書籍『米陸軍レンジャー─パナマからアフガン戦争』 発売

米陸軍のなかで唯一、部隊名に「レンジャー」を冠した第75レンジャー連隊──その起源は古く、植民地時代の1750年代までさかのぼる。第2次大戦ではレンジャー大隊として日本軍と戦い、戦後は解隊と復活を繰り返しながらも、軽歩兵部隊として数々の武功を立てる。1986年に第75歩兵連隊から第75レンジャー連隊に改称され、レンジャーの功名を継ぐ精鋭部隊として復活した。アフガニスタンやイラクの戦いではデルタフォースやシールズとともに特殊作戦に従事し、高い戦闘能力を発揮。今も進化を続けるレンジャー部隊の実像を多数の写真とイラストをもとに初公開する!

『米陸軍レンジャー─パナマからアフガン戦争』
L・ネヴィル著
床井雅美監訳
茂木作太郎訳
四六判184ページ(オールカラー)
定価1800円+税込


米陸軍レンジャー─パナマからアフガン戦争

 

レンジャー」は、厳しい訓練課程を修了した者だけが手にする称号で、これは米陸軍だけでなく自衛隊でも同様です。そんな名誉ある「レンジャー」を部隊名に冠した米陸軍唯一の部隊が「第75レンジャー連隊」です。その起源は古く、植民地時代のフレンチ・インディアン戦争で活躍した「ロジャーズ・レンジャー」にまでさかのぼります。
現代のレンジャー部隊の先駆けとなったアメリカ第1レンジャー大隊は、真珠湾が攻撃された6カ月後の1942年6月にイギリス軍の特殊部隊をモデルに誕生しました。太平洋戦線では、1945年1月に史上最大規模の捕虜救出作戦を実施し、500人以上の捕虜を救出、日本軍に多大な損害を与えました。戦後「レンジャー訓練学校」は開設されますが、特殊部隊の必要性が薄れレンジャー部隊は解隊されます。そして、朝鮮戦争で復活し、戦後に再び解隊され、ベトナム戦争で復活して現在に至っています
1986年4月に第75歩兵連隊は第75レンジャー連隊と改称され、第2次世界大戦と朝鮮戦争で活躍したレンジャー部隊の血筋を引く精鋭部隊として正式に発足しました。
その後もエリート軽歩兵部隊として真っ先に戦場に送られ、数々の武功を立てました。まさに陸軍版「海兵隊」という位置づけでしょうか。
イラクやアフガニスタンでの対テロ戦争では、陸軍デルタフォースや海軍シールズとともに特殊作戦に従事し、その戦闘能力は高く評価され、統合特殊作戦コマンドに欠かせない部隊として、いまも重要な役割を果たしています。また、女性にも門戸を開き、女性隊員で構成された文化支援チーム(CST)を新設し、作戦地域の女性住民と交流して、有益な情報を得ています。
これまでほとんど知られていなかった第75レンジャー連隊の実像を、現代の特殊部隊に詳しい著者と銃器専門家の監訳者によって明らかにされます。

 

目 次

はじめに
第1章 レンジャー連隊の訓練と組織
第2章 ジャスト・コーズ作戦(パナマ進攻)
第3章 砂漠の嵐作戦(第1次湾岸戦争)
第4章 ゴシック・サーペント作戦(ブラックホーク・ダウン)
第5章 不朽の自由作戦(アフガニスタン)
第6章 イラクの自由作戦
第7章 進化する第75レンジャー連隊
第8章 レンジャーの武器
監訳者のことば

監訳者のことば(一部)

本書『米陸軍レンジャー』(US Army Rangers 1989-2015)は、『M16ライフル』『AK-47ライフ』に続いて、私が監訳を担当させていただいた、ミリタリー研究の分野では定評のあるオスプレイ社のシリーズの1つである。
著者のリー・ネヴィル氏は同シリーズで数多くの著作があり、兵器についてはもちろん、特殊作戦部隊の組織や運用、その実像について精通している軍事ジャーナリストである。
私は「レンジャー」部隊といえば、挺進行動によって敵中深く潜入し、破壊活動や特定目標の襲撃、あるいは人質救出などの特別任務を、その卓越した能力と精神力で遂行する「戦闘の鉄人」といったイメージを漠然と抱いていた。
そもそも「レンジャー(ranger)」の語源は「徘徊者」という意味で、それが転じてアメリカ西部開拓時代に辺境を踏破、パトロールした「テキサス・レンジャー」のように固有名詞化したものだという。
さらに第2次世界大戦では、アメリカ陸軍が特別に訓練された兵士たちで編成された部隊をもって特殊任務や遊撃作戦を数多く実施し、彼らを「レンジャー」と呼び、イギリス軍の「コマンドゥ」と双璧をなす特殊部隊を表す代名詞として広く知られるようになった。
本書は、冒頭でアメリカ陸軍レンジャー部隊の起源から第2次世界大戦で果たした任務と戦歴を紹介している。それによれば、かつてレンジャーの役割が、戦争遂行という大きな歴史の中では重要ながらもそのごく一部であり、きわめて限定的なものであったことがわかる。
ところが1980年代以降、このポジションは大きく変化していく。本書は、1986年のパナマ進攻「ジャスト・コーズ作戦」から、ソマリア、アフガニスタン、イラクと続く作戦・行動を時系列で詳述しながら、レンジャーの任務が主作戦を有利に運ぶための単なる「尖兵部隊」以上の要求を課せられていく過程とその背景を解き明かしている。
2001年の9.11テロ攻撃以降、第75レンジャー連隊は同じ陸軍のデルタ・フォース、海軍のシールズ・チーム、空軍の特殊戦術飛行隊などとともに統合特殊作戦コマンドを構成し、いまや対テロ戦争に挑む主力の1つに変貌したのである。
銃器や小型火器の研究を専門としている私は、軍隊の運用や戦史に関しては熟知しているとは言いがたいが、本書にはレンジャーが装備している武器についての記述も多く、それがまた、描かれている戦闘の実相をリアルに再現しており、その内容の正確さを期すのが監訳を引き受けた所以でもある。
読み進めるうちに、これまで私が実物を手にしたり、試射したこともある小銃や機関銃も登場し、レンジャーたちが特殊作戦の実際の戦場で、これらの武器をどのように使用し、評価しているのか、新たな知見を教えてくれた。
読者にとっても、知られざる特殊作戦とレンジャーの実像を明らかにするとともに、現在あるいは将来、アメリカが軍事力を行使する事態が起こったときの近未来戦の様相と、そこでどのような作戦の展開、戦術の実行が可能なのか、予測するうえで多くの示唆を与えてくれるに違いない。(床井雅美)

 

著者・監訳・訳者略歴

リー・ネヴィル(Leigh Neville)
アフガニスタンとイラクで活躍した一般部隊と特殊部隊ならびにこれら部隊が使用した武器や車両に関する数多くの書籍を執筆しているオーストラリア人の軍事ジャーナリスト。オスプレイ社からはすでに6冊の本が出版されており、さらに数冊が刊行の予定。戦闘ゲームの開発とテレビ・ドキュメンタリーの制作において数社のコンサルタントを務めている。www.leighneville.com

床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに陸戦兵器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。

茂木作太郎(もぎ・さくたろう)
1970年東京都生まれ、千葉県育ち。17歳で渡米し、サウスカロライナ州立シタデル大学を卒業。海上自衛隊、スターバックスコーヒー、アップルコンピュータ勤務などを経て翻訳者。訳書に『F-14トップガンデイズ』『スペツナズ』『欧州対テロ部隊(近刊)』(並木書房)がある。

 

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