妄想兵器研究所 陸上自衛隊 37式無人偵察警戒車『ニンジャ』
ミリタリーマニアの妄想から生まれた兵器・装備を具現化する研究施設へようこそ。今回は、陸上自衛隊が2037年に採用するかもしれない新型無人偵察車両(UGV)「37式無人偵察警戒車」を紹介します。島嶼防衛の最前線で、航空機やドローンでは捕捉困難な敵歩兵や軽車両を警戒し、MRCVの火力を誘導する「電磁の目」です。
妄想提供:ハイパー道楽

37式無人偵察警戒車:島嶼防衛の監視者
2039年、南西諸島・尖島の夜明け前。
敵の上陸用舟艇と水陸両用戦闘車が島の北岸に接近しつつある。だが、彼らの動きはすでに捉えられていた。37式無人偵察警戒車、愛称『ニンジャ』――乗員なき監視者が、密林の縁から静かにその動向を注視している。
高精度センサーが捉えた情報は、リアルタイムでC4Iネットワークを通じてMRCV(多目的ミサイル車両)へと送信され、数秒後には対舟艇・対装甲の飽和攻撃が発動。姿を見せることなく戦場を操る、それが37式の本質だ。
この“無人の眼”が誕生する背景には、2020年代後半の厳しい安全保障環境があった。周辺国による海洋進出、無人兵器の普及、そして島嶼部への侵攻リスク。これらに対応するには、隊員の安全を確保しつつ、情報優位と迅速な対応を可能とする新たな装備体系が不可欠だった。
従来の有人偵察車両では、密林・市街地・断崖といった複雑地形への対応に限界があった上、乗員が常に危険に晒されていた。そのため陸上自衛隊は、「地上における無人の眼」を求め、防衛装備庁は2025年に小型UGV(無人地上車両)計画を始動。主要車両製造企業が車体プラットフォームを、先端電子システム開発企業が自律制御システムを、火器・重装備製造企業が火器類の国産化を担当。複数回の試作と実証試験を経て、2037年、ついに37式無人偵察警戒車が制式化された。
戦場での役割は単なる偵察にとどまらない。機動戦闘車MCVや、多目的ミサイル車両MRCVなどの地上戦力と連携し、情報・攻撃の中核を担う“Ground Wingman”として分散戦術を支える。非武装型はロボットアームや輸送モジュールを搭載し、災害時の人道支援や物資搬送にも柔軟に対応。任務に応じた仕様変更が可能なマルチロールUGVとして、国防における新たな常駐戦力の一翼を担うのである。
技術の核心:37式の性能
37式は、全長2.5m・全幅1.5m・全高1m、車重1.9トンのコンパクトな無人戦術ビークルだ。偵察・監視・救助の機能を一体化し、島嶼戦に求められる“どこでも行ける機動力”を実現している。
6輪のコンバットタイヤにインホイールモーター方式を採用。各輪を個別に駆動制御できるため、悪路でのトラクション性能や静音性、緊急時の走行継続性に優れる。舗装路では時速100km、水深1mの浅瀬や砂地・岩場も走破できる。
動力はモーター駆動+エンジン発電のシリーズハイブリッド方式。航続距離は最大500km。監視用ステイでは太陽光とエンジン発電を併用し、最大120日もの潜伏運用が可能だ。20dBの静音走行では4時間・100kmの隠密行動を維持できる。
制御は遠隔操作と自律制御のハイブリッド。後方オペレーターが1人で最大4両を指揮し、事前マッピング済み区域ではAIが自律巡回・敵味方識別・脅威分析を実施。通信断絶時には短時間の自律移動で任務を継続する。16式(改)機動戦闘車と連携し、僚車(Ground Wingman)としての支援行動も担う。
偵察の要となるセンサーはLiDAR360、マルチスペクトルカメラ、ミリ波レーダー、ESM/SIGINTなどをAIセンサーフュージョンで統合。敵通信源や車両の特定、目標データリンクをC4Iシステム経由で共有し、攻撃ドローンや誘導兵器の“目”となる。GSSN妨害下でもVO(ビジュアルオドメトリ)とIMUにより自位置推定が可能だ。また小型航空偵察ドローン、愛称『フクロウ』を1機搭載し、監視範囲を拡大する。
武装は、大型サイレンサー付き6.8mmチェーンガン、指向性ジャマー/EMP、発煙弾を標準装備。軽装甲車や歩兵、UAVなどからの最低限の自衛用とし、将来的には10kW級の対空レーザー搭載も検討されている。
防御は軽量セラミック装甲と、赤外線低減メタマテリアル+適応型IRパネルにより生存性を強化。
輸送性にも優れ、C-2輸送機からの空中投下、オスプレイ、チヌーク、LCAC、機動舟艇に対応。4両で1小隊を構成し、偵察の空白を埋め、長時間の戦場監視を支える無人の“眼”となる。
災害救助:人命救助と瓦礫撤去
災害救助モードでは、武装を取り外し、2本のロボットアームと運搬ラックを装備できる。静音走行で被災集落への進入、ロボットアームによる倒木やコンクリート片の除去、熱源探知による生存者の発見、がれき下からの救出作業、物資(水50L、食料100kg)や負傷者の運搬ラックによる避難所への搬送が可能だ。また、C4Iシステムを通じて災害対策本部と常時接続し、状況を逐次送信する機能を有する。島嶼部の狭隘地形に適した無人支援機として、迅速な人命救助と初動復旧を目的とする。
37式無人偵察警戒車:スペック詳細
項目 | 詳細 | 備考 |
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名称 | 37式無人偵察警戒車 (略称:URCV、愛称:ニンジャ) |
2037年採用、偵察・監視任務 |
寸法 | 全長2.5m × 全幅1.5m × 全高1.3m(アンテナ除く) | |
重量 | 1871kg (偵察警戒モード) | 武装:41kg、ターレット:83kg、動力:466kg、6輪駆動系:610kg、車体:340kg、装甲:210kg、センサー:61kg、ドローン+その他:60kg |
機動方式 | 6輪コンバットタイヤ(24×10R12、直径0.6m、幅0.25m) アクティブサスペンション(ストローク0.2m、車高調整+0.15m) 可動式シュノーケル(電動展開 上面1.4m) |
性能:舗装路100km/h、段差0.5m(車高調整で干渉回避)、浅瀬1.2m(10km/h,潮流1m/s以下),砂地傾斜15°(20km/h),岩場隙間20cm(5km/h)、旋回半径2m |
最低地上高 | 0.38m | |
動力方式 | レンジエクステンダー型シリーズハイブリッド モーター :PMSM,6輪独立駆動,180kW(連続120kW),2100Nm,95%効率,108kg(18kg x 6),IP68,グラフェン冷却,IR99%低減,AI制御(50TFLOPS,1ms) バッテリー :80kWh全固体電池,700Wh/kg,114kg,急速充電18分 エンジン(発電専用) :0.8Lロータリーターボ,120kW,180Nm,100kg,燃料100L(JP-8,80kg),EMP防護,サイバー対策 発電パネル :ペロブスカイト/シリコンタンデム(3.1m²,30%効率,2.79kWh/日,14kg,IP68,IR90%低減,自己修復コート) |
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航続距離 | 約500km(電池+燃料) - 静音走行:20dB@1m、航続100km(4時間、10kW) - 潜伏監視:約5日(バッテリーと太陽光)、60~120日(エンジン充電) |
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武装 | 6.8mmチェーンガン 重量:41kg(本体15kg+懸架10kg+弾薬16kg)、弾薬:6.8mm x 51タングステン芯徹甲弾、発射速度:1~800rpm(デジタル可変で単射、バーストも可)、搭載弾数:800発、有効射程:800m、8mm鋼板貫通@300m |
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発煙弾 | 6発、2kg | |
対空レーザー (計画中オプション) | 搭載時200kg、10kW、射程2km、ドローン焼灼(5秒)、センサー盲目化(5km) | |
電波妨害装置 | ジャマー:7kg、指向性(90°扇型、250m、100mで99%、250mで70%、遮蔽物減衰20~50%)、20MHz~6GHz(ドローン、GPS、通信)、電力100W、AI最適化 |
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ターレット | Protector RS3 RWS、83kg(制御部+基部+装甲)、旋回速度:水平120°/秒、俯仰60°/秒(-15°/+60°)、AI制御(50TFLOPS、1ms、複数目標追尾、誤射防止)、Level 2正面装甲 | |
機動制御 | 自動運転レベル4(ROS3.0、量子SLAM、誤差10cm)。 環境適応:事前マッピング済みのジャングル、砂浜、構造化市街地、瓦礫を10cm精度で走行。複雑環境(非構造化市街地、ジャミング下)は遠隔制御優先。 AI:50TFLOPSで動的経路計画(1ms)、障害物回避(99.9%)。遠隔制御:オペレーターがリアルタイム映像(一人称、三人称視点切替)で手動運転、AI支援あり(1人4両制御)。 |
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火器管制 | AI制御:複数目標追尾・優先度提案、動的予測、弾道計算、敵味方民間人識別(99.9%精度)、誤射防止支援。遠隔制御:オペレーターがリアルタイム映像(4Kカメラ、赤外線)で最終標的選択と交戦判断 |
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センサー | 環境認識
(25kg、120W): 情報戦/探知
(16kg、40W): 人命救助
(5kg、15W): 自律制御
(3kg、10W): 自己診断
(2kg、10W): 補器類
(10kg,10W): |
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ドローン | 搭載型 空中偵察ドローン RD-01「フクロウ」 全長 約75cm 重量 約3kg(センサー含む) 高密度全固体電池(120Wh)、補助ソーラーセル付き 航続時間 最大約60分 通信 5km圏内リアルタイム画像伝送(AES暗号) センサー 可視光・赤外線・レーザー測距・音響センサ CFRP製スライド式ルーフハッチから自動発進、自動回収 操縦 AI自律・プリセット航路・手動切替式 |
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C4I連携 | 赤外線(5km)、LIDAR(3km)、ESM(10km)、GPS(±1m) | |
装甲・隠蔽 | セラミック装甲(STANAG 4569 Level 2+/NIJ Level III相当)、対地雷 6kgTNT相当 メタマテリアル迷彩コート + 適応型IRパネル(熱・赤外シグネチャ92%低減) AI走行制御 + 静音走行モード(20dB @1m) 電波透過低減構造、周波数管理型通信、IR/光学多層迷彩塗装 自己露見監視(ESM/SIGINT)、車体全体にEMP対策構造を採用(FCS/C4I絶縁) |
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輸送 | C-2(10両) 空中投下(JPADS)対応、オスプレイ(内2+吊1両)、チヌーク(内3+吊1両)、LCAC(18両)、45m級多目的機動舟艇(20両) | |
編成 | 4両で1小隊、4小隊で1中隊 | 島嶼部の分散作戦を支援 |
尖島黎明 ― 沈黙の斥候 / ミッションストーリー
2039年、未明の南西諸島。雲間に浮かぶ三日月が、尖島の稜線をわずかに照らしていた。島には冷たい静寂が張りつめ、不穏な気配だけが静かに広がっていく。やがて警報が鳴り響き、敵影の接近を告げるとともに、島嶼防衛部隊の神経は鋭く研ぎ澄まされた。
だがそれよりも前――断崖の上、薄明かりに溶け込むように、ひとつの影が息を潜めていた。漆黒のステルス装甲をまとった37式無人偵察警戒車〈ニンジャ〉。その沈黙の斥候は、すでに夜の深みに沈む島で、任務を開始していた。
一際低いシルエットが、岩肌の一部のように動かず佇む。その機体は、不可視のセンサーネットを繊細に展開していた。赤外線センサーが微細な熱源を捉え、LIDARが地形の起伏を三次元データへと変換する。やがてルーフハッチが静かに開き、漆黒の翼を持つ小型偵察ドローン〈フクロウ〉が、微かなローター音と共に夜空へと舞い上がった。
陸と空、二重に張り巡らされた静かな索敵網が、密林と海岸線を精緻に覆い尽くす。その網に、上陸を試みる敵舟艇の粗野な動きが明確に捉えられた。〈ニンジャ〉のオペレーターが無線に声を発する。
「こちら偵察隊。海岸線にて敵上陸舟艇の動きを確認。ESMで通信波を探知、目標データをMRCVへ送信する。」
ネットワークを通じて即座に受信したミサイル部隊からの応答が返る。
「MRCV、目標データリンクを受信。対舟艇誘導弾、発射準備……射撃開始!」
次の瞬間、山の稜線を超えて誘導弾が飛来。上陸寸前の敵舟艇は、炎と黒煙をあげて波間に消えた。
だが敵も熟練した部隊だった。小規模な分隊がすでに山中へ潜伏し、集落への接近を図っていた。しかし〈ニンジャ〉のセンサー群は敵の経路を逐次補足し、AIはその動線を高精度で予測していた。一両の〈ニンジャ〉が村落背後の細道を抜け、低木の陰に身を潜めて待ち受けていた。
「敵狙撃兵、10時方向の建物屋根に潜伏。目視未確認、センサー感知のみ。射撃判断を仰ぐ。」
数百キロ後方の指揮拠点、戦闘監視スクリーンを前にしたオペレーターが、データと映像を確認する。脅威レベルを評価し、一言で指示を下した。
「許可する。チェーンガン、単発射撃で対応せよ。」
AI制御の6.8mmチェーンガンが応じ、静かに銃身が旋回。サイレンサーから発射されたタングステン弾は、低く短い「ボシュッ」という音とともに闇を切り裂いた。それはまさに、“影が放った刃”だった。
同時に、上空を敵の無人機が埋め尽くし始める。中には自爆型の危険なドローンも含まれていた。〈ニンジャ〉のセンサーが即座にそれを捕捉し、通信回線に緊張が走る。
「敵ドローン接近、対空警戒! EMP照射、指向性ジャマー作動中!」
ターレットが静かに旋回し、指向性電磁パルスとマイクロ波が空中に放たれる。その一撃に、ドローン群は突如動きを乱し、火花を散らして次々と墜落した。
島中央部では、別の〈ニンジャ〉が16式(改)機動戦闘車の先導という役割を担っていた。機動打撃車両は幹線道路を時速100kmで駆け、前方の交差点や谷間に潜む熱源をリアルタイムで捕捉、無線で共有。疾走する戦闘車列にとって、〈ニンジャ〉は迷いなき“眼”であり、信頼できる僚車だった。
戦いの最終局面。山中の高台に潜む一両の〈ニンジャ〉が、敵装甲車両の縦列を補足する。偵察ドローン〈フクロウ〉が目標にレーザーを照射し、即座に得られた座標が送信される。
「敵装甲車複数、MRCVに座標データ送信!」
ミサイル部隊がこれに応え、怒涛の弾幕が山の稜線を焼いた。敵の装甲車両部隊は次々に破砕され、中核戦力を喪失した敵は組織的な撤退を開始。尖島を巡る戦いはついに終息へと向かった。
沈黙に包まれた戦場にて、〈ニンジャ〉は光も音もなく任務を完遂し、再び深い影へと姿を消す。その沈黙の守護者は、語ることなく、次なる衝突の予兆に備えているのだった。
配備と調達価格
37式は2037年から配備が始まり、水陸機動団や即応機動連隊を中心に、280両が優先配備される(1両あたり約2.85億円)。今後6年間で、第1空挺団や全国の師団偵察隊にも展開し、最終的に全500両を導入する計画だ。
価格を抑えつつ、従来の有人偵察車両を代替し、偵察ドローンやC4Iシステムとリアルタイムで連携可能。輸送機、輸送ヘリ、LCAC、機動舟艇での展開にも対応し、高い機動力を発揮する。
主要部隊への配備数:
水陸機動団(佐世保):120両。南西諸島の最前線、LCAC、機動舟艇で展開。
即応機動連隊(那覇・熊本):160両。16式MCVと連携し、C-2で空輸可能。
第1空挺団(習志野):24両。オスプレイで緊急展開に対応。
師団偵察隊(全国):196両。87式偵察警戒車の後継として基地防衛や警戒監視を担う。
総調達数:500両(総額:約1475億円)
意義:戦場の先を視る「未来の監視者」
37式無人偵察警戒車は、省人化と即応性を両立した新時代の前哨兵である。高機動かつ多機能な設計は、単なる監視車両の域を超え、C4Iネットワークと連携して戦場の「目」と「神経」となり、情報優位を確保する。移動中でも高い隠蔽性を保ち、精密な索敵を継続できることから、航空ドローンを補完する「もう一つの目」として、地上から戦域全体の認識を支える存在だ。
有事には敵の先手を封じ、味方の反撃を導く。平時や災害時には、無人の目と意志が人命を探し出し、迅速な支援を実現する。
火力に頼らず、戦局を制する。
その機能と存在は、「量の防衛」から「質の防衛」へと進化する陸自の象徴であり、島嶼防衛の最前線から、日本の未来を静かに見据えている。
注意: 本コンテンツは「ハイパー道楽」による完全な妄想(フィクション)です。防衛省・自衛隊、その他登場団体に関する機密や事実とは一切関係ありません。あくまでミリタリーマニアの中二病的妄想としてお楽しみください。
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