ヒゲKOBA 回顧録 パート2
本記事はGunマガジン2014年6月号に掲載された第20回の転載です。

ヒゲKOBA 回顧録 トイガン規制 パート2

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文・イラスト/小林太三

総理府令,恨まないで 裏から見れば

前回、昭和52年の総理府令が出来上がるまでと、その後の施行に係わる各条項への解釈や問題点について、「度々警察庁の担当技官とのやり取りを重ね、そのやり取りは、今振り返ると今日のエアガンの現状と総理府令との解釈について、大変重要な判断基準の原点になっているのではないか……?」と書いたので、今回はそんな話からのスタートだァ〜。
じゃあまずは、一番ややこしくって、一番大切なことから始めよう。

『模造けん銃』と『模擬銃器』って違うの?

本来摸造とは“摸して造られた”という意味だから、「偽物とか模型」などを指す呼び名だ。
一方、模擬とは、摸擬運転や模擬試験の呼び名のように、「真似て行う行為」を表す呼び名だ。

しかし我々トイガン関係にあっては、この一見混同しやすいこの二つの名称には大きな違いがある。皆さんの持つトイガン(エアガン、モデルガン等)が、このどちらに分類されるかによって、趣味を楽しむマニアでいられるか、銃の不法所持者となるかの、別れ道となってしまうからなのだ。

これ等のモデルガンのモノサシ原点となるのが総理府令と銃刀法という名のあらゆる銃器類のための法律だ。総理府令は何もモデルガンだけの法令ではなく、その範囲は誠に多岐に亘るもので、その中の第22条の第1項(昭和52年改正)と呼ばれている法令が、「模擬銃器」つまり金属製モデルガンに関する法令だ。

この「模擬銃器」とは別に、「模造けん銃」って良く似た名前が、銃刀法や銃砲関係の資料に出てくるのを覚えてるかな? 同じモノ? 「いやいや『模擬銃器』が金属で『模造けん銃』はプラのモデルガンだよ」なんていう人もいるが、そのどれも答えは大ハズレ! じゃあまず話はそこから入ろうかな。

銃刀法(正しくは、銃砲刀剣類所持等取締法)の第2条の1項には、こんなことが書いてある。
「何人も、模造けん銃(金属で作られ、かつ、けん銃に類似する形態を有する物で、内閣府令[総理府令]で定めるものをいう)を所持してはならない」「ただし、事業所の所在を管轄する公安委員会において……はこの限りではない」とか。

またその仕様については、同法第17条の2項で、『模造けん銃』とは、「一、銃口に相当する部分を金属で完全に閉塞すること」「二、グリップを除く部分の全体を白色又は黄色とすること」等の措置を“施していないもの”とされている。
そして、同法第22条の第1項(つまり、昭和52年の総理府令だ)では、これに定める種々の措置を“施したもの”が、この法律でいうところの、『模擬銃器』なのだと規定されている。

つまり、昭和46年の規制以前の“白又は黄色の措置を施してないモデルガン”が『模造けん銃』で、その所持は禁止。
そして昭和52年以降の“総理府令に従った措置を施した金属製モデルガン”が『模擬銃器』として、銃刀法でその所持が認められる、ということだ。ワカッタかな? これは最も大事なことだよ!

つまり、「このような“措置をしていない物が『模造けん銃』”で、これは持ってはいけない!」と、まずは禁止するところから始まり、「ただし“所定の措置を施してある『摸擬銃器』”は、持っても宜しい」というのが、これ等の法律の趣旨なんだ。これってどっかで習ったような……?

そう! 車の運転免許を取る時に道路交通法規の始まりで習ったよね。「何人も自動車を運転してはならない。ただし公安委員会が定める所定の指導を受けて運転免許を取得した者は、自動車を運転することができる……」な〜んて教官から最初に教わったのを覚えてるかな? あれと同じだ。

つまり、「使い方次第で他人に危害を及ぼす危険性のある物は、基本的にそれを操ることを禁止する。ただし、所定の資格を取得したり、無害な措置を施した場合においてはその限りではない」というのが、これ等を扱う場合の法律の共通点なんだ。

だからまずは、この『模造けん銃』と『模擬銃器』の定義の違いと、良い悪いの違いは、しっかりと覚えておかないといけない。

それから次は『色』の話。
“けん銃タイプは容易に隠し持てる”ということから、その外観色は『白又は黄色』と決められた。
ナゼ?「白と黄色の実物拳銃は存在しないから……」というのがその理由だ。

でもそんな色ではとても商品にならないため、技官と協議した結果、「今までに金メッキの拳銃は犯罪に使われた前例がないため、金色は“黄色の一種”として認めてあげる。
ただし、金色の実物拳銃が犯罪に使われた事例が起きた場合には、これは取り消されるかも知れないぞ」ということで金色は容認されたのだった。つまり金色は、良いのではなく「認めてあげる」のだから、法律にはそんなことはどこにも書いてない。

しかし「銀色、つまりシルバーメッキやステンレスのような銀色は、実銃に沢山あることは小林君よく知ってるだろう?……だから法の趣旨から見て『銀色はダメ』なんだ」との答えだった。「でも技官、使っているうちに金色が薄 れてきて下地の銀色が出てきたらどうしますか?」との質問に、「ペンキでもラッカーでも黄色に塗ればイイじゃないか! 法律には美的センスは無関係なんだよ!」と、少々ムカツキ気味の答えが返ってきた。

だからライフルやマシンガンのような、いわゆる“長モノ”と呼ばれる類の物については、「コートの下に隠し持つことは無理なため、わざわざ白や黄色にする必要はない」ということだった。「それなら長銃身のピストルや小型マシンガンは黒でも構わないはずでしょう?」と屁理屈でくい下がってはみたものの、「じゃあ、いっそのこと、ぜ〜んぶ黄色に決めたげようか?」と言われてしまい、「御免ナサイ!」をしたこともあった。

当時私は、オモチャの鉄砲狩り騒動で相当根性がねじれていたため、今思うと随分ひねくれた質問を繰り返していたと、申し訳なく思っているが、今となってはこのやり取りは大事な判断基準の参考事項となるから、よく覚えていて欲しい。

次は『長モノと拳銃との判断基準』だ。
本来拳銃とは“肩付けすることなく、片手で照準し発射できる小型銃器”のことだ。だから何センチ以内という定義はないようだが、形態的に見て“隠し持てる銃”ということも大きな要素の一つだ。だからコルト・バントラインのように12インチ以上の長銃身であっても、ストックが付いてなければコートの中に隠して携帯できる。でもストックが固定されていれば隠し持つのは無理だから、規制当時は『銃身は30センチ以上で、固定銃床』というのを、長モノの判断基準にしようということに暫定的に決められたのだった。

「じゃあ折りたたみストックのMP-40やスターリングはどうするの?」とか、「STENのようにボタンを押すと外れるストックは?」とか、いろいろな曖昧な点を持ち出しては詰め寄ってみたが、「私達は何も君達業者を廃業に追い込もうというのではない。
この法律の趣旨はあくまでも社会不安の要素を取り除くのが目的なのだから、誤解しないで欲しい」と諭され、「あまり屁理屈をこねないで、個別の判断は、君達の良識と、違反事例次第だよ」と、以降のボールは、半ばこちら側に投げられた状態だった。だから、「長モノ」と「けん銃」との境界線の判断も、あまり身勝手に解釈して、寝た子を起こすようなことはしないで欲しいものだ。

この当時MGCや他社では、ストック付きの黒いハンドガンが数種作られ、中には銃身長の短いピストル・カービンもあった。しかしこれ等について警察庁の担当技官から注意を受けたこともあって、組合で話し合った結果、「“曖昧な長モノ”は止めておこう」という意見統一がなされた。

この長モノとハンドガンとの分岐点に関する判断は、当時も今も変わってはいないと思われるため、モデルガン、エアガンの区別なく、“長モノと称した曖昧な黒い金属ハンドガンで誤認問題を起こし、寝たふりをしている虎の尾を踏まないこと”が大切だ。

具体的にいうと、着脱可能なストックでハンドガン・サイズのM11を、黒いメタルボディーに組み替えたり、ベレッタのM93Rのメタルモデルが公然と横行してしまっては、当然『白又は黄色を施していないけん銃タイプ』としての扱いを受け、改正銃刀法が施行された平成18年以降でも、たとえ法定威力内以下のエアガンであっても、これはレッキとした“銃刀法違反品”と判断されてしまうことを覚えておいて欲しい。

『機関部体』って?

銃器の専門書・小火器概論には、銃器の機関部体とは、「薬室内の弾薬を撃発できる機能を有する、撃鉄や引き金等の撃発装置を内包した、銃器の機関部」と記されている。

だから、撃鉄(ハンマー)があっても撃発させるためのメイン・スプリングが無かったり、指で引き金(トリガー)を引いても、これ等を撃発運動させるトリガー機能がないために、射手の意思で撃発行動をハンマーに伝える行為が出来ない状態の機関部体は、正しくは銃器の機関部としての諸条件を満たしている機関部といえないだろう。

しかしこの場合でも、その機関部に、メイン・スプリングやトリガーが容易に装着できるように作られていて“ただ組み込んでいないだけ”と判断されて、それは“本来機能の回復が可能な状態”と断定されれば、これは“撃発機能を有する機関部体”ということになる。

すると皆さんは、「アアそうか!」と、何か気が付かれるだろう。そうなんですよ! Hi-CAPAのメタル・シャーシ、あの構造が金属製の機関部体の条件を満たしていないギリギリの限界点なのだ。

その証拠に、あのメタル・シャーシからグリップ部分を外したら、トリガーやメイン・スプリングが外れて、所定の機能を果たせなくなる。そしてマガジンが保持出来なかったら、ガスブローバックの場合には、ガスガンとして機能しなくなるだろう?

日本の種々の関係法律の範囲内では、あの金属製シャーシが、金属製機関部体に当たらない限界なのだ。したがって、あのシャーシに、海外製やカスタムショップ製の金属製のグリップ部材を取り付けた場合には、これは金属製の機関部体という判断になってしまう恐れがある。

総理府令との整合性を、見事に表現した東京マルイのHi-CAPA メタル・シャーシ構造。グリップ部分が金属になれば、金属製機関部体としての要素を満たしてしまう。また、スライドが金属になれば主要部分が金属製と判断されてしまう。実に見事な“合法的アレンジ”。このベストバランスは壊さないようにしたい。


『銃身分離タイプの金属製モデルガン』は、総理府令に違反した摸造けん銃となるため、スライドが金属製に交換されていた場合には、外観を白又は黄色に塗るだけではなく、金属製の機関部体では、総理府令の銃身分離タイプは禁止構造に該当して、フレームと分離できるバレル部分と金属製のスライドとで構成された機関部のHi-CAPAでは、総理府令に『違反した構造を持つ金属製の模擬銃器』の扱いを受けてしまうことを、忘れないでもらいたい。

『金属製』と『金属性』?

ちなみに法律は、その本文には明記されていなくとも、その運用過程においての状況の変化にしたがって追加される運用事項や付帯条項といった、その法律の趣旨から外れないように、後で条項が追加されて、その法律の適用範囲を変化できるようになっていることが多い。

例えば、日本特有の3輪自動車とは、三丁目の夕日の頃まで格安で実用的な輸送手段として発達した3輪貨物自動車のことで、その後次第に消滅した。しかし近年、“トライク”と呼ばれる趣味性の高い乗用の変形3輪が流行りだした。 しかし“3輪は実用車”という固定観念から脱却しきれていない“日本の車両法”がその現状に追いつかず、関係法律の矛盾を埋めるべく、2〜3年ごとに種々の付帯条項を設けて、その矛盾を整合させようとして、今では大変イビツな法令となってしまっている事例がある。

銃刀法もこれとちょっと似たところがあり、年ごとに変化する銃社会の現状に合わせようと、細則がいろいろと改正されているようで、私達のトイガンの世界に係わる法律の銃刀法でも、当初は「金属製の……」と書いてあったのが、いつの間にか「金属性」と文字が替わっている。

「製」とは、その素材が“その材料で作られていること”なのだが「性」という文字の意味は“性質”を意味するのだから、この場合には、その素材が同等の物理的性質を持った材料という意味を表すことになる。

だから金属以外の材料で作られていても、その物性・強度が金属と同等であると判断されれば、法律的には金属で出来た銃と同様に扱われてしまう可能性がでてくる。

でもこれは、過去の1970年代のモデルガンの規制に係わる法律の経緯から見ても、現在のプラスチック製のモデルガンやエアガンにそれが当てはめられて、首を絞められてしまう恐れは今のところないだろう。

鉄粉を混入したヘビーウエイト樹脂は、磁気に反応するため、材料の判断を間違う可能性があり、強度もないため、私は使用しない方が良いと思う。

しかしこれとて、社会状況の変化に従って、その解釈が変化すると考えるのは間違ってはいないと思う。くれぐれもプラスチックモデルガンやエアガンで行き過ぎた違反事例を出さないことが大事なのだ。

だから私は、この「製」から「性」への変更は、今のトイガンの世界の外に埋められた地雷だと解釈している。したがって安全で楽しい趣味のトイガンという運動場の内側で遊んでいれば、全くその地雷が爆発する恐れはなく、安心して遊んでいられる。

しかし、実銃に近い擬似的な質感を追うあまり、磁鉄粉を限界点まで混入した磁石がくっ付くヘビーウエイト樹脂まで登場していることには、現場の警察官がその判断に困っていると聞いている。

過去の規制の発端が、取り締まり当局や一般人が誤認することを防止するという観点から白又は黄色に塗るということになった経緯から推測して、重いことには問題はないとしても、磁石がくっ付くプラスチックは大変紛らわしいため、この素材は、無用の誤解を避けるためにも使わないほうが良いと思っている。

当時サービス部の要求でMGCが作ったピストル・カービン。
しかしバレルの短いものやストックの外しやすいモデルは、ワンロットで生産を中止した。


このように、トイガンとしての必要性を超えた過剰な素材等を使って身勝手な欲求や解釈で物を作り、挙句の果てはトイガン業界という運動場の枠の外側に飛び出し、結果「金属性」という名の地雷を踏んで爆発させ、運動場の中で良識的に遊んでいるマニア達まで大怪我をさせ、トイガンという運動場までふっ飛ばしてしまうような結末を招くようなことだけは止めて欲しい!……と、いうことなんだ。
ワカッテもらえたかな、この意味が。

したがって次稿では、これに続いて『主要部材って何』や『薄板パーツやスプリング・ビス類』、『完成品と部品とは』や『少許の加工の範囲』等についての話をするつもりだ〜。

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今回の参考資料:
警視庁ホームページ「モデルガン、エアーソフトガンについて」 / Wikipedia「モデルガン」 / Yahoo検索「エアガンのパワー規制」 / Yahoo検索「モデルガン規制」 / Biglobe,ne[日本の武器兵器] / Cobra'shobby「モデルガン規制」 / Welcometomanosun. / STGA資料 / ASGK資料他

小林太三 (こばやし たぞう) 小林太三 (こばやし たぞう)
元MGC副社長、現(有)タニオ・コバ社長。
1936年生まれ。海外にもその名を轟かせるトイガンデザイナー。少年時代の模型趣味からモデルガンメーカーMGC入社。様々な人気モデルガン、エアガンの設計を手掛けたトイガン界の重鎮。

2015/05/08

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