
東京マルイ ガスガン 千束の銃
「そんな馬鹿な話があるかっ!!」
怒号が、薄暗い武器屋の店内に響き渡った。
声の主は、この店の頑固な店主。黒々とした短髪、もみあげと繋がった顎髭、そしてサングラス――見た目からしてすでに威圧感たっぷりだ。
そのスモークレンズの奥で、俺を睨みつけているのが分かる。
店内には俺とこのオヤジしかいない。怒鳴り声を浴びているのは、当然ながら俺ひとりだけだ。
「この銃を、小娘みたいなエージェントが使いこなせるわけがない!」
興奮気味に彼は続ける。
「この銃はな、アメリカ陸軍制式のM1911A1――コルトガバメントを、デトニクス社が極限までカスタムした.45口径のオートマチックがベースなんだ。そんな代物、並のエージェントが撃って当たるようなもんじゃあねぇ!」
確かにその通りだ。.45口径といえば、アメリカで150年以上も信仰されている軍用弾。
極限まで小型化されたボディでこれを発射するとなれば、銃を制御するのは容易じゃない。近距離戦――いわゆるCQBで使うには、よほどの腕がいる。
カウンターの上には、鮮やかな赤い内張りが目を引く箱に収められた、その“問題の銃”が置かれていた。
どうやらオヤジが独自のルートで手に入れた、超が付くほどレアな新作カスタムモデルらしい。
許可を得て、俺は銃を手に取った。
まず弾倉を抜いて、安全を確認。スライドを2回引いて薬室をチェック――弾は入っていない。
刻印の無いスライドを引いてホールドオープン。
ジャキリというメカニカルな作動音が、耳に心地良く響いた。その瞬間、眠っていた戦闘本能が目を覚ます。
小柄な銃に不釣り合いなほど大型のコンペンセイターが、銃口にずっしりと存在感を放っている。
「でもオヤジ、その反動を抑えるためのコンペンセイターだろ?」
俺の問いに、オヤジはすぐさま応じた。
「たしかにそいつには、反動を抑制するためのガスポートが上部に備わってる。だがな、リコイルを軽減する効果は微々たるもんだ。そいつの本当の目的は別にある」
「本当の目的?」
「先端にあるストライクプレートだよ。それで銃口を敵に押し付けて撃てるって寸法さ」
「ああ、このトゲトゲした部分か」
銃を構造から見れば、オートマチックピストルは銃口側から圧がかかるとスライドと銃身が下がり、ハンマーが落ちなくなる。それを防ぐためのデバイス――接近戦用というわけだ。
リアサイトにも目を向けると、デトニクスのそれとは異なる、独特のタクティカルタイプが搭載されている。
「へえ、このリアサイト、面白い形してるな」
「ああ、あれはエージェントの研究機関の要望らしい。速射時に視野が広がって、エイムスピードが向上するとか言ってたな…」
リアサイトの“コの字”にフロントサイトを合わせると、フロントのブレードが浮き上がるように見える。不思議なサイトピクチャーだ。
スライド後部はスラントカット。短いハンマースパー、シルバーのエジェクションポート――このあたりは、ベースであるデトニクス.45 コンバットマスターの意匠が色濃く残っている。
リアサイト後部の傾斜には理由がある。ドロー時に親指を滑らせてハンマーを起こすためだ。ハンマーダウンの状態からでも素早く射撃可能という設計だろう。
短めのビーバーテイルに続くグリップセーフティは、デトニクス同様に固定されており、レバーを握り込む必要はない。
トリガーはシングルアクションで、さらに軽めにチューンされていた。ただし、サムセーフティは相変わらずハンマーを起こさないと機能しない。この仕様は1911譲りの伝統だ。
「今どき1911なんて古いんじゃない? ポリマーフレームのGLOCKとかSIGとか、あるだろ?」
やや遠慮がちに尋ねてみた。オヤジの機嫌を損ねたくはなかった。
「なんでもな、そのエージェントの師匠も.45口径の信奉者らしい。弾はレスリーサルのゴム弾や、フランジブルを使うって話だ」
どうやら、師弟の絆は合理性よりも重視されるらしい。
銃の底部、シングルカラムマガジンには金属製の大型マグバンパーが装着され、装弾数も増加していた。
握ってみると、グリップは短めながらホールド感は良好。デトニクスよりもむしろ扱いやすい。マガジンは1911やデトニクスとも互換性があるという。
ちなみに、フランジブル弾というのは、命中すると粉々に砕け、周囲への被害を最小限に抑える特殊弾だ。
グリップは木目調の樹脂製ワンピースタイプに見えるが、実際には2ピース構造。スプリングハウジングを覆う形で後方へ張り出し、サムレストまで備える大柄な造形だ。
「手の小さいエージェントには扱いにくそうだな…」
そう思いながら握ってみたが、意外にも収まりがよく、銃の挙動も抑えやすい。
「オヤジ、悪くないな。この銃。地下のレンジで試射させてもらうよ」
俺は.45口径弾の箱を手に取り、階段を下って地下へ向かった。
取扱説明書をざっと読み終え、マガジンに弾とガスを装填。銃へとセットし、スライドを引いて初弾を薬室に送る。
スライドの動きは滑らかで、手に伝わるメカニカルな感触が心地よい。
サムセーフティを親指でパチリと上げ、ターゲットのセンターをじっと狙う。
アイアンサイトには多少の慣れが必要そうだが、初撃ちでも狙いにくさはない。
「ふむ、なるほど…」
ツーハンドで構えると、サムレスト付きのグリップが見事にフィットする。
セーフティを解除し、センターサークルへと、シングルショット。そして間髪入れずにダブルタップ。
.45口径とは思えないほどシャープなスライド作動、リコイルも鋭く、しかし制御はしやすい。
撃ち味は明らかに、デトニクスとは別物だった。
――気づけば、俺は無意識のうちに口元を緩めていた。
「どうだい?」
電子イヤマフ越しに、背後からオヤジの声が届く。
「……ああ、いいね。公務で使えるかはともかく、一丁もらってくよ」
メンテナンス・通常分解
ホップアップ調整やメンテナンスの際のストライクプレート着脱はトリガーガード前のスイッチで行う。この白いドットマークは蓄光塗料が使われている。
ストライクプレートを前方へ取り外す。ベース部にはダイキャストパーツが使用されており、フロントに重心が掛かるようになっていて、手にしたときのずっしり感はここからきている。重量増による射撃安定性にも一役買っているはずだ。
デトニクス同様にスライドストップピンを抜いて、スライドを取り外せば可変ホップアップの調節ダイヤルにアクセスできる。
パッケージ
パッケージデザイン。スリーブ入りの箱。スリーブはかなり硬くハマっていて、取り出すのが大変だった。
パッケージ裏にはアニメ『リコリス・リコイル』の設定が記載されている。
スペック & 初速
全長 | 210mm |
重量 | 784g (空マガジン含む) |
銃身長 | 74mm(インナーバレル長) |
装弾数 | 22発 |
価格 | 29,800円(税別) |
発売日 | 2024年3月14日 |
動力源 | リキッドチャージ式ガス ※射撃テストではHFC134aを使用 |
初速 | 最高:60.40m/s 平均:59.95m/s 最低:59.43m/s ジュール:0.359J ※東京マルイベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップ、室内5発での測定、気温23.7度、湿度28%、XCORTECH X3200 Mk3にて測定。 |
パーツリスト.PDF |
■関連リンク
東京マルイ ガスガン AM .45 バージョン・レン “ヴォーパル・バニー”