考察 ブローバック ガスガン

考察 ブローバック ガスガン 第4章

ブローバック・ガスガンのこれから

かくして、現在、10年前に想像できないほど、巷には、マグナを中心に、優秀なブローバックシステムを有する製品がずらりとラインナップされている。恐らく、ハンドガンの分野では、モデルガン・エアガン関係なく、ダントツでドル箱のジャンルであろう。それを裏付けるかのように、オートのハンドガンをモデルとする新規金型の製品がリリースされる場合、まずブローバックガスガンとして、リリースされる事が多い。

正直なところモデルガン・フリークには、少なからず、ストレスの溜まる製品リリース状況といわざるを得ないだろう。マグナブローバックは、パーツレイアウトが本物に近く、モデルガンへの転用も比較的容易なため、その後に、同メーカーからモデルガンがリリースされることもあるが、基本的に、モデルガンとエアガンでは、販売母数が1桁(或いは2桁)違うと云われているので、何はともあれ、ブローバック・ガスガンを発売すると云うのは、メーカーとしては当然の選択だろう。

マグナがはじめて登場して以来の、1998年春現在のブローバック・ガスガンの製品リリースを見てみよう。

まずは、マグナ・ブローバックのラインナップである。

さらにそれ以外では、主な製品として以下の製品がリリースされている。

※MGCのハイパーブローバックシリーズ(ガバや92Fなど)は、発売がWAのマグナ92Fより、遅い発売時期のものありましたが、基本的には GLOCK17のシステムを基本としているため、リストから除外。また、サンプロのハイパワーについても、まったくJAC時代の再販であったので、同じ理由から、除外しました。

以上見るように、ガスブローバックのジャンルは、10年前では、考えられないような豪華なラインナップを所有するにいたっている。またガバメントや92Fの様な定番となるモデルを網羅するにとどまらず、クーガーやソコムピストルなど、他のジャンルでは見る事のない、新型ピストルも登場している。もはや、ハンドガン・トイガンの、主流カテゴリー(或いは主力商品)である事は、これを持って納得して頂けると思う。

しかし、これらのラインナップとそのシステムを見渡し、ここで見逃せない事実がある。先に結論から述べてしまうが、それはWAが92FSをマグナ・ブローバックシステムで発売してから現在に至る、実に約5年、全くといって良いほど、目新しい新技術が導入されていないのである。それは、第2章でのべた、マグナ前史とは全く正反対とも言えるほどである。

確かに、HOP機能の導入や改善、新型バルブへの変更、フルオートモデルのリリースなどコマゴマとした改善は見られる。しかし、それは基本的には機能改善の範疇でとどまっているといわざるを得ない。

画期的とまでは云わないが、唯一新技術として注目すべきは、NLS(ノン・リキッド・システム)である。しかし、初めてウイルソンがこのシステムを塔載したとき、あまりにも不評だったため、正直、市場の印象はあまり良くない。

余談だが、このシステムはシグマ40Fでようやく実用レベルに達するのだが、シグマの発売時に、WAもあまり声高にNLSを宣伝する事はなかった。最近になって、ようやく自信を取り戻したようで、92Fの新型マガジン(R-TYPE)に搭載するなど、NLSを再び、前面に押し出すようになってきた。

マグナ以外のガスブローバック製品においても、基本的な状況は同様である。非マグナ製品の場合、当初マグナのデッド・コピー的な商品が続々発売されたが、 WAとの(消費者にとってはまったく非生産的な)争いの末、非マグナを(たとえへ理屈でも)主張できるような、差別化されたブローバック・システムを取る様になった。しかし、マグナのマグナたる所以とも言える、プレシュート機能では、マグナを超える新システムは誕生せず、結果、WAマグナとタニコバ・システムの中間的な製品が、現在の主流となっている。しかし、システムが、マグナ方式から遠ざかれば、遠ざかるほど、性能的には低下してしまうというのが、正直な現状である。もっとも実際には、WAは法的にはともかく、人情的には、真のパテント保有者として多くの人間に疑問をもたれるようなパテントまで取得してしまったため、各社、開発にあたって、そのパテントの範囲を回避せざるをえないことも原因となっているため、ある意味この言い方は公平とは言えない。

これらは、根本的な新システムの開発を必要としないほど、マグナブローバックが登場時点で、如何に高い完成度を獲得しいたかを物語っている。

そのため、マグナ・ブローバックにおいては、その基本機能に根本的には改革を行う事なく、ただその機種を拡充させていくだけで良かったわけである。このことが、ブローバック・ガスガンの華々しいラインナップ確立へとつながったわけである。

しかしその一方で、身もフタも無い言い方をすれば、マグナ登場により莫大なアドバンテージを獲得したWA(或いは業界と言い換えてもいいだろうが)は、この五年間ひたすらその資産を食いつぶしてきただけであった、との見方も出来るのである。

すなわち、如何に優秀なシステムをもつといっても、市場には予定調和というものが、必ず訪れる。平たくいえば、製品が市場をある程度飽和させた段階で、ユーザーに「慣れ」「飽き」というものが、生まれてくるのである。

現在、新しい機種(新規金型)の投入以外に、市場を刺激する要素がブローバック・ガスガンにないことが、正に如実にその事を証明している(それすらも既に飽和に向かいつつある)。この間に、はたして、何社がまじめに、次世代のトイガン・または業界の在り方を模索しただろうか。

このままでは、ブローバック・モデルガンを完成させた(ともいえる)、PFC/CPシステムが、スタンダードの地位を確立しながらも、最終的に、トイガンの市場をミニマムシェアでしか維持できなかった、歴史の繰り返しなってしまう可能性が極めて高い。

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※本記事は1998年6月22日に「とむべあ」さんが自身のWebサイト「Wildbears」にて掲載されたものを、ご本人の了承を得て転載させていただいています。10年前の記事ではありますが、その内容は非常に興味深く、共感しましたので、ハイパー道楽への転載許可をいただきました。基本的には全文とむべあさんの文章をそのまま掲載しています。


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