K.T.W. スパス 12

K.T.W. スパス 12

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

スパス12は、K.T.W.がメーカーとしてはじめて製品化したエアガンだ。「未開の銃に、挑戦」という同社のキャッチコピー通り、他の大手トイガンメーカーに先んじて発売され、業界を騒然とさせた話題作だった。

ほぼ同時期に、シェリフというメーカーからもガスガンとして発売されたが、こちらは外部ソース式だったためいわばガワのみの再現。ポンプアクション機構をちゃんと再現していたのは、K.T.W.だけだった。

基本的にハンドメイドで製造されていたため、なかなか量産が出来ず、価格も高価だったが、1998年、スパスジュニアという廉価版が追加発売される。これについては実に興味深いエピソードがあるので、紹介したい。

ある日、K.T.W.の社長である和智香さんのところへ、当時のアームズマガジン編集長から連絡が入った。「韓国でK.T.W.スパス12のコピー品が出回っている」というものだった。

さっそく、和智さんは人脈をたどって現物を入手。見れば、たしかに内部機構やパーツ構成までK.T.W.とソックリに作られたニセモノだった。当時はまだインターネットが普及しておらず、海外のエアガン事情に関する情報など、皆無に等しかった頃の話だ。

「これは放っておけん!」と意を決した和智さんは、単身、韓国を訪れ、ニセモノを作っているメーカー、ドンサン社に乗り込んだのである。

おどろいたのはドンサンの社長だろう。もちろん、仲介者を通してアポはとっていたものの、勝手にコピーした製品の本家が来るというのだ。もしや訴えられるのでは、と思ったとしても不思議はない。

ところが、ドンサン社長に面会した和智さんの言葉は意外なものだった。開口いちばん、「我が社のスパス12をコピーしてくれてありがとう!」と言い放ったのだ。

日本でいちばん小さなエアガンメーカーだったK.T.W.の製品が、コピーされるまで有名になったとは嬉しいかぎり、というわけで、これは和智さんの偽らざる本心だったそうだ。

さらに、「御社が製造したスパス12の在庫は私がすべて買い上げる」と申し出たというのだから、もう何をか言わんや。ドンサン社長のポカンとした顔が目に浮かぶようだ。

K.T.W.としては、OEM製造のメーカーをイチから探すより、ドンサン社に依託すれば手間が省ける。多少の仕様変更をする必要はあるかもしれないが、ドンサン社製スパス12を日本で販売すれば、ネックだった価格もクリアーできるというわけだ。

これがスパスジュニアとなり、その後、ヒット作となったウィンチェスターM73などは、K.T.W.が企画設計、ドンサン社が生産を行った。コピー商品を作ったメーカーとその本家が、正式に業務提携を結んだ結果である。

自社の製品をコピーした相手に対しても礼を尽くし、ビジネスパートナーとして迎え入れた上でウィンウィンの関係を築く。和智さんの大らかで深い人間性があればこその展開だ。

トイガン業界に逸話は数あれど、この話ほど面白く、人生の教訓となるエピソードはないだろう。

スパス12 左
映画、ターミネーターの大ヒットにより、世界中に名をとどろかせたスパス12。それをいち早くモデルアップしたKTWの行動力にはおどろくばかりだ。いま見ても全体的なプロポーションの良さ、表面仕上の荒々しさなどは秀逸である。

スパス12 右
構造はエアーコッキング式のポンプアクションで、発売当初はシングルショットだったが、その後4発同時発射となり、最終型のSLでは3発同時発射となった。

マズル
マズルパーツはスチール削り出し。フロントサイトは亜鉛合金だがキリッとエッジが立っており、全体的にカスタムレベルだといえる。

ハンドガード
ハンドガードは樹脂製。同時期に競作となったシェリフ製はここがスチールプレス製だったため、唯一、比較されてしまいがちな部分だった。

マガジン
アルミ製のマガジンチューブを回して取り外し、真鍮パイプのマガジンを引き出す。BB弾はハンドガード先端に開いた穴から入れるという斬新なデザイン。

ノズル
エアコッキングのため、ボルト(シリンダー)を後退させるとノズルが見える。真鍮製で強度、精度ともに高く、命中精度向上にひと役買っていた。

セフティ
クロスボルトセフティはダミーで、実銃ではアンロッキングレバーに相当するパーツがセフティ。

キャリアー
スチールプレス製の別パーツで今にも動きそうなキャリアーだが、これもダミー。

フォールディングストック
スパス12の目玉はなんといってもこのメタルフォールディングストック。U字状のアームレストもしっかり再現されており、これで「タミネ撃ち」をするのがガンファンの夢だったのだ。

パッケージ
パッケージはきわめてシンプルだ。本体にコストをかけ、宣伝費なども含め他の部分はなるべく簡素にする、というのがK.T.W.のモットー。

マニュアル
マニュアルの解説は手作りメーカーならではの細やかさだ。ユーザーからの問い合わせにも常に丁寧に答えていた。マニュアルPDF (4MB)

DATA


発売年 1989年 (SPAS 12)
1998年9月 (スパス・ジュニア)
発売時価格 ¥68,000 (SPAS 12)
¥13,800 (スパス・ジュニア)
全長 実測 1,045mm / 815mm (ストック折り畳み時)
重量 実測 3,470g
バレル長 -mm
発射方式 エアーコッキング
使用弾 6mmBB弾
装弾数 55発
平均初速 -m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/11/01


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