
令和7年度 富士総合火力演習 2025
photo:蔡明航 Report: YAS
2025年6月8日に東富士演習場で実施された富士総合火力演習、通称『総火演』の模様をレビュー。
総火演は、令和5年度以降一般公開を中止し、報道関係者向け公開とYouTubeの陸上自衛隊公式チャンネルでのライブ配信が行われている。青少年や再就職援護協力企業向けの招待も実施された。
16式機動戦闘車(MCV)。共通戦術装輪車の車体ベース車両。105mm施線(ライフル)砲を装備した8輪戦闘装甲車だ。
共通戦術装輪車 (偵察戦闘型)。87式偵察警戒車の後継として、偵察部隊などに装備され、各種偵察用カメラ、レーダーなどを搭載し、敵情を偵察するとともに、獲得した情報を即時に共有することができる。研究開発が終了し、制式名称は『25式偵察警戒車』と決定した。主武装はMk44 ブッシュマスターⅡ 30mm機関砲。
共通戦術装輪車 (機動迫撃砲型)。即応機動聯隊などに装備され、搭載される120mmの迫撃砲火力により敵の人員、軽装甲車などを制圧・撃破することができる。制式名称は『24式機動120mm迫撃砲』と決定、令和6年度から調達を開始している。フランス製の半自動型2R2M迫撃砲を搭載する。
島嶼防衛用高速滑空弾。極超音速滑空体(HGV)を用いたスタンドオフ兵器。主に島嶼防衛を目的とし、敵の脅威圏外から攻撃可能な高高度・長射程能力を備える。ブロック1は射程500~1000km程度で、2026年度頃から配備予定とされる。早期装備型として既存技術を活用。ブロック2は射程を大幅に延伸(最大3,000kmを目標)。ブロック2Aおよび2Bがあり、2030年代の配備を目指す。対艦用途や潜水艦発射型の開発も検討中。
12式地対艦誘導弾(能力向上型)。陸上自衛隊の長射程ステルス巡航ミサイル。射程1,000~1,500km、ステルス性・誘導精度を強化。地・艦・空発射型を開発中で、2025年度から配備予定。離島防衛や反撃能力を担う。
演習では擬装された12式地対艦誘導弾も展示された。
120mm迫撃砲 RT。もともとフランスで開発されたもので、豊和工業がライセンス生産している。
軽装甲機動車のルーフから01式軽対戦車誘導弾を射撃。
UH-2 多用途ヘリ。乗員2名、最大で13名。重量5.5t、全長17.1m、全幅2.9m、最大速度230Km/h。スバルとベルの共同開発で、ベル412EPIがベースとなっている。UH-1と似ているが、4ローターブレード、双発エンジンなのが特徴だ。
高機動車で隊員が警戒しながら移動。
偵察バイクが旋回!
AH-1S 対戦車ヘリ。1982年から調達が開始され、逐次近代化改修も行われ、赤外線画像装置、レーザー測距システム、赤外線ジャマーなどを搭載し、夜間戦闘能力、射撃精度、生存性の向上が図られている。20mm機関砲を固定武装とし、TOW対戦車ミサイル、70mmロケットを搭載可能。今後はAH-64D、AH-1S、OH-1などを廃止し、無人航空機に移行していくようだ。
中距離多目的誘導弾。6発のミサイルを搭載。推定射程約8~10km。
10式戦車。44口径120mm滑腔砲搭載。最高速度約70km/h。重量44t。V型8気筒ディーゼルエンジンは1,200hpを発揮する。部隊運用の通信システム、C4Iを搭載。
90式戦車の一斉射撃。90式戦車。44口径120mm滑腔砲搭載。最高速度約70km/h、航続距離約350km。重量50.2t。V型10気筒ターボチャージドディーゼルエンジンは1,500hp。
前方へ煙幕を展開する90式戦車。
空挺降下する隊員。
V-22 オスプレイ。双発のティルトローター機で、垂直離着陸が可能。巡航時はプロペラを前方へ向けて高い航続性や速度能力を発揮する。最高速度556km/h、航続距離3590km。湿度が高いためかローター・ボルテックス・トレイルと呼ばれるローターブレードから線を描く現象がみられた。
今年の総火演では、島嶼防衛を想定した、島嶼奪還戦闘を行っていた。とくに塹壕戦をテーマとした敵占領下の塹壕への侵入・掃討などをおこなった。隊員のボディカメラ映像を会場で流していた。
89式装甲戦闘車。主武装に90口径35mm機関砲KDE、副武装として79式対舟艇対戦車誘導弾を2発と74式車載7.62mm機関銃を搭載。乗員3名+兵員7名。
夜間演習では曳光弾を使用しての射撃が行われた。
偵察用UAV スキャンイーグル。アメリカ ボーイング・インシツ社製。全長1.91m、全幅3.11m。令和元年度から配備された中域用の偵察ドローン。
偵察UAV スカイレンジャー。カナダ エリヨン社製。平成28年度から配備された狭域用の偵察ドローン。
19式装輪自走155mmりゅう弾砲。52口径155mm榴弾砲したFH70の後継装備。牽引式だったFH70に対して8輪軍用トラックに車載したことで機動力、展開能力が向上している。重量25t、乗員は5名だが、キャビンに乗れるのは3名までで、残り2名は車体中央部のカゴに座っている。
水陸両用車 AAV7。乗員3名+兵員21名。重量21.8t、全長8.2m、全高3.3m、全幅3.3m。武装は12.7mm重機関銃M2×1 40mm自動擲弾銃Mk.19×1。水陸機動団 戦闘上陸大隊に配備されている。展示の車両は第3戦闘上陸中隊所属(竹松駐屯地)。
敵のレーダーや通信を無力化するネットワーク電子戦装備(NEWS:Network Electronic Warfare System)の電子戦装置IV型車両。
20式5.56mm小銃の展示も。こちらはスコープ、レーザーエイミングモジュール、ウエポンライトのオプションを装着している。
こちらの20式小銃はBeretta GLX160 A1グレネードランチャーをレイルアンダーマウントしている。オプティクスはAimpoint COMP M5。
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