台湾陸軍 M1A2T エイブラムス戦車 実弾演習 初公開
台湾の頼清徳(らいせいとく)総統は2025年7月10日、北部・新竹県の軍事施設で行われた陸軍のM1A2T「エイブラムス」戦車の実弾射撃演習を視察し、その攻撃力と機動性を高く評価した。

M1A2Tは、米国が台湾向けに提供するM1A2 SEPv2(System Enhancement Package Version 2)をベースにした輸出仕様で、「T」はTaiwanを意味する。外観や基本性能は米軍仕様と同様だが、一部の電子装備や装甲構成は輸出規制に応じて調整されている。乗員4名、全長9.83m、全幅3.65m、全高2.44m、重量60.6t、全備重量は64.1t。

最高速度は67km/h、巡航距離354km、燃料タンク容量
504.4ガロン(約1,909リットル)。

1500馬力を発揮するハネウェル AGT-1500 ガスタービンエンジン、アリソン X1100-3B トランスミッション、複合装甲を装備。

搭載火器は、44口径120mm滑腔砲、M240C同軸機関銃(7.62mm)、M240C装填手用機関銃(7.62mm)、ブローニングM2A1機関銃(12.7mm)。

操縦手ハッチは主砲の真下。主砲右側に同軸機関銃がある。

砲塔上部左側には円筒形のCommander's Independent Thermal Viewer(CITV)があり、車長が周囲の状況を把握できる。

12.7mmのM2重機関銃は、CROWS-LPリモートウエポンシステム(RWS)に搭載されている。通常は遠隔操作で運用されるが、緊急時やシステム障害時には、限定的ながら手動での操作も可能となっている。

66mm M250発煙弾発射器。

台湾は米国からM1A2Tを108両購入し、第1陣となる38両が昨年末に台湾に到着した。今回の演習では、さまざまな条件下で120mm砲から実弾を発射。19発全てが目標に命中した。



台湾は、M1A2T戦車108両の導入に加え、弾薬、装甲回収車、輸送車両、訓練支援などを含む包括的な装備パッケージを、米国の対外有償軍事援助(FMS: Foreign Military Sales)制度を通じて調達している。
この契約の総額は、2019年の米国防総省発表によれば約22億ドル(約2,400億円)とされており、これは戦車本体だけでなく、関連装備や支援も含む金額である。
戦車本体の単価は報道などで約20億円と伝えられているが、パッケージ全体の単価で換算すると、1両あたり約30億円にのぼる可能性もある。

劣化ウラン芯を使用したM829A1 APFSDS、タングステン芯のDM63 APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、訓練用のM865 TPCSDS-T、対人用のM1028キャニスター弾などが展示された。105mm砲用のM456破甲榴弾(HEAT)も展示されていたが、もしかすると、120mm砲用M830破甲榴弾の準備が間に合わなかったのかもしれない。

M88A2 ハーキュリーズ 装甲回収車も展示された。
乗員3名、全長8.64m、全幅3.66m、全高2.97m。重量63.5t、牽引能力70t以上、最大吊下能力31.75t。

M1070 & M1000 HETS(重装備運搬システム)。牽引車両とセミトレーラーの戦車運搬車も展示。

頼総統は、今回の成果について「実戦を想定した訓練の成果であり、今後は無人機や革新的な戦術・戦法との連携によって、台湾が掲げる『防衛固守、多重抑止』という戦略目標の達成が現実のものとなる」との見解を示した。
さらに、「日頃からの訓練によって国軍の戦力を高めることは、国家・社会・国民に安心をもたらし、地域の平和と安定にもつながる」と述べ、どんな訓練も決して無駄ではないということを多くの人に実感してほしいと訴えた。
撮影・レポート 王清正
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