マスダヤ リコイラースペシャル

マスダヤ リコイラースペシャル

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

かつて1980年代の初め頃まで、トイガンの世界には住み分けというか役割分担のようなものがあった。実銃に近いメカニズムやアクション、火薬を使った発火はモデルガンで楽しみ、弾を発射して標的に当てる遊びはエアガンで、といった具合にだ。

そこから長い年月が経ち、読者の皆さんには言うまでもないが、現代のエアガンは実銃が持つ魅力の多くを再現することに成功した。電動ガンのリアルな外観と正確な実射性能、また、ガスブロのアクションやメカは実銃さながらの迫力だ。

そんな中、どうしても再現の難しい要素がひとつあるとすれば、それは「発射音」ではないだろうか。記憶に新しいところでは、東京マルイが発射音を再現したVSR-10プロハンターGを2013年に発売したが、今回紹介するマスダヤのリコイラースペシャルは、それより30年も前に挑戦していたのである。

エアガンとしての構造は、78年に発売されたボルト888と同様のレシーバーが使用されており、チャンバーに直接7mmつづみ弾を装填する単発式だ。これは実銃のスプリング式空気銃によく見られる構造であり、当時としてはある意味リアルだったと言える。

もっとも特徴的なのはストック側面のスピーカーから出る発射音で、単3電池4本でサウンドモジュールを鳴らす仕組みになっている。発射音は「バシーン!」という昔のゲームセンターの銃のような音で、火薬の発射音とは似ても似つかないが、これには理由があると思われる。エアライフル射撃選手の候補者を育英する目的で日本ライフル射撃協会によって作られた、ビームライフルの音源にかなり似ているのだ。マスダヤとしては、あくまでも標的射撃用としてのコンセプトでこの銃を作ったわけで、競技用ビームライフルの音源に似せたと考えれば合点がいく。また、発射音モジュールのない廉価版として、リコイラーというモデルも発売された。

いずれにせよ、こうした試行錯誤の歴史の上に現代のリアルなエアガンがあると思うと、実に感慨深い。

美しいデザイン
全体的なバランスも良く、いま見てもなかなか美しいデザイン。ストックの形状は当時の競技用エアライフルを模したものと思われる。

Recoiler SP
ストックの左側面には「Recoiler SP」のプレートが誇らしげにインレイされているが、発射音だけでリコイルを発生させるようなギミックはない。

バレルは脱着式
バレルは脱着式で、テイクダウンレバーを90度回せば簡単に外すことができる。

フロントサイト
フロントサイトチューブに十字状のレテイクルがある変わったデザインだが、この部分をクルリと180度回転させると銃口部を被って弾が出なくなるため、なんとこれがセフティとしての役目を果たす。トリガー後方には通常のクロスボルト式セフティがあるため、二重の安全装置というわけだ。

シリンダー
シリンダーの形状はボルト888やサンダーボルトによく似ている。対象年齢10才以上用のため、スプリングはかなり弱めの設定。

単発式
単発式で、バレル根元のチャンバー部に直接7mmつづみ弾を装填する。実銃のスプリング式エアライフルと同じ構造だ。

発射音のスピーカー
これが発射音の鳴るスピーカー。音量はかなり小さく、音質もあまり良いとは言えないため、残念ながら迫力はほとんどない。

ストック内に単3電池4本を収納
バットプレートを回転させ、ストック内に単3電池4本を収納する。

発射音のスイッチ
グリップ下面に発射音のスイッチがある。

パッケージ
パッケージ。上箱にはASGKのシールが貼ってあり、箱には8401の表記がある。リコイラースペシャル、リコイラー共に1984年の発売だが、1986年にはマスダヤはトイガン事業から撤退してしまう。

マニュアル
当時、MGC以外の一般的なモデルガンにはここまで詳細なマニュアルはなく、これはマスダヤ製エアガン全般に言えることだが、メーカーとしての責任感を感じさせる丁寧なマニュアルだ。
マニュアル.pdf (1MB)


DATA


発売年 1984年
発売時価格 ¥9,000 (リコイラースペシャル)
¥5,800 (リコイラー)
全長 実測 918mm
重量 実測 1,120g
バレル長 360mm
発射方式 プル式エアコッキング
使用弾 7mmつづみ弾
装弾数 1発
平均初速 22.4m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2019/03/24


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