
高雄市SWAT部隊の実力とは?──霹靂小組の任務と取り組み
レポート:王清正
台湾・高雄市には、犯罪抑止や治安維持の最前線に立つ特殊警察部隊が存在する。その名は「高雄市政府警察局保安警察大隊特勤中隊」、通称「霹靂小組(ピーリーシャオズー/Thunderbolt Team)」。この部隊は市民の安全を守る精鋭集団であり、日々進化する犯罪に対応するために訓練と装備を強化している。
台湾における特殊警察の構造
台湾の特殊警察は、「国家レベル」と「地方レベル」に分かれる。国家レベルでは、内政部警政署直轄の「維安特勤隊」や「刑事警察局除暴特勤隊」などが存在し、テロ対策やハイジャック事件の対応を専門に行う。一方、地方レベルのSWATは、各地の警察局に編成される。台北市では刑事警察大隊に属するケースがあるが、高雄市などの直轄市では「保安警察大隊」に編成される。こうした地方部隊は「霹靂小組」と呼ばれ、市民に広く知られた存在である。
高雄市の霹靂小組の役割
高雄市の特勤中隊は1988年に設立され、市民の生命と財産を守るために日夜活動する。高雄市は台湾有数の都市圏であり、犯罪の手口は巧妙化・組織化・国際化する傾向にある。そのため、霹靂小組は「積極的・予防的」な戦略をとり、犯罪の芽を摘む行動を重視する。彼らの主な任務は以下の通りである:
• 強盗や銃器犯罪の予防・鎮圧
• 麻薬取締り
• 窃盗対策
• テロ・凶悪事件への即応
• 治安維持に関する広報活動
また、市民と協力しながら犯罪抑止に取り組む姿勢を重視し、信頼される警察を目指して地域と積極的に関わる。
訓練と装備:生きた精鋭を育てる
霹靂小組の隊員は、柔道や徒手制圧、拳銃射撃といった実戦的技能の習得が必須である。定期的な体力トレーニングに加え、全隊員を対象とした継続的な訓練が毎月行われる。こうした鍛錬により、常に即応可能なコンディションが維持される。さらに、時代の変化に対応するために、以下の専門教育が導入される:
• コンピューターおよび情報処理技術
• 犯罪捜査の新技術
• 心理カウンセリング(ストレス管理とメンタルケア)
これにより、身体能力だけでなく、情報戦・心理戦にも強い現代型の警察官が育成される。
最新の装備で迅速対応
霹靂小組は、以下の最新装備を保有する:
• 高機動対応車両、大型バイク
• 防弾装備
• 携帯型捜査端末(モバイルコンピューター)
• 多種多様な火器・弾薬
• 特殊突入装備(バリスティックシールド、破壊工具など)
装備はITと機械化が進んでおり、事件発生時には正確かつ迅速に対応できる体制が整う。
使用する狙撃銃はSIG Sauer SSG 2000。
スコープはドイツ Schmidt & Bender製の8倍x56。
突入時に使用するドア破壊用工具。
ハンドガンはWalther PPQ。9mmx19口径のオートマチックでOLIGHTのPL-2 VALKYRIEウエポンライトを装着している。
PPQの分解。
サブマシンガンはドイツH&K社のMP5。M-LOKハンドガード装備。VORTEX CROSSFIRE RED DOT、OLIGHTのタクティカルライトを装着。中国製品も普通に取り入れているのが面白い。
MP5の分解。
COLT M4カービン。5.56mmx45弾。
M-LOKハンドガード。バレルレングスは14.5インチ。
グリップはDanielDefese、ストックはMAGPUL製やB5 Systems製が付いている。
N-Vision Optics製のNOX18単眼ナイトビジョン、Bisado Motoring製DB-1 PROデュアルヘルメットカムやライトが取り付けられたバリステック・ハイカットのヘルメット。
市民との協力と未来へ
霹靂小組の取り組みは、単なる「武装警察」ではない。防犯意識を高めるための市民啓発活動や地域との信頼構築に力を入れる。「市民と共に安全な街をつくる」という姿勢が貫かれる。今後も、高雄市の治安を守るためには、装備や訓練だけでなく、市民の理解と協力が不可欠である。多様化する社会の中で、警察の役割はより複雑になるが、霹靂小組は「市民のために」という原点を忘れず、その使命を果たし続ける。
2025年雙北世界壯年運動会に向けた反テロ・消防訓練、台北市長が監督
2025年5月17日に開催される「雙北世界壯年運動会」に備え、台北市政府警察局は4月22日、台北大巨蛋近くの松菸大道で対テロおよび消防救助訓練を実施した。2017年の世界ユニバーシアードでの抗議団体による騒動を教訓に、安全対策を強化する目的である。台北市長の蔣萬安氏は全行程を視察した。
対テロ訓練
選手バス乗っ取りシナリオ:開会式時に選手を乗せたバスが乗っ取られる状況を想定し、警察のドローン部隊が状況を確認。特殊部隊(SWAT)が装甲車を使用してバスに突入、人質を救出し、犯人を制圧した。
爆発物対応
大巨蛋での爆発を想定し、新北市警察の爆発物探知犬(K9)が爆発物を発見。刑事局の防爆チームが35~40kgの最高級防爆スーツを着用し、爆発物を処理した。
参加部隊は、台北市警察の特殊部隊、ドローン部隊、刑事局防爆チーム、警犬隊などであり、実際の訓練成果を披露した。
消防・救助訓練
消防局、衛生局、社会局などが連携し、大規模な負傷者対応や火災時の避難・救助を想定した訓練を実施。ミニ遠隔操作消防装置も登場し、リアルなシナリオで緊急対応力を検証し、災害時の横断的な連携や防災力を強化した。
蔣萬安(蔣介石の曽孫)台北市長は、運動会を通じて台湾の魅力と実力を世界に発信する絶好の機会と位置づける。市民に積極的な応援を呼びかけ、中央政府や消防署などとの協力のもと、安全でスムーズな大会運営を目指す。参加者に台湾の温かさと活力を感じてもらう。
今回の訓練は、2025年雙北世界壯年運動会の成功に向けた重要な一歩である。台北市・新北市は中央政府と連携し、最高水準の安全対策を講じる。選手や観客に安心で思い出深い体験を提供する。
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