光線銃『B2i』とシューティングスポーツの将来

光線銃『B2i』とシューティングスポーツの将来

光線銃の新製品が来年春に発売されるとのことで、試作機を取材させていただいた。
今回発売される光線銃は日本の企業、ホットスプリングスが技術開発し、特許を持つ、同社の独自規格だ。
赤外線を使用し、環境にもよるが屋外で夜間最大射程250mほど、晴天下でも120mの有効射程を誇る。
これによって、サバゲーやシューティングが近い将来どのように展開していくのかを探っていこう。

B2iという光線銃

光線銃というと「子供のおもちゃ」という印象を持たれる方も多いだろう。ところが、静岡県静岡市に拠点を置くホットスプリングス社の開発した『B2i』はなんと、屋外で最大250mの射程があるという。この距離であれば実銃のアサルトライフルの交戦距離レベルなので、よりリアルなサバイバルゲームが楽しめるばかりでなく、自衛隊で使用される交戦訓練機器"バトラーシステム"の民生版とも言うべき性能を有していると言えるだろう。

ホットスプリングスの永井代表
ホットスプリングスの永井代表。元自衛官で、その経験を活かして起業した。

光線銃『B2i』は、最初にスタンダードと、その後マイクロと呼ばれる2モデルが発売される。
従来の光線銃が銃本体を模していたのに対し、B2iはエアソフトガンに装着できるオプションパーツであることが特徴だ。これにより自分が普段愛用しているエアガンにポン付けし、光線銃として使えるようになる。
名前の由来はBはBullet、2はto、iはインフラレッド(英語で赤外線の意)で、BB弾を赤外線に置き換えるという意味が込められているそう。

B2iスタンダードモデル
B2iスタンダードモデル。大きめのサプレッサーほどのサイズで、全長は約20cm、重量は約200g。
外部配線と、内蔵バッテリーによる2WAYで駆動する。内蔵バッテリーは1,300mA/h、撃ちっぱなしで約3時間稼働、約5万発の射撃を予定している。

M14逆ネジ仕様
M14逆ネジ仕様で多くのエアソフトガンに簡単に装着できる。

B2iはエアソフトガンの空撃ちによる"空気圧を検知"してスイッチを動かし、先端のレンズから赤外線を照射する。
屋外での有効射程は夜間で約250m、日光が赤外線に影響を与えやすいピーカンでも120mの射程があるそう。
命中精度は100mで約1mに設定されおり、この範囲に敵のレシーバーの受光センサーがあればヒットの判定となる。なお、受光センサーがほぼ点なので、照射範囲を絞ると全く当たらなくなるとのことで、この設定しているそう。

空気圧を検知する機能は現状で毎分600発までとなっており、フルオートでは本来の発射速度が活かせず、ハイサイクル電動ガンでは回転が速すぎてスイッチが押されっぱなしになるので自動的に一定間隔の射撃になってしまうそう。どちらかというとセミオート戦向きのシステムと言える。

マイクロモデル
マイクロモデル。全長約13cm、重量はわずか12g。Bluetoothユニットが内蔵された専用ケースに収まる。

発射ユニット
驚くべきことに、このシステム手帳のボールペンみたいなサイズにバッテリーやレンズ、発射ユニットが収まっている。

インナーバレルに差し込んで使用
このマイクロはハンドガンのマズルからインナーバレルに差し込んで使用できる。長さは約13cmなので、使用できるハンドガンには制限があるが、極力外観を崩さず利用できる。
マイクロでは10分の充電で100発が発射可能。有効射程は約50m、晴天下の屋外では約20mを目指しているそうだ。

小さくてもしっかり先端にレンズ
小さくてもしっかり先端にレンズがあり、射程こそ短いが、精度はスタンダードに準じるものになっているそう。

レシーバー
レシーバーはヘッドバンドで頭部に装着する。大きめのメインレシーバーにオプションで3個のサブレシーバーが接続される。メインレシーバーはBluetooth通信で専用アプリと通信する仕組み。もちろんこれらは電波法に適合すべく技適を取得している。

レシーバーヘッドバンドを装着
レシーバーヘッドバンドを装着した状態。受光センサーに赤外線が当たると、ビビビーっとヒットを知らせるビープ音が鳴り、即時に誰に撃たれたか、などの被弾情報がアプリを通じてネット上のサーバーへ送信される。

インターネットと専用アプリで広がる世界

永井さんと初めてお会いした4年前はスタンドアロンの大変高価な機材だったが、今回のB2iはインターネット上のサーバーと、ユーザーが個々にインストールする無料の専用アプリによって通信を行う。


開発中の専用アプリ。まだ仮の画面デザインだが、赤、青、黄色、緑の4チームに振り分けでき、1チームは最大で255名が登録できるので、1000人規模のバトルが可能となる。

このアプリの入ったスマホはゲーム中に携帯する必要があるが、GPSによって射撃地点の位置情報も取得・記録でき、誰にどこから撃たれたか、その場所・時間などが全てアプリを通じてインターネット経由でサーバーに蓄積される。


専用アプリではユーザーログインを行い、ゲーム作成、チーム編成、命中・被弾情報などを確認できる。

ゲームルールとしては、弾数と耐久力がプレーヤーごとに設定されており、被弾するとダメージを受け、耐久力が減っていく。弾を撃ち尽くすか、耐久力が0以下になった時点で発射ができなくなり、ゲーム終了となる。またフレンドリーファイアの設定は有り無しを選べる。

被弾によるダメージをアプリで設定変更できるので、ウエポンによって、あるいはプレーヤーのスキルレベルでダメージ設定を変更するなどのゲームバランス調整も可能だ。

価格と発売時期

B2iの価格は
スタンダード本体:6,000円(税別) 2021年4月発売
マイクロ本体:価格未定 2021年発売予定
メインレシーバー:4,000円(税別) 2021年4月発売
サブレシーバー3個セット:3,000円(税別) 2021年4月発売
全国のトイガンショップで販売される予定とのこと。

光線銃『B2i』のメリット

光線銃『B2i』のメリットとは?

光線銃のメリットはBB弾を撃つことがないので、ロケーションフリーであるという事。
BB弾が散乱することもなく、フィールド施設が穴だらけになることもない。性別や年齢の制限なく、当たっても痛くないので、従来のサバゲーに躊躇していたユーザー層も参加しやすい環境を作れるだろう。

次にゾンビ問題をなくすことができる。着弾したことは紛れもない事実として記録され、サーバに蓄積される。

そして蓄積されたデータによってどのプレーヤーが上手いのかといった情報を可視化できるので、ランキングや、ダメージバランス調整などで強いプレーヤーがひたすら初心者狩りをするといった事態も避けられる。

装置がポン付けタイプなので、自分の持っているエアガンにそのまま装着でき、エアガンの反動も活かせ、専用機より導入コストが抑えられる。逆に専用設計ではないので、弾数がシンクロしないというデメリットもある。

またスポーツ保険が従来のサバゲーに比べておりやすいというメリットもあるそうだ。

B2iの今後の展開として赤外線を360度に照射するハンドグレネードや、耐久力回復用のメディックキット、AT4誘導ミサイルや、傾斜センサーとGPSで判定する迫撃砲といった大型の装置開発なども視野に入れているそうだ。

サイズに関して言うと、スタンダードはバッテリーの持ちは良いが、大きめなのでSMGやハンドガンに装着するとCQB等で邪魔になりそうなサイズだ。一方、マイクロは小さいものの、使用できるハンドガンを選び、発射数も少ない。今後是非、2つの中間サイズ、コンパクトトレーサーくらいの大きさの"コンパクト"モデルが発売されれば、ハンドガンにも長物にも両方使えて便利だと思う。

光線銃の問題点

一方で光線銃には問題点もある。
弾の速さが光速であり、どんな距離でも撃った瞬間に直線的に着弾するため、偏差射撃が一切ない戦闘になる。また風による影響、重力による弾の落下などといった弾道特性もなくなる。

赤外線なので葉っぱなどの薄い障害物でも貫通しないし、白い壁や鏡などによる反射、いわゆる光の跳弾とも言うべき現象がある。

太陽光の影響を受けやすい。ただし、赤外線ライトやIRレーザーで受光器を狙っても、B2iの赤外線には専用コードが含まれるので反応しないようになっているそうだ。

リアリティの問題。物理的な弾が飛び交わないことで、緊迫感に欠けるのではという問題もある。
弾が耳元をかすめる、壁にバチバチとヒットする、そして弾が当たることによる痛みはサバゲーの醍醐味でもあるからだ。

センサーが被弾を検知するのでセンサー部を隠して撃つといった不正が起こりやすい。また、プレーヤー密集時に1ショットでまとめてヒットされるといった照射範囲の問題もある。
これは提案だが、センサーが面的に織り込まれた専用ジャケットを開発してはどうだろう。腕や背中にもセンサーが埋め込まれ、さらにバイクジャケットのようなカッコいいデザインと、タクティカルヘルメットの組み合わせは雰囲気をより盛り上げそうだ。

ロケーションの問題。いくらロケーションフリーと言っても、どこでも光線銃サバゲーが出来るというわけではない。銃を持った集団は周囲に威圧感・恐怖感を与えるわけで、どうしてもクローズドエリアによってゲームプレーせざるを得ない。その第一候補はやはり従来のサバゲーフィールドという事になるが、最大250mの射程を活かせる設計のフィールドは極稀だろう。

司令官の指示に従い、山中に潜みながら昼夜を問わずに部隊行動しつつ、敵勢力を排除せよ、なんていうシチュエーションゲームはミリタリーサバゲーマーなら一度は夢見るものだが、それこそ自衛隊の演習場や、北海道の原野、無人島などを貸し切ってのゲームイベントが現実的にどれくらいの頻度で開催可能だろうか。

これまで大手のゲーム会社や玩具メーカーが幾度と光線銃を発売してきた。デバイスだけではなく、専用フィールドを作っての試みもあったが、現時点でなかなか普及しているとは言えない。
これら光線銃の特性や問題点、これままでの経緯を理解したうえで、どう解決するのかは今後の大きな課題となるだろう。

一方で海外ではレーザータグといった光線銃のシステムがある程度確立しており、サバゲフィールドとの共有化も進んでいるそうだ。

eスポーツとXスポーツ

サバゲーやシューティングを含む、シューティングスポーツの将来の方向性のひとつに電子化がある。
いまやeスポーツの拡大は留まるところを知らず、ビデオゲームはプロ競技として、法整備や、世間一般への認知が進みつつある。すでに世界中のゲームイベントや競技会でプロゲーマーが活躍している現実があり、2024年のパリオリンピックではeスポーツがエキシビジョン種目で検討されるほどの盛り上がりを見せている。

VRシューティングスポーツ

eスポーツはモニター画面をみてマウスやキーボードをカチカチするだけではなく、VR(仮想現実)や、MR(拡張現実)といった面も進んでいて、その延長線ではフィジカルとバーチャルが融合していく。
X(クロス)スポーツを推し進める一手段として射撃装置の物理電子デバイス化、いわゆるガンコントローラーは、他の競技に比べてをそれらを融合させやすいのではないだろうか。
そして、今回紹介したB2iはそのプラットフォーム候補のひとつとなりえるだろう。

競技者がフィールドで、あるいはステージ上で、ガンコントローラーを巧みに駆使しながらバトルを展開し、それを世界中の観客がVR空間や拡張現実で観戦する将来は想像に難しくない。

ハイパー道楽ではこれまでVRシューティングに関する記事や、VRシューティングマッチのデモ機をソフト会社と共同開発したことがあるが、こういったサバゲー・シューティング業界と、ゲーム業界とのビジネス連携は今後ますます盛んになると考える。

撮影協力:ホットスプリングス、アキバベース

2020/10/02

 

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