結果的にマルイ公式サイトや製品パッケージにはSIG SAUER社のライセンス表記が見当たらず、現時点で正式な提携は確認できない。
昨今のエアソフト業界を見れば、正式ライセンスを取得し、実銃メーカー刻印を再現するのが主流となっている。もちろん、ライセンス料の発生により価格は上がってしまうが、それでもリアル刻印を待ち望むユーザーの声に応えてほしいところだ。
あと、これはマルイのガスガンそのものの話ではないが、モデルとなった実銃のM17/M18(P320シリーズ)には、少し気になる話題もある。
この銃は民間市場にも広く流通しており、近年、米軍および一部ユーザーから「意図しない発射(unintentional discharge)」の報告が複数寄せられている。米空軍ではM18に関連する事故を受けて点検のため運用を一時停止したほか、いくつかの警察機関やトレーニング施設でも安全確認を目的に使用を制限した事例が報じられている。
SIGおよび米軍側は、これらの事案について「操作ミスや環境要因など、必ずしも設計上の欠陥とは言えない」との見解を示しており、多くの個体は検査後に運用を継続している。また、ベレッタM9も導入時にスライド破損が問題となったが、改良で信頼性を確立した経緯がある。そうした前例を踏まえれば、M17/M18も今後の改修によって課題が解消されていく可能性は十分にあるだろう。
実銃をモチーフにしたトイガンである以上、その評価やニュースがユーザーの印象に影響するのは避けられない。P320シリーズに関する一連の話題も、本製品に無関係ではないだろう。しかし、東京マルイのP320は実銃とは構造も安全設計も根本から異なり、日本の法規に基づいて開発された安心して楽しめるトイガンだ。むしろ、そうした背景を理解したうえで、その完成度や操作感を純粋に味わいたい一丁だ。
スペック & 初速
| 全長 | 205mm |
| 重量 | 690g |
| 銃身長 | 106mm(インナーバレル長) |
| 装弾数 | 26発 |
| 価格 | 22,800円(税別) |
| 発売日 | 2025年10月9日 |
| 動力源 | リキッドチャージ式ガス |
| 初速 | 最高:76.5m/s 平均:75.88m/s 最低:74.9m/s ジュール:0.576J ※TBRMイバイオBB弾 0.2g、HFC134a使用、ホップアップ適正、室内10発での測定、気温24.3度、湿度57%、ACETECH AC6000 MKIII BTにて測定。 |
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