ハンドガンのカスタムパーツ、アルミスライドの現状

よく、読者から、「アルミ製カスタムスライドのレビューをしてくれませんか?」といった問い合わせをいただくこともあるが、ハイパー道楽では現状、アルミスライドやアルミフレームと言ったハンドガンの金属製カスタムパーツを原則としてレビューしないことにしている。
最近も海外パーツメーカーから「当社のメタルスライド商品を紹介してくれませんか」と依頼を受けたがお断りした。

理由は日本のトイガン業界で「アルミスライド」等のハンドガン用金属カスタムパーツに対する意見が分かれており、非常に"あいまいな状態"であるからだ。
この話題はしばしばネット上においても論議されるところではあるが、いずれも明確な結論に至っていない。

はじめに言っておくと、ハイパー道楽では、ユーザーがホビーとして許される範囲で選択肢が広がるのは大歓迎である。だから、あらゆる面でアルミスライドは問題なし、となれば嬉しいことだと思っている。

ハンドガンのアルミスライドに関する現状


翻って、トイガンを製造する立場である、ASGKをはじめとする業界団体に加盟するトイガンメーカーではハンドガンタイプのエアガンでスライドやフレームが金属製の商品は製造しておらず、組合規約によって自主規制されている。
これは過去にモデルガンが受けてきた規制や経産省からの通達などを踏まえてのことで、以前に転載という形で紹介したSTGAの理事兼技術委員長のタニオ・コバの小林社長の記事でもそのような認識が月刊Gunマガジンのコラムとして掲載されている。

一方、トイガン商品を販売する立場である、おもちゃ問屋やショップはというと、見解は2分しており、国内大手のトイガン流通業者でもアルミスライドを取り扱っている会社があり、それを仕入れて販売するショップも多い。
つまり、売れる商品だから売ろう、とするスタンスのショップもあれば、もちろん、危なそうな商品は取り扱わない、とするショップもあるのが現状だ。

では、これらトイガンおよびカスタムパーツに関する法規制はないのかというと、もちろんある。
ご存知「銃刀法」だ。
2007年2月21日に施行された改正銃刀法により、エア(ソフト)ガンのパワー規制が3.5 J/cm2未満とされたことはこの趣味を持つものならば聞いたことがあるだろう。これ以降6mmBB弾で0.989J以上の威力のものは準空気銃となり、罰則も強化された。それまで曖昧だったエアガンのパワー規制が明確化されたことで極悪な改造エアガンを販売するショップはなくなった。

これらエアガンに関する記述は銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)と内閣府令にある。
[外部リンク] 銃砲刀剣類所持等取締法
[外部リンク] 内閣府令 
  第二条(弾丸の運動エネルギーの値の測定の方法)、
  第九十九条(人を傷害し得る弾丸の運動エネルギーの値)、
  第百二条(模造拳銃)、
  第百三条(模擬銃器に該当しない物)

読んでもらうと判るが、何かと難しい言い回しが多く、解釈によってはいろいろな意味にとれるのは法令の最たる特徴であり、意見の分かれる所以だが、この内容を要約してわかりやすく解説した文書がある。

それがこちらの警視庁のWebサイトだ。
[外部リンク] 警視庁 モデルガン、エアーソフトガンについて
※2016/9/1付で当該文章の一部は削除されています。


警視庁のWebサイト


この警視庁のページによると

モデルガンやエアーソフトガンの法規制については? という項目において、

一般的には、玩具銃業界の自主規制に従って製造市販されているものであれば、改造等を加えない限り銃刀法の規制の対象とはなりません。

つまり、ASGK、JASG、STGAといった日本のトイガン業界団体に加盟するメーカー製のエアガンであればそのままの状態で規制の対象とはならない、とある。過去に例外もあって摘発された商品もあるが、それはこの警視庁のページに掲載されている。
なのでマルイのハイキャパのシャーシや、タナカのペガサスシリーズのシリンダーは金属だけど大丈夫か? といわれれば大丈夫なのでしょう。
ペガサスがだめならカシオペア事件の時にまとめて摘発されてただろうし。

つづいて、銃刀法等で取締りを受けることとなった例としては、という項目で

○ 模造けん銃
本体等の主要部分を金属製部品に交換して組み上げることによって、「模造けん銃」(次に解説します。)を作り出してしまうこともあります。
 いずれの場合も、銃刀法違反(場合によっては、併せて武器等製造法違反も)として厳しく処罰されることになりますので、たとえ玩具とはいえ改造は絶対にしないでください。

とあり、"主要部分"を金属製部品に交換してしまうと「模造けん銃」となって取り締まりを受けた例が過去にありますよ、厳しく罰せられるからしないように、と述べられている。
警視庁は取り締まりする側なので「違法です」とは言わず、あくまでも「過去に取り締まり例がある」という言い回しになっているわけだ。

さらにその下の、どのようなものが「模造けん銃」の規制を受けるのですか? には具体的に記載がある。

銃刀法では、
○ 金属製であること
金属とは、金、銀、銅、鉄、鉛などの金属元素とその合金との総称です。
したがって、アルミ、亜鉛合金、鋳物などは該当しますが、プラスチックや木製のものは該当しません。

まさか、ハンドガンにおいてスライドやフレームが"主要部分"ではないという人はいないだろうから、アルミスライドやアルミフレームはこれに当てはまるだろう。
ここで重要なのは警視庁は主要部品を金属にしてはいけないと言っているのであって、スライドだけだったらOKとか、ハーフメタルは...、といったことは一切言及していない。

過去の経緯に詳しい人で、銃刀法は撃発装置のあるモデルガンに対しての規制であり、エアガンは該当しないと主張する人もいるが、さらに以下のように記載がある。

○ けん銃に著しく類似する形態を有する物であること
「模造けん銃」 の規制は、けん銃との外観の類似性による悪用の防止を趣旨としていることから、一般の人の注意力では、その形態が本物のけん銃と区別できない程度のものであれば、これに該当することとなります。
したがって、この条件に当てはまる物であれば、モデルガンやエアーソフトガンはもとより、文鎮、ライター、催涙ガス銃等であっても、模造けん銃に該当し、銃刀法の規制の対象になります。 

しっかりと、エアーソフトガンつまりエアガンも当てはまるよ、と書いてある。

○ 内閣府令で定める措置を施していない物であること
上記のように、金属製でけん銃に著しく類似する物であれば、一応は模造けん銃の要件を備えることとなりますが、このような物であっても内閣府令で定める、
・ 銃腔に相当する部分を金属で完全に閉塞すること
・ 銃把に相当する部分を除き、表面の全体を白色又は黄色とすること
の両方の措置がいずれも施されていれば、模造けん銃には該当せず、銃刀法の規制の対象にはなりません

上記の記述は金属モデルガンに対して規制が入った時の救済策として設けられた措置で、金属モデルガンでも銃身内を完全にふさいで、全体を白や黄色(金色でも可)にすればOKよ、ということになっている。
いまでも金ピカの金属モデルガンが販売されているのはこの例外措置下でのことなのだ。

これを逆手にとって、アルミスライドを販売するショップでは、「このカスタムパーツを組み込む際は銃口を閉塞して白または黄色に塗ってください」とか、「組み込むと取り締まりを受ける場合があるので、パーツ単位で保管してください」などと注意書きを添えるところもあるが、エアガンのカスタムパーツ買っておいて、そんなことするユーザーはまずいないだろう。まさに形式上の責任転嫁的な文言だなぁと思う。

このようにアルミスライドやフレームは警察の取り締まりを受けた実例があるから改造してはいけない、と警視庁は言っていて、国内トイガンメーカーは自主規制で製造はしておらず、しかしながら、台湾や中国などの海外製のメタルスライドのカスタムパーツはパーツ単位でバンバンと税関を通ってきて国内に流通し、おもちゃ問屋で普通に取り扱っていて、店でもネットショップでも手軽にユーザーが購入でき、でも組み込んだ結果どうなろうと自己責任ね、という、非常にあいまいな状態 なのである。

ユーザー心理としてはカッコいいカスタムスライドに交換したい、リアルな質感や金属音を楽しみたいという気持ちは十分わかる。しかし現在その選択肢は海外製の金属スライドがほとんどで、樹脂製のカスタムスライドの選択肢ももっと増えればいいのにとも思う。


[追記]
※本記事を公開した直後にASGK加盟の東京マルイより以下の連絡を頂き、補足してほしいとのことでしたので追記します。

以前、組合と警察が色々と意見交換した時に、警察が言っていたのは、「いつでも逮捕できる状態であると」。
文面(本記事)にあるように、スライドとフレームをバラしてあれば大丈夫とか、その販売の状況も全て把握したうえで、バラしてあるから捕まえないなんてありえないんだと。
ばらした状態が同じ家の中にあれば、いつでも組み合わせる事が出来る状態と認識していつでもパクれるんだと。
捕まえる我々がどうとでもする事が出来るって言ってました。(全文ママ)

警察の言葉を借りて反感を煽るような内容ではあるが、これが本当ならば実に恐ろしい現実だと思えないだろうか。

[更に追記]
業界メディアをけん引するアームズマガジンの副編集長、狩野氏にお話を伺ったところ、アームズマガジンとしては金属スライドはNGであるとの回答を頂いた。記事での紹介はもちろん、広告主の広告も自粛してもらっているとのことだった。
つまり取り締まる警視庁もNG、国内メーカーの主要3業界団体もNG、大手雑誌メディアもNGという状況の中で、販売する側だけがアルミスライドOKの立場をとっている。なぜこのような歪な図式になっているのか、ユーザーにとっては非常に不可解でもやもやした状況であることは確かだ。



[参考] 日本のトイガン業界団体と主な加盟メーカー&ショップ (順不同)
ASGK (日本遊戯銃協同組合) 1986年発足
 東京マルイ
 ウエスタン・アームズ
 タナカ
 クラウンモデル
 KTW
 ヨシトモ (TOP JAPAN)
 ハートフォード
 アップル (CAW)
 青島文化教材社
 ケイエム企画

JASG (日本エアースポーツガン協会) 1993年発足
 マルゼン
 ケーエスシー
 ケイ・ホビー

STGA (全日本トイガン安全協会) 2007年発足
 マルシン工業
 タニオ・コバ
 エスツーエス
 ファルコントーイ
 セキトー
 モケイパドック
 七洋交産

2016/03/23

■関連リンク

ヒゲKOBA回顧録 トイガン規制 ヒゲKOBA回顧録 トイガン規制