東京マルイ M8000クーガーG【ハイグレード/ホップアップ】

東京マルイ M8000クーガーG【ハイグレード/ホップアップ】

レポート:石井 健夫

イタリア/ベレッタ社製オートマチック拳銃の特徴として「スライドの上部が大きく開いておりバレルの大半が露出しているデザイン」がある。ひと目見て「ベレッタだな!」と認識させるトレードマーク効果ももちろんだが、連射で加熱したバレルやチェンバーを効率よく冷やす効果、スライドの軽量化により作動を軽快かつ俊敏にできる効果、そしてもちろん銃そのものの軽量化にも寄与するなど、様々なメリットがある。

しかし一方、強度に関しては他社の拳銃より劣ってしまうのも事実で、米軍に採用されたベレッタM92Fでスライドの破断事故が複数回起こり、射手の怪我を防ぐために改修され「M92FS」にUPグレードされたのはよく知られた例だ。またM92で採用されている可動式ロッキング・ブロック方式で撃ち出せる弾薬の威力には限界があり、標準的な9mmパラベラム弾モデル「M92」の他には.40S&W弾モデル「M96」までがせいぜいとされ、戦闘の状況もしくは戦う相手によっては選択肢に加えたい大口径弾薬「.45ACP」や、1990年台半ば頃に登場した対・抗弾ベスト用弾薬「.357SIG」に対応するための新機軸・新方式がベレッタ・オートにも必要なのでは?という機運が高まった。

サイドビュー左

そこで登場したのがM8000クーガーである。バレルが回転しながら後退するロティティング・バレル方式を採用し、スライド上部の大きなカットも廃止。その結果として耐久性が大幅に増し、9mm弾モデル「M8000」と.40S&W 弾モデル「M8040」の他、M92系では実現不可能だった.45ACP弾モデル「M8045」と.357SIG 弾モデル「M8357」をバリエーションに加えることに成功した。またM1911A1とほぼ同サイズ、いわゆる5インチ銃身でやや長めだったM92FSから、SIG P226やグロック17といった次世代型オートとほぼ同じ=4インチちょっとの銃身長に「ややコンパクト化」することにも成功した。

2005年にはポリマーフレームを採用し更なる軽量化を実現したジウジアーロ・デザインのファッショナブルな後継モデル「Px4」が登場し、ほぼ同一なメカニズムを持つM8000クーガー・シリーズのベレッタ社での製造は終了したが、現在もアメリカのストーガー社がスライド上側面を削いで軽量化したモデルをトルコでライセンス生産し販売を継続、「ターキー・クーガー」としてファンに愛されている。

サイドビュー右
東京マルイがコッキングエアーハンドガンとしてモデルアップしたM8000は「クーガーG」である。じつはベレッタ社のオートマチックのモデルNo.末尾のアルファベットには共通の意味があり、M92FやクーガーFに付く「F」は、「ダブルアクション&シングルアクションでデコッキングレバーを兼ねたマニュアルセフティレバーを装備」という意味になる。因みにM92DやクーガーDの場合の「D」はダブルアクションオンリーである事を示す。ではクーガーGの「G」の意味は何か? これは「デコッキングレバーの機能だけがある」という意味になる。従ってスライド上のレバーはセフティ位置で止まる事がないため、「セフティOFF=発射可能状態」である事を示す赤い丸点もないのが特徴だ。

「F」系セフティはON=掛かっている状態だとトリガーがスカスカの空引きになるのだが、イザ撃つ!となった際に外し忘れるケースが頻発し、「実戦では危ないのではないか?」という意見も多い。「SIG P220系と同等=デコッキングレバーのみ」である「G系セフティ」の方が実用的だし総合的に見て安全なのでは?というのがプロ筋の共通認識らしい。

パッケージ
M8000クーガーGの硬質でソリッドな個性が美事に表現されたパッケージの箱絵。背景に見えるバッジには「SECURITY GUARD(=セキュリティ・ガード)」とあり、これは文字通り「警備員」の意味だろう。欧米では公的機関で一定の教育・訓練を経れば一般の警備員でも銃器の携帯及び使用の免許を受ける事ができるケースが多い。比較的軽量コンパクトなクーガーGならそんな警備員の拳銃としても最適、というイメージだろうか。パッケージは横型で、サイズはシリーズ共通の「横290 x 縦180 x 厚さ50 mm」。

パッケージ内容
こちらもシリーズおなじみの内箱。玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイできるようにデザインされている。銃本体には赤い保護キャップ。グリップにはHOP-UP搭載モデルである事を示す帯。フルサイズマガジンもクーガーGの場合特に立派! 化粧箱入りBB弾(0.25g)150発と取扱説明書も付く。

コッキングエアーハンドガン
このクーガーあたりになると東京マルイ/コッキングエアーハンドガンシリーズは完成され洗練され尽くした感がある。
スライドはもちろん一体成型。ほぼフルサイズのマガジン、そしてダブル&シングルアクションのトリガー&ハンマー連動メカニズム。フルストロークするスライド。そしてロティティン・バレル方式のショートリコイルまでもが再現されているのだ。まさしくコッキングエアーガンとしての工夫と贅沢を尽くしたシリーズ最新世代モデルの凄みを存分に味わえるモデルである。

但し諸事情により「ベレッタ」の社名表記は一切が外され、マークや刻印は全て東京マルイのオリジナル・デザイン及びテキストになっている…というのもまた、世代の新しい商品ならでは。グリップのトレードマークも東京マルイ・オリジナルの「三つの剣と盾」 に改められている。

マズル
上部が閉じ、マズルもスライド前面とほぼ同じ位置にスッキリ収まり、一見「ベレッタらしくない」のがM8000クーガーならではの特徴で、そういう意味では極めてリアルなマズルビューだ。ライフリングのモールドが実に綺麗でそれを見せ付けるかのように真鍮製インナーバレルが奥まっているのもどこか誇らしげである。またリコイルスプリングガイドの頭だけがシルバーに輝いている、というのもお洒落な演出だ。

ロティティン(回転)バレル
何と言ってもこのガンのハイライトはショートリコイルしながらバレルが約60度回転しながらロックが解ける、ロティティン(回転)バレル方式のメカニズム。この動きをロープライス商品であるコッキングエアーハンドガンで再現した東京マルイの偉業には脱帽するしかない。この角度でスライドを引きながら、バレルが回転する様子を何十回も眺めてしまう(笑)!

そして近代ベレッタの特徴といえば分厚い手袋をした状態でも扱えるよう大型化された指掛けアゴ付きのトリガーガードなのだが、M92FS程には大袈裟じゃないところがクーガーの格好良さ。周辺に見えるプルーフマークの小さな刻印も細かく再現されていてリアルだ。また右側のグリップパネルから突き出して見える外装式トリガーバーがトリガーに連動して前後に動く様子も実銃同様だ。

コッキング
コッキング前半は弱めのリコイルスプリングのテンションだけで約12mm空走。この間にショートリコイルとロティティン・バレルの作動が見られる。そしてこれ以降はピストンスプリングの圧縮が始まりグッと重くなリ、最終的にはほぼフルストローク=42mmを引き切らなければならない。しかし一体成型スライドの剛性は充分で捩(よじ)れ感や軋(きし)みも一切なく、また左右のダミー・デコッキング・レバーも指掛け代わりになるので、リアルストローク二段引きながら意外に素早い連射もし易いので、サバイバルゲームでの実用性としては「普通」だろうか。

スライドトップ
じつはM8000クーガーGのトリガープルは今回レポートしたコッキングエアーハンドガン中で最も軽く、LYMANトリガープルゲージでの実測値は「560〜575g」と、もはや精密射撃用ピストル級! このキレの良さには誰もが驚くに違いない。そしてトリガーとハンマーはシングルアクションとダブルアクションの両方に連動し、コッキングせずともパチン!パチン!と空撃ちして楽しむ事が出来る。シングルアクションではハンマーを起こすとトリガー位置が後退するのも実銃同様リアルな動きだ。

また「クーガーG」ではデコッキング機能のみを備えるスライド上のレバーはモールド再現によるダミー。安全装置としての機能はスライドストップ・レバーにあり、ハンマーが起きた状態でのみ上方に動かすと“カチッ!”と掛かる。

サイトピクチャー
フロントサイト、リアサイトとも小振りだが角がクッキリと立っていて狙い易い。BB弾を発射した際の狙点と着弾点もほぼ一致しており、0.25gBB弾ならば正照準で25〜30m先のA3用紙にほぼ命中。0.20gBB弾ではHOPがより強く掛かり、BB 弾がスゥーッと浮き上がって遠くまで飛ぶ様子を視認できるだろう。実銃ではホワイトの3ダットが入るのだがこれは省略。白ペイントもしくはシールで再現してみるのも面白いだろう。ハンマーが起きた状態で見えるファイヤリングピン・ヘッドも再現されている。

マガジン
グリップフレームやマガジンキャッチ等、M92FSと似てはいるものの形状やサイズがさらに煮詰められ、人間工学的に更に進化した感のあるクーガーのデザインは、このコッキングエアーハンドガンでも存分に実感できる。

マガジンキャッチを押すとツルリと本体から滑り出てくるマガジンは最上部の前後幅が僅かに絞られているものの、NATO標準規格アウターケース採用の実物とほぼ同じ大きさでマガジンポーチ等も実銃用がそのまま使える。また内容こそ「MADE IN JAPAN」だが位置といい字体といい刻印の雰囲気も実物ソックリだ。ベースプレートが別パーツなのもリアルさに一役買っている。装弾数は「21発」。内部ウェイト入りで85gの程よい重量感はハイグレードHOP-UPシリーズならではのステイタス。

スペック


サイドビュー左

全長 180mm
重量 405g (実測値)
装弾数 21発
価格 3,500円(税別)
発売日 1990年11月1日
1991年6月3日 (ステンレスモデル)
1994年12月4日 (ホップ付き)
発射方式 スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載
初速 最高:63.2m/s
平均:61.46m/s
最低:60.6m/s
ジュール:0.378J

※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温20度、湿度36%、ACETECH AC5000にて測定。



2021/03/27

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