台湾「海安12号」海上保安演習

台湾「海安12号」海上保安演習

台湾の海巡署(日本の海上保安庁に相当)が、2025年6月8日に高雄港で実施した『海安12号』海上保安演習の模様をレポートする。

高雄港で「海安12号」演習


海巡署を管轄する海洋委員会は6月8日、南部・高雄港で2年に1度の大規模演習「海安12号」を実施した。
頼総統は視察に訪れ、「複雑化する海上の安全保障に対応するには、党派を超えて特別予算を支持し、海巡署を後押しすべきだ」と国会に呼びかけた。

演説では「台湾は中国のグレーゾーン作戦の脅威に直面している」と強調。海巡署職員が犯罪や密輸の取り締まり、救助活動などで国民を守っていることを称賛した。

政府は4100億台湾元(約1兆9800億円)の特別予算を編成し、巡視船の建造や監視システム整備、人材育成、装備更新などに充てる計画。頼総統は「安全保障には継続的な資源投入が不可欠」と述べ、支持を訴えた。

今回の演習には空軍や海軍、内政部の空中勤務総隊も参加し、実戦さながらの訓練が行われた。


南部地區機動海巡隊の「安平」(CG 601)。600トン級巡視船。


南部地區機動海巡隊の「雲林」、4,000トン級巡視船。


中部地區機動海巡隊の「台中」、1,000トン級巡視船に搭載されている多連装ロケット砲。


PP-10093は100トン級の巡視艇。


海巡特勤隊の乗るK92特殊作戦突撃艇。





海巡特勤隊の使用するライフル
海巡特勤隊の使用するライフルは米国Daniel Defense製DDM4。レシーバーやストックカラーはTornado。拳銃はオーストリア製のGLOCK。

 





中山科学院が開発したXTR-102 近距離自動防御システム。10km以内の目標を補足し、3km以内で自動追尾、有効射程約2kmのT75 20mm機関砲を2基を搭載し艦内より遠隔操作する。新造の4000t級巡視艇4隻、1000t級巡視艇6隻、600t級巡視艇12隻に搭載予定。


海巡署のUAV。


頼清徳(らい・せいとく)総統も視察した。

金門周辺で中国人2人を逮捕

金門島周辺地図

台湾の海洋委員会海巡署は20日早朝、中国福建省に近い金門島周辺で、不法上陸を試みていた中国人の男2人を発見し逮捕した。
この日は頼清徳(らい・せいとく)総統の就任1周年にあたり、同署は「認知戦の一環である可能性を排除できない」との見方を示した。

海巡署によると、午前5時すぎ、金門島西方の二胆島付近で、小型船から発泡スチロール製の板を使って上陸しようとする2人を赤外線装置で確認。巡視艇を派遣し、午前7時53分に2人を逮捕、小型船1隻も押収した。二胆島は中国本土まで最短約5キロの距離にある。

海巡署は、中国が「武力行使未満」のグレーゾーン行動を長期的に仕掛けていると指摘。昨年の頼総統就任時にも中国が軍事演習を実施したとし、今回の不法上陸も認知戦による士気攪乱を狙った可能性があると警告した。
今月16日には桃園市の海岸にゴムボートで上陸した中国人2人が逮捕され、18日には同様の動画がネットに投稿されるなど、不審な動きが相次いでいる。

中国海警船が相次ぎ接近

海巡署は5月28日、中国海警局の船が2日連続で金門周辺に現れたほか、南シナ海の東沙(プラタス)諸島周辺の制限水域にAIS(船舶自動識別装置)を切ったまま侵入したと発表した。

27日午後には海警船4隻が金門周辺に進入し、翌28日午前も同海域を徘徊。海巡署は巡視艇を派遣し、退去を求めた。さらに28日午前8時ごろ、東沙島の北北東約50キロで海警船「3102」がAISを作動させずに進入しているのを確認し、巡視船「巡護八号」を派遣。全行動を監視し、無線で退去させた。

中国海警局は「法に基づく通常のパトロール」と説明したが、海巡署は「両岸の緊張を高め、地域の安定を損なう」と強く反発した。

台北・淡水河で侵入阻止訓練 実爆薬を初めて使用

台湾の定例軍事演習「漢光41号」は実動訓練4日目の7月12日、新北市を流れる淡水河で行われた。訓練は、中国軍が河川を経由して台北市中心部の総統府や政府機関に侵入する事態を想定し、河道に障害物を設置して侵攻を防ぐもの。淡水河での障害物設置訓練に実爆薬が使われたのは初めてとなる。

台北・淡水河で侵入阻止訓練

台北市と直結する淡水河は、台湾軍が近年「首都防衛の要」として重視してきた水路であり、漢光演習で同河川を舞台に侵入阻止訓練が行われるのも今回が初めて。ホーバークラフトや小型船の侵入を防ぐことを念頭に置いている。

陸軍第53工兵群

訓練では、陸軍第53工兵群がM3自走浮橋や攻撃用舟艇を運用し、障害物の設置と点検を実施。河岸の軍事施設からは偽装戦車が砲身を河口に向けて配置され、工兵部隊を援護した。さらに戦術用近距離無人機も飛行し、河道や周辺施設の偵察を行った。

台湾軍によれば、障害物には定置網やドラム缶などが使用された。点検完了後には一部の障害物に取り付けられた爆薬が順次起爆され、水しぶきと爆音が河川に響き渡った。

撮影・レポート 王清正


2025/08/23


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