東京マルイ ダブルイーグル  【ハイグレード/ホップアップ】

東京マルイ ダブルイーグル【ハイグレード/ホップアップ】

レポート:石井 健夫

ダブルイーグルは、1989年にコルト社が発表した同社初のダブルアクション・オートである。名銃にしてベストセラーでもあるM1911とスライド、バレル、マガジン等には互換性があり、全体的なイメージもM1911から踏襲されている。グリップ右側に集約されたダブルアクション・メカニズムはM1911をベースに製造されたカスタムガン「シーキャンプ・コマンダー」との類似性が現在でも指摘されているが、コルト社は当時「独自の設計」をあくまでも主張した。

1985年にベレッタM92Fの勝利で終わった米軍時期制式拳銃トライアルを目指してコルト社が開発していた「SSP(=ステンレス・スティール・ピストル)」を市販品に転用したものでは? という説、あるいは「SSPはH&K P7をべースにライセンス生産する予定だったのでダブルイーグルとは別物」という意見もあり、真相は判然としない。
ただしダブルイーグルが当時まだ珍しかったオール・ステンレス製の自動拳銃だった事は確かだ。

サイドビュー左
残念ながらこの「コルト独自のダブルアクション」のトリガー・フィーリングは非常に評判が悪く、銃器専門誌や評論家からの発売前レビューでは「最悪な撃ち心地」と軒並み酷評された。M1911に無理矢理ダブルアクション・メカニズムを組み込んだイメージも災いした上、M1911の利点・美点とされていたコック&ロック式のサムセフティ・システムやグリップ・セフティを廃止し、SIG式のデコッキング・レバーを採用した事は流行に安易に乗った、とかえって不評を買った。シングルスタックのままの装弾数8発。総ステンレス製でM1911と重量も同じ。「名銃M1911をかえってダメにしただけ」という辛辣な意見もあり、市場ではサッパリ人気が出なかった。もちろん軍や警察への採用実績も皆無であった。

サイドビュー右
1991年には起死回生を狙って「ダブルイーグルMk.II シリーズ90」へのマイナーチェンジを図り、さらに「.45ACP」の他「10mmAUTO」、「.40S&W」、「9mmルガー」等の口径バリエーションを展開。同時にコンパクト版の「ダブルイーグル・コマンダー」やさらに小さな「ダブルイーグル・オフィサーズ」も製造。そしてアルミ合金フレームを採用した軽量バージョン等もメーカー純正カスタムとして企画する等、コルト社はあの手この手でイメージ挽回を図った。しかし何れも芳しい評価は得られず遂に1997年、ダブルイーグルは生産を終了したのである。
そう、この東京マルイ/ダブルイーグルもまた、いまや幻の存在となった実銃の面影を立体物として遺す「文化資料的価値」を有するトイガンの一つなのだ。

パッケージ
シリーズ共通お馴染みのサイズ、「縦290mm x 横180mm x 厚さ50 mm」のパッケージ。背景にあしらわれたポリスバッジには「SERGEANT/SHERIFFS OFFICE/FLA.」及び「DEPUTY★SHERIFF」等の文字が確認でき、昔風に訳すなら「フロリダ州保安官事務所」、現代的に言うなら「フロリダ州保安局警察」の巡査部長をイメージした箱絵…という事になる。そう言われると確かにダブルイーグル、アロハシャツにサングラスの刑事が持っていそうな雰囲気はある。

パッケージ内容
玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイ可能なシリーズ共通仕様の内箱。ダブルイーグルは名前に勇壮なイメージがあり、銃自体もシルバーで大柄なので実銃がマイナーで不人気だった事など気にしない、あるいは知らない=関係ないユーザー層には意外に人気があり、シリーズの中でもかなり上位に入る売れ筋商品だった。マズルに赤い保護キャップの付いた銃本体。グリップにはHOP-UP搭載モデルを表す帯が巻かれ、マガジンはセットされた状態だ。この他、化粧箱入りのBB弾(0.25g)150発と取扱説明書が付属する。

マルイのダブルイーグル
実銃のダブルイーグルが起死回生を狙って「Mk.II シリーズ90」へのマイナーチェンジを図った当時、世界中の銃器メディアに対して大々的なキャンペーンを打ったフシがある。なので1991年(か1992年)の春頃、何故か日本のトイガンメーカー数社が同時多発的にダブルイーグルのモデルアップを発表した事もあった。

実際にこの銃のトイガン化を実現し発売に漕ぎつけたのは以前「レトロGun」で紹介したLS製とこの東京マルイ/コッキングエアーハンドガンだけ。そして東京マルイのみがその後30年にもわたって販売を続け実銃の何倍もの、そう、恐らく「ダブルイーグルの名を冠した銃」としては世界No.1の売り上げを記録しているに違いない…のだが、残念ながら「ダブルイーグル/18歳以上用ハイグレードHOP-UP」、「ダブルイーグル/10歳以上用HOP-UP」、「ダブルイーグル/10歳以上用HOP-UPステンレス」の全てが、すでにメーカー出荷が停止しているので、もしこの記事を見て「カッコ良い!」「欲しい!」と思った方は、見つけ次第早めに買っておこう。今後の生産は無いとの事だ。

マズル
スライドやマズルやバレルブッシング及びフロントにチェッカーの入ったリコイルスプリングプラグ等で構成されたフロントビューはM1911そのまんまの安心感、安定感♪

実銃のステンレス素材を思わせるギラついた塗装とダブルイーグル(=双頭の鷲)の刻印が純粋にカッコ良い。真鍮製インナーバレルは.45口径の雰囲気を壊さない絶妙な奥ゆかしさで収まっているのが微笑ましいのだが、サイトアライメントを整えるため僅かに上方偏心して取り付けてあるのにハッとする。「エアガンは調子良く撃ててナンボ、弾が狙ったトコロに中(アタ)ってナンボ!」と雄弁に物語っているかのようだ。

グリップ
「シーキャンプ」みたくM1911のまんまで良かったのに…と世界中の誰もが思ったダブルイーグルのフレーム、特にグリップ部分の形状もリアルに再現した東京マルイ。でも握った感じはそう悪くないし、トリガーへの指当たりも思いのほか心地よい。グリップパネルの「COLT」マークが大きくて嬉しいし、樹脂表面の感じ等はかつて雑誌で見た実銃ソックリだ。人差し指を掛けて撃てるように大型でシャクレたトリガーガードは1980年代半ば〜1990年代半ば頃の世界的流行だった。いま見てもモダンレトロで魅力的に映る。
LYMANトリガープルゲージによる実測値は「1.71〜1.84kg」で、プラスチックが程よくしなる指当たりと「パキンッ!」と鋭い発射時の感触が独特だ。

コッキング
後述するマガジン及び給弾システムの構造から見てもダブルイーグルはシリーズで最も設計が旧いモデルだと思われる。なのでコッキング時にエジェクションポートは開かないしショートリコイル等の再現もない。スライドの幅も実銃より僅かに広いがセンチメーターマスター程ではない。

コッキングはいわゆるシンプルな一段引きなのだが、シアが掛かるまでのストロークは40mmもあるのでそれなりに「引き応え」がある一方、素早い連射等には不向きかも。スライドは幅も高さも十分にあり角に丸みもあって掴み易いのだが、後方の肉厚がやや薄いようで力が入ると少し凹む感触があり、いつの間にかこの「老兵」を気遣いながら扱っている自分に気が付いたりする(笑)。

ハンマー
スライド後部の斜めセレーションが深くて均一で、ステンレス風塗装のギンギラ感と のコントラストも相まってじつに美しいではないか。
リングハンマーはセンターに走る左右合わせ目ラインも忘れさせるほどに造形が素晴らしく、またグリップに挟まれたビーバーテール隙間スペースの四角い谷間もじつに蠱惑的! ここにハンマーのリング指掛けが収まる場面を想像し思わず手で起こしたくなるのだが…ククク…! このハンマーは完全なるダミーでスライドとも連動しない。

セフティの機能はデコッキングレバーにあり、写真は下げてセフティが掛かった状態を示している。

サイトピクチャー
リアサイト、フロントサイトは角がクッキリ立っているのだが、ステンレスカラーはやっぱり光ってしまう。サイトアライメントは上下左右ともしっかり合っており、HOPの掛かり具合も0.20gBB弾では明確に弾が浮き上がる様子が確認でき、0.25gBB弾ではもう少しストレートめに飛ぶ、という絶妙な加減。20m、30m、40mといった距離でも安心して撃てるのはこのシリーズの他の銃に並ぶ爽快さだ。

マガジン
マガジンは例によってホップアップ専用重量タイプ。内部ウェイト入りだが初期設計モデルなのでやや小振りで薄いタイプなので重量は84gに留まる。
リップ、というかマガジン最上部の「BB弾押さえパーツ」の形状と仕組みが独特で、バネでピコピコ動く半屋根状のフタでBB弾をホールドしているような形状になっている。このフタを不用意に押してしまうとマガジン内のBB弾がバネの力で全部飛び出してしまうので取り扱いに注意が必要だ。

また、マガジンからチェンバーまでが「コネクションパイプ」でつながっており、その内部にはBB弾が8〜9発「常に待機している状態」になる。またマガジンを抜くとコネクションパイプに入りきらなかった1発がポロッと落ちてくる事がある。

銃を逆さにしたり銃口を真上や真下に向けてコッキングしてみたが、筆者が試した限りではマガジンを挿して(下からバネで押されて)いない状態ではBB弾が発射される事はなかった。しかし万が一!という場合もあるので、弾が入っているorいない、コッキングしているorしていないに関わらず「トリガーを引く際の銃口の向き」には十分注意しよう。

またこの銃を長期間使用しない場合などは、しまう前にバイオBB弾ではなく(長期間放置しても劣化しない)プラ弾を込めたマガジンを挿してから10発ほど撃って、コネクションパイプ内のバイオ弾を抜いておく作業が必要だろう。

スペック


サイドビュー左

全長 220mm
重量 399g (実測値)
装弾数 25発
価格 3,500円(税別)
発売日 1990年11月1日
1991年6月3日 (ステンレスモデル)
1994年12月4日 (ホップ付き)
発射方式 スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載
初速 最高:57.1m/s
平均:56.10m/s
最低:55.4m/s
ジュール:0.315J

※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温20度、湿度36%、ACETECH AC5000にて測定。

対象年齢10歳以上用モデルへのリンクです。


2021/03/12

■関連リンク

東京マルイ エアーハンドガンシリーズ一覧 東京マルイ エアーハンドガンシリーズ一覧

東京マルイ ガスガン コトルガバメント マークIV シリーズ'70 東京マルイ ガスガン コトルガバメント マークIV シリーズ'70