MMC M16A2 SP

MMC M16-A2 SP ガスライフル

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

このコーナーでは過去にもふれた言葉だが、かつてエアガン業界には「イチロク戦争」と呼ばれた時代があった。JAC、MGC、コクサイ、ホビーフィックス、LSなどが次々とM16系のエアガンを発売し、各メーカーがしのぎを削っていた。

JACはパワー重視のBV式ガス、MGCもガスだが遊べる空撃ちモードと豊富なバリエーション展開、コクサイは正確なセミオート、ホビーフィックスは圧倒的な多弾数、LSは価格の安さと、各社それぞれに個性を打ち出し、ブレない製品作りに情熱を燃やしていたのである。

そんな中、当時の最新バリエーションだったM16A2の完全再現モデルをひっさげて、突如、業界に現れたメーカーがMMC(ミリタリー・モデル・コーポレーション)だ。
新規メーカーではあるものの、LSからスタッフが独立して作った会社のため、エアガン製造に関するノウハウには十分なものがあったはずだ。機種選定の点でも、まだどこもモデルアップしていなかったフルサイズのM16A2を選んだあたりに、老舗のルーツを感じる。

MMCは1989年はじめに第一作目となるエアーコッキング式のM16-A2 エアータイプを発売すると間髪入れずに本ガスライフルを発売した。

製品としてはマガジン内にガス圧の掛からない非BV式のガスガンで、ガス消費量の少なさがウリだった。しかし、肝心のパワーがかなり弱かったことで、ガンファンの落胆ぶりは相当なものだったようだ。当時はサバゲーで勝てないエアガンはまず売れなかったし、¥24,000(標準仕様)と、MGCと同価格だったにもかかわらず、金属パーツが少ないためか、すぐに壊れるトラブルが続出した。

80年代のウッドランド迷彩にフリッツヘルメット、LC2米軍装備にピッタリなのはやはりM16A2しかない。商業的には成功しなかったが、歴史に残る名作となり得る可能性はあっただけに残念である。
MMCはこのM16-A2シリーズの次に、L85-A1ガスライフルシリーズを発売した後、わずか2年というメーカー活動に終止符を打つことになる。

MMCのM16A2
デラックスバージョン
業界初のモデルアップとなったMMCのM16-A2 ガスライフル。そこにスペアマガジンホルダーとチークピース(カタログではチークパット)を装備したデラックスバージョンがM16A2 SPだ。M4カービンが登場する以前のM16シリーズはレシーバーとキャリングハンドルが一体だったため、スコープを載せるにはチークピースが必要だ。しかしMMCではスコープが別売りで、チークピースのついたこの状態ではかえって撃ちにくい。

フラッシュハイダー
上部のみ開口しているバードケージ・フラッシュハイダー、太いバレル、リブ入りの丸形ハンドガードと、当時最新型だったM16A2のデザイン。アウターバレルは真鍮製、インナーバレルはアルミ製だ。

リアサイト
レシーバー部もフルアジャスタブルのリアサイト、丸形のボルトフォアードアシストノブ、三角形のケース・ディフレクター、フィンガーチャンネルの付いたグリップといった、M16A2から採用された機構がリアルに再現されている。

チークピース
チークピースは左右に2分割されており、ネジとナットでストックを挟み込むようにして固定する。他メーカー製のM16に流用するユーザーも多かったようだ。

スペアマガジンホルダー
トイガンメーカーの純正品としては、MMCがはじめて製品化したスペアマガジンホルダー。機関部右側面のマガジンキャッチと連動しており、マガジンの出し入れはスムース。

3バースト機能
M16-A2 ガスライフルのシリーズはメカニカルの3点バースト射撃機能があるのが特徴だ。セレクターの位置はフルとセミの中間で、レシーバーの刻印とは異なるのでシールを貼って示されている。

リキッドチャージ
ガスはグリップ底部からリキッドチャージする。MMCのユニットはガスの消費量が少ないが、それでもマガジン内の全弾を続けて撃ち切ることは難しかった。

ブースターキット
そのため、外部パワーソース用のブースターキットも当初より別売(¥5,000)していた。
初期型マガジンはエアコッキング版と共通のスティックマガジンをアウターケースに差し込む二重構造で装弾数23発と少なかったが、後に装弾数66発に改良された。ただし、リップ部分も含めてオールプラ製のため、耐久性に難があった。

パッケージ
当時の長物エアガンとしては平均的な作りのパッケージ。本文中にもある通りサバゲーで使うとすぐに壊れてしまうため、このように完全な形で残っている個体は少ない。
余談だが、電動給弾器クイッくんはもともとMMCが発売したもので、公募によりその名称が決まり、その後、MMCからビッグモデルに引き継がれた。

マニュアル
微に入り細にわたった丁寧なマニュアル。後半の極秘情報というページなど、実に趣が深い。
マニュアル.PDF (27MB)

DATA


発売年 1989年3月 (M16-A2)
発売時価格 ¥24,000 (M16-A2 フルセット)
¥24,800 (M16-A2 SP)
¥23,000 (M723カービン)
¥23,000 (M723ショーティー)
¥23,000 (M655)
全長 実測 1,002mm
重量 実測 2,633g
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガス / 外部式ガスの2WAY
使用弾 6mmBB弾
装弾数 23発(初期型) / 66発(後期型)
平均初速 -m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/02/16


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