ファルコントーイ スペクター
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
エアガンが商業的にヒットする要素は大きくふたつある。ひとつは言うまでもないが実射性能や発射機構の優秀さと、もうひとつは、ガンファンだけではなく時には一般人に対しても万人受けする絶妙な機種選定である。
そのどちらの要素に対しても、つねにチャレンジし続けていたメーカーがファルコントーイだった。性能に関しては、優秀さだけではなく斬新さや面白さを追求していたと言えるかもしれない。以前紹介したH&K MP5Kなどはその最たるもので、後にも先にもあんなヘンテコな機構を持ったエアガンはないだろう。
機種選定の点でも衝撃的で、このスペクターなど、ファルコントーイでなければまずモデルアップしないのでは、と言えるほどマイナーなサブマシンガンだ。実銃はイタリアのシテス社が製造し、一時期、イタリア軍の特殊部隊が使用していたらしいが、ハリウッド映画でヒーローが使うような銃ではなく、普通のトイガンメーカーなら製品化を躊躇するはずだ。
発射機構は、当時としては一般的な外部ソース式のガスガンで、1989年に同社から発売されたガリルSARで搭載された発射ユニット系が内蔵されている。全体的な作りも丁寧で耐久性も高く、60発という装弾数はサバゲーでの活躍が十分期待できた。
しかし、このときすでに長物エアガンは電動ガンが主流となりつつあり、皮肉にも亡霊という名の短命なガスガンとなってしまったのである。


コンパクトなスペクターが持つ独特の雰囲気がうまく表現されている。重量1656gと大きさの割にはズシリと重く剛性感も高いため、ファルコントーイの製品にしては珍しく、多少ラフに扱ってもビクともしない。

四角いバレルジャケットが特徴のマズル部分。フロントサイトガードは亜鉛ダイキャスト製、ポストタイプのフロントサイトはスチール製。

リアサイトベースがフォールディングストックの取り付け基部となっており、複雑な形状であることがわかる。ストックに見えるアルミリベットは実銃にはないが、逆にカッコ良く見えるのは筆者だけだろうか。

グリップ上部のレバーはセミ/フルオート切り替えのセレクターで、トリガーの上にあるのがセフティ。マガジンキャッチはかなり大型で、トリガーガードの内側から操作するデザイン。

機関部上にピタリと収納されたスチールプレス製の折り畳みストック。ファルコントーイでは別売り(¥6,500)だったが、これがあるとないとでは全体の雰囲気がまったく違う。

ストックを伸ばした状態。しっかりとた作りで、ガシッと構えられる。ストックの支点が上にあるため、実銃では反動の制御がしやすいと言われている。

左右両側から操作できるチャージングハンドル。作動時はこのストローク分だけダミーボルトカバーが前後に動き、ブローバックのような感覚が味わえるというのが特徴だった。なお、ガスのコネクト用カプラーはグリップ底部にある。

オールプラ製のマガジン。実銃では太い部分に9mmパラが4列に装填されるためかなり重いらしいが、ファルコントーイの物は軽く操作性も良い。

しっかりとした金属製のリップ。以前紹介した56式のマガジンと同じデザインだ。
DATA
| 発売年 | 1993年春 |
| 発売時価格 | ¥18,000 |
| 全長 | 実測 353mm/582mm (ストック伸長時) |
| 重量 | 実測 1,656g |
| バレル長 | -mm |
| 発射方式 | 外部ソース式ガス セミ/フル切替 |
| 使用弾 | 6mmBB弾 |
| 装弾数 | 60発 |
| 平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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