「平成のゼロ戦」はこうして作られた!『主任設計者が明かすF-2戦闘機開発』

「平成のゼロ戦」はこうして作られた!

『主任設計者が明かすF-2戦闘機開発─日本の新技術による改造開発』

神田國一著(FS-X設計チーム・リーダー)
四六判260ページ 定価1600円+税 並木書房

梗概

防衛装備品初の日米共同開発で作られたF‐2戦闘機。外形は米空軍のF‐16戦闘機に似ているが、機体構造や材料、ソフトウエアの大半が日本主導で開発されている。米国側の全面的な情報開示がないなか、設計チーム・リーダーとして多くの技術者をまとめあげ、数々の難題をクリアしてプロジェクトを成功に導いた主任設計者の貴重な記録。2030年代に退役を迎えるF‐2の後継機問題が注目されるなか、F‐2で培った技術開発力を次代に継承する意義を熱く語る!

著者の言葉

F‐2の次の戦闘機、F‐3を開発する際に大事なことは、次期戦闘機開発に通用する「新技術を推定する」こと、そして自分たちがこれをXF‐3に織り込むことができるように「新技術を自家薬籠中のものにする」ことです。(中略)このような努力を積み上げていかないと、継承するべき技術が雲散霧消してしまい、継承できなくなると思われます。FS‐X開発を通して、チーム・リーダーとしての私が常に念頭に置いていたのは「F‐2の開発技術力をどうやって次の戦闘機開発に継承していくか」ということでした。この開発技術力の継承こそ、あとに続く技術者たちに託しておきたいことです。

内容紹介

2030年代に退役を迎える航空自衛隊のF−2戦闘機の後継機をめぐり、①国産②国際共同開発③既存機の輸入が検討されています。最近の報道によれば、F−35を計100機購入し、現在行なっている「国内組み立て」から撤退する案が浮上しているとあります。
そうなれば国内の戦闘機技術はさらに失われてしまいます。F−2の後継機はぜひとも国産か、日本主導による共同開発で進んでほしいものです。
本書は、開発当初からFS-X(F-2)の設計チーム・リーダーを務めた著者が、後世の技術者のために書き残したものです。生前に出版を考えていましたが、諸般の事情で刊行に至りませんでした。著者が亡くなって5年を経過したいま、ご遺族と編集委員の方々の尽力により、ようやく形にすることができました。
ここにはF−2戦闘機がどのような経緯をへて開発され、完成に至ったか、その苦労や喜びが、技術者の視点で生き生きと語られています。
F−2は、米空軍のF−16戦闘機をベースに改造開発されましたが、日米共同開発と言っても、実際は情報がすべて米側から開示されたわけではありませんでした。同盟国であっても、相手から得る物がない限り、すべての手の内を明かさないのが共同開発の実際です。
しかし、日本には炭素系複合材やCCV技術などの先行研究があったおかげで、日本独自の仕様を満たす戦闘機を完成させることができました。とくに炭素系複合材の分野は日本に一日の長があり、米航空機メーカーが欲しい技術であったことから、日本は共同開発を主導することができました。
もし次期戦闘機が日米共同開発に決まったら、実際にどのようなことが起こるのか、本書は、その答えを与えてくれる貴重な本です。

著者略歴

神田國一(かんだ・くにいち)略歴

1938年生まれ、群馬県出身。1962年東京大学工学部航空学科卒業、同年新三菱重工(現・三菱重工)入社、名古屋航空機製作所に勤務。MU-2、XT-2/F-1、CCV研究機などの開発に従事。1990年FSET(F-2設計チーム)チーム・リーダー、1992年技師長・FS-Xプロジェクト・マネージャー、1997年三菱重工顧問。2013年歿、享年75。

 


主任設計者が明かすF-2戦闘機開発─日本の新技術による改造開発