ノストラダムスの大予言とヒトラー

フランス人医師、ノストラダムス (引用:wikipedia)

16世紀のフランス人医師、ノストラダムスによって書かれた詩集である「諸世紀」には近年、世界の様々な出来事が予言されていると評判になった。日本でも1970年代に後藤勉氏による著書「ノストラダムスの大予言」が大ベストセラーとなった。
そのノストラダムスの大予言を最大限に利用したのは、ナチスドイツだったと言われている。
1939年の冬に、ベルリンの宣伝相官邸でゲッベルスは婦人のマグダからいきなり起こされた。彼女はノストラダムスの予言詩集を手に、或る部分をゲッベルスに指し示した。

英国の政策は七度変わりそして二百九十年間血に染まるだろう
独の支配から自由ではあり得ず
ポーランドは東方の焦点となる(3章57番)

その詩を読んだゲッベルスは、ノストラダムスの大予言をナチスの宣伝に使うと思い至ったと言われている。
彼はスイス人の占星術家であるカール・エルンスト・クラフトを雇い、ノストラダムスの注釈本「サロンの預言者」を1941年初めに完成させ、ドイツ占領下のブラッセルで印刷、出版をした。同解釈本はドイツ語から英語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語に翻訳されてヨーロッパ各国に頒布され、ベストセラーとなったと言う。

西洋占星術: 人体と十二宮の照応関係を示した図 (引用:wikipedia)

一方フランスではナチスを刺激することを恐れて、ナチスに悲観的な未来予測を載せていたノストラダムス注釈書を発禁処分にした。
1942年にベルリンの宣伝省が爆撃で焼失すると、占星術のプロジェクト自体が立ち消えとなり、後にクラフトは強制収容所内で病死した。
当時の占星術師たちは既にヒトラーの運命を占星術で知っていた。また、ナチスはルドルフ・へス副総統のイギリス単独飛行への報復として、1941年6月9日に彼等を徹底的に弾圧した。
ヘスは占星術や神秘的な世界に凝っており、彼の基には大勢の占星術師などが出入りしていたのだ。ヘスのイギリス単独飛行の影には、占星術師たちの強い影響があったと言われている。
文章: 藤原真