東京マルイ Vz61 スコーピオン

東京マルイ Vz61 スコーピオン

写真&解説 YAS

解説

東京マルイは1980年代にトイガン市場に参入し、常にエポックメイキングな製品を世に送り出してきた。有名なものは世界初の電動ガンだろう。そして以前に紹介した世界初のブローバックガスガン、まぁ、これは現在と構造が異なるものではあるが。そして今回紹介するのも世界初、発光するBB弾を撃てるエアコッキングガンだ。そう、現在ではトレーサーとも呼ばれている。

トレーサーの原理は内部に組み込まれた発光ユニット(カメラのストロボのようなもの)をBB弾の発射・通過と同時に光らせ、蓄光材を混ぜたBB弾に光を蓄えて発射する。するとグリーンやピンクの光跡を描きながらBB弾が飛んでいくという仕組みだ。現在では紫外線を発光する製品が多い。

このトレーサーを、1987年に世界に先駆けて発売したのが東京マルイ。しかも、第一弾はなんとチェコスロバキアのVz61スコーピオンという小型サブマシンガンに発光ユニットを内蔵してしまったのだから驚きだ。

このスコーピオンの発売のすぐあと、サイレンサータイプの発光ユニットも発売された。

現在でもトレーサーや蓄光弾は各社から様々な製品が発売され、ナイトゲームやインドアゲームで広くユーザーに愛用されている。そのルーツはこのマルイのスコーピオンにあるのだ。

サイドビュー左
サイドビュー右
小型サブマシンガンのVz61をうまく再現している。ただ、マルイの電動ガンVz61と比べるとレシーバーが少し長い。レシーバーは樹脂製のモナカ構造だ。

バレル
樹脂製アウターバレル根元にはリング状のスリングスイベルが標準装備。インナーバレルは光をBB弾に当てるため、なんと透明のアクリルパイプ製だ。ところが、命中精度は当時のエアガンとは思えないほどに高い。

現在のマルイの0.2gバイオ弾を使用して、室内距離8m、立射でラフに撃っても10cmに収まる優秀さだ。初速は67m/s前後で安定、これが発売から35年経過しているエアガンなのだから、そのクオリティの高さに震えが止まらない。

当時のサバゲーはJACのフルオートガスガンが席巻しており、パワー競争が始まっていた。そんな中においてマルイのコッキングガンは他社を圧倒する命中精度と耐久性、そしてコスパの良さを武器に、着々とそのファンを獲得していった。

レシーバートップ
レシーバートップのエジェクションポートはダミー。金属製のワイヤーストックはレシーバー上部に折りたたまれている。スコーピオン(蠍)の異名を持つ由縁だ。

ワイヤーストック
ただ、ワイヤーストックを伸ばした状態ではロック機構がない。

フロントサイト
フロントサイトガードがストックのロックを兼ねている。また左側のコッキングノブが長くなっていてコッキング操作しやすくなっている。コッキング操作自体も当時のエアガンと比較するとずば抜けて滑らかで軽い。

リアサイト
リアサイトはノッチの深さが異なるL型切り替え式。

セレクター
セレクター発光オン
セレクターは中央がセーフポジションで、セミオートポジションが発光オフでの射撃、フルオートポジションが発光ありでの射撃となる。電池を入れた状態でセレクターをフルにすれば横のパイロットランプが赤く点灯する。マガジンキャッチボタンもしっかり機能する。トリガーは樹脂製でやや粘るがトリガープルは2.1kgと重すぎない。

実際ハイパー道楽の0.16gフォトンBBを使用して撃ってみたが、光り方は現在のトレーサーに及ばないものの、しっかりと発光BB弾が飛んでいくのがわかる! そのさまに感動すら覚える。
現在はトレーサーユニットをマズルに装着するのが主流だが、エアガン本体に内蔵する仕組みも違う楽しさがある。

グリップ
トレーサーを発光させるために、グリップ内部は単三電池を2本入れるスペースになっている。グリップ底部の蓋をスライドさせてオープンする。

マガジン
マガジン装弾数は28発。複列式で1列目を撃ち終えたら、ボトムのボタンを押して2列目に切り替える。中に錘が入っていて重量は115g。リップがないので、弾を入れたマガジンを逆さにすると弾が落ちてしまう。当時はリップがないエアガンが多く、とくにマルイの初期のモデルはこの点を指摘されて、のちに改良されていった。装填しやすくするためにリップに取り付けるじょうろ型の治具も付属する。

パッケージ
この当時まだマルイのロゴマークはカタカナ表記の旧タイプ。パッケージに描かれた光る弾道もインパクトがありどんな仕組みなのかと話題になっていた。

発光ターゲット
付属の発光BB弾と発光ターゲット。蓄光材が使用されており、強い光を受けるとしばらく発光し続ける。

取説
取説には「暗闇を裂いて光るBB弾が飛ぶ!」というキャッチコピーや、本体の操作方法以外にも、トレーサーの電池セット方法や、発行ターゲットの使い方まで、図解入りで細かく説明されている。マニュアル.PDF (630KB)

当時のチラシ
当時のチラシ。ラインアップとしてはまだエアーコッキングシリーズとガスブローバックのみがラインアップ。MPL、MP5などのサブマシンガンの姿も。G3はラインアップに加わっているが、M16A1はこの時まだ掲載されていない。サバゲーでの速射性が求められた時代なのでポンプアクションモデルも追加された。UZI SMGもハンドガードを前後させてコッキングできるのだ。チラシ.PDF (1MB)

DATA


発売年 1987年8月 (Vz61スコーピオン)
1987年年末 (サイレンサー型 発光装置)
発売時価格 ¥6,500 (Vz61スコーピオン)
¥3,900 (サイレンサー型 発光装置)
全長 実測 285/548mm (ストック伸長時)
重量 実測 716g (電池含まず)
バレル長 -mm
発射方式 プルコッキングエアー
使用弾 6mmBB弾
装弾数 28発
平均初速 67.52m/s

撮影協力:FIRST 中古侍

2022/04/05



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