ナチス・ドイツの最終兵器 始祖「メッサーシュミットMe262」

世界初のジェット戦闘機、すなわちジェット戦闘機の始祖とも言える「メッサーシュミットMe262」。大変有名な戦闘機です。

イメージとしては、敗北の気配つよく漂うドイツの空軍が、突然時代に不相応なとんでもない新兵器を出してきた、みたいな印象があります。そっちのほうが面白いというかワクワクするのは間違いありませんが、なかなかそうでもなく。どちらかといえばティーガー戦車のほうが恐るべきブラックホースというか、伝説的脅威であったみたいです。

そうだとしても、決して馬鹿にできる兵器ではありません。1939年、ドイツで初めてジェット機が空を飛びました。そして1942年、試作一号機「メッサーシュミットMe262V1」がジェットエンジンを搭載して初飛行。しかしエンジンの諸問題が原因で、なんとこの初飛行中に2つのエンジンが停止してしまうという事故が発生。なんとか緊急着陸をするも、これはジェット戦闘機が数え切れないほどの問題を抱えていることの証明でもありました。

その後、思案に思案を重ね、失敗を繰り返しながら1943年。試作四号機がついに空軍の首脳たちにお披露目となりました。後に柏葉剣ダイヤモンド付騎士鉄十字章を受賞した、アドルフ・ガーランド少将(当時)は、この試作四号機を評して「天使が後押ししているようだ」と絶賛したそうです。
その後も、たくさんの問題を抱えながら、大戦末期。メッサーシュミットは空を飛びました。利点はなんといっても、あらゆる欠点を払拭してしまうほどの「速さ」。第二次世界大戦当時の空中戦では、相手より時速30km速ければもはやマウントポジションをとったも同様でした。

そこにきて、このメッサーシュミットは当時の航空機よりなんと時速150キロも速かったというから、唖然です。これはただ一言に「異次元」です。当時の飛行機vsメッサーシュミット、歩行者vs車、トカゲvsドラゴン、子猫vsベンガルトラです。それにくわえメッサーシュミットは装備までもが異常なまでに強力でした。まさに「最強」という名を欲しいままに与えられそうな機体……ですが、やはり欠点も多かったのです。

このメッサーシュミット、空高く上がるのさえひどく時間がかかるほどに、低速時の加速は大変スローでした。また機体の重さゆえ速度が落ちるのも正にあっという間であったそうです。たとえばドッグファイト中に旋回行動でもとろうものなら、一気に速度がおちてしまうため、大回りに旋回するしかなかったそうです。

欠点をひっくるめていえば、新技術がゆえに扱いきれないものだったと言えます。桁違いの性能ゆえ操縦は大変に難しく、ナーバス。エンジンに僅かな異物が紛れ込んだだけでオシャカになり、撃墜数より故障して離脱が圧倒的に多いというほどの繊細さ。燃料はガバガバ食うし、さらに滑走路に関しても上述の機関の繊細さゆえ、「コンクリート製の綺麗な滑走路じゃなきゃだめ!」という駄々っ子お嬢様っぷり。

しかし、時代に不相応な技術をつんだ兵器ということもあり、実戦での評価は決して低くはありません。そのキルレシオは実に4対1以上。メッサーシュミット1機で、4機の爆撃機とその護衛戦闘機相手に互角に立ち回れることになります。これを脅威といわず、なんというのやら。
あらゆる点において語り切れないメッサーシュミットのカリスマ性は、今もまだ衰えることを知らないのです。