タナカ コルトガバメント M1911-A1

タナカ コルトガバメント M1911-A1

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

1980年代後半、トイガンメーカー各社はガスブローバックハンドガンの開発を急いでいた。まず先陣を切ったのは東京マルイのS&W M59だったが、これはスライドの前進にガス圧を使い、後退はスプリングで行うという変則的な製品だった。
続くファルコントーイのブレンテンもまたスプリング後退式で、かつ外部ソースのみという仕様だったため、ハンドガンとしてはかなり使いずらく、ヒットにはつながらなかったようだ。そこに鳴り物入りで登場したのがこのタナカのガバメントだったわけだが、それまで製品化されたどのガバよりもリアルな外観がまず衝撃的だった。

設計は伝説のトイガンデザイナー、六人部登氏で、BB弾の発射とスライドの後退に使うガス放出を2段階に分ける、2ウェイ方式という独自のブローバックエンジンを採用している。ガスの切り替えは2段引きのトリガーで制御するため、軽く引いて1段目で止めてしまうとBB弾だけが発射されてスライドが後退せず、扱いには多少の慣れが必要だった。

さらにスライドはフルストロークではなく、開いたエジェクションポートからは内部ユニットが丸見えという構造で、今の感覚ではかなり難があるように思えるかもしれない。しかし、当時としてはこれでも画期的で、トリガーを引くだけで「バシュン!バシュン!」と勢い良くスライドがブローバックする様は、日本中のガンファンを歓喜させたものだ。

パテントの関係か、マガジン内にガスをチャージする構造には出来なかったようだが、その代わりガスタンクを取り外せるという前代未聞の構造にも驚かされた。予備のガスタンクをポケットに入れて温めておけば交換しながら快調に射撃が続けられるわけで、あらゆる点で革新的かつ意欲的な製品だったのである。

サイドビュー 左
サイドビュー 右
全体的にまろやかなラインのタナカ ガバメント。六人部氏がデザインするガバは大きく分けてこれで3作目だが、どれも線が繊細で優雅な雰囲気を持つのが特徴だった。

ブッシングとプラグ
ブッシングとプラグは別パーツ。アウターバレルの口径はなぜか10mmしかなく、.45口径の迫力が感じられないのは残念だ。

コマーシャルモデルの刻印
米軍納入型ではなく民間販売用コマーシャルモデルの刻印が打たれている。設計者である六人部氏がこちらの方が好みだったという説もある。

エジェクションポート
エジェクションポートからは内部ユニットが丸見え。今の感覚では興ざめだが、当時はこれを気にするガンファンはほとんどいなかった。スライドストップの機能もある。

ワイドスパーハンマー
ワイドスパーハンマー、U字突起のサムセフティなどリアルなM1911A1の仕様だが、ファイアリングピン後端の再現はされていない。またグリップセフティは動くが機能しない。

ガスタンク
取り外し式のガスタンクがグリップ内に収納されている。一般的なガスガンのようにこの状態でもガスチャージが可能。

マガジンのと位置関係
マガジンのと位置関係。マガジンはワリバシだが、金属製でしっかりとしたリップが付いており、使用に不安はない。

ガスタンク
取り外したガスタンク。真鍮製でなぜかコルトの刻印まで入っている。予備があれば連続して撃ち続けることができた。

パッケージ
クラシカルな雰囲気のパッケージ。箱にも大きくCOLT'Sと入っており、今なら商標問題に引っかかりそうなデザインだが、当時はこれが当たり前だった。

マニュアル
シンプルなマニュアル。パーツリストには後にバリエーションとして発売されるゴールドカップナショナルマッチの部品も記載されている。
manual.pdf (7.8MB)

DATA


発売年 1989年10月末
発売時価格 ¥13,800
¥16,800 (木製グリップ付)
全長 実測 215mm
重量 実測 585g
バレル長 -mm
発射方式 ガスブローバック
使用弾 6mmBB弾
装弾数 12発
平均初速 -m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2019/05/26


■関連リンク

ビンテージ エアガン レビュー TOP ビンテージ エアガン レビュー TOP

トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 - トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 -

モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史 モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史

考察 ブローバック・ガスガン 考察 ブローバック・ガスガン