東京マルイ M92Fミリタリーモデル 【ハイグレード/ホップアップ】

東京マルイ M92Fミリタリーモデル 【ハイグレード/ホップアップ】

レポート:石井 健夫

1970年代後半、米軍を象徴する軍用拳銃「コルト.45ガバメント」こと「M1911A1」の老朽化により後継米軍制式拳銃のトライアルが開始された。NATO標準弾薬である9×19mmパラベラムを15発以上収納するマガジンを使用しながらも軽量かつ耐久性が高い事。また左右両方の手で操作可能であり、短期間の訓練でも扱い易く、しかも携帯時の安全確保は絶対。

これら厳しい条件を満たし、さらにその後何回も仕切り直されたトライアルに伴う改修も経て1985年、遂に「ベレッタM92F」が米軍制式拳銃「U.S.M-9」として選定された。

性能や品質に関しては対抗馬となったSIG P226の方が上でM92Fは納入価格(の低さ)で勝っただけ、という意見もある一方で、例えば「デコッキングレバーにマニュアルセフティとしての機能を残してある」点や「ストローク(=遊び量)が長めでトリガープルが重い」などがSIG P226に対しての欠点とされている部分なのだが、むしろ軍用拳銃は安全に携帯できる事の方が重要(=撃つ機会など実際には滅多にない)のでM92Fの制式採用はやはり妥当だった…とする考え方もあり、勝者はM92Fか? P226か?  はミリタリーマニアの間で現在でもちょっとした論争になる程である。ともあれ何度かの改修・改良を経つつ2017年までに30万挺以上が米軍に納入され、じつに32年間にわたってM92Fは米軍制式拳銃の大役を担ったのである。

サイドビュー 左
米軍の他フランス軍にも制式採用されたM92Fだが、これら大国の軍隊が採用したという揺るがぬ実績の効果は絶大で世界各国の軍や法執行機関からの注目も一気に集まった。その中でも特にその後のM92Fの運命に大きく影響を及ぼしたと思われる出来事が全米各警察組織による導入だ。

特にLAPD(=ロサンゼルス市警察)の制式採用は、当時ハリウッドで製作された大作アクション映画『リーサル・ウェポン』('87)と『ダイ・ハード』('88)で立て続けに「主役の銃」として使われる事に繋がった。元々が職人の国=イタリアの銃器メーカーであるベレッタ・デザインの流麗なフォルムはじつに画面映えし、さらに15連発のファイヤーパワーを活かした派手な演出も功を奏し、「M92Fは世界一カッコ良い拳銃だ!」と世界中の人々が思い込み、映画やドラマ、そしてゲームでのM92F登場回数は爆発的に伸びたのである。

超人気モデルとなったM92F
こうして押しも押されもせぬ超人気モデルとなったM92Fは東京マルイ/コッキングエアーハンドガンシリーズとしては初期の頃、1990年春に一度ラインナップされている。左右合わせの「モナカ構造」や、細長い「割り箸マガジン」である等、シリーズ初期の「ルガーP08」等に準じていたその仕様やフォルムを21世紀バージョンに刷新し、ハイグレードホップアップとしてリニューアルされたのが今回ご紹介している「M92Fミリタリー」だ。

一体成型スライドの採用
一体成型スライドの搭載でよりリアルになった各部フォルム、ほぼフルサイズのマガジン、そしてダブル&シングルアクションのトリガー&ハンマー連動メカニズムやフルストロークするスライド等、コッキングエアーガンとしては贅を尽くしたシリーズ最新世代である。しかし一方、この銃の発売当時頃から実銃メイカーの版権・意匠を巡っての裁判が各社間で始まった…という社会背景もあり、商品名からは「ベレッタ」の社名が外され、マークや刻印は全て東京マルイのオリジナル・デザイン及びテキストになっている、という特徴もある。

パッケージ
パッケージサイズはシリーズ共通の「横290 x 縦180 x 厚さ50 mm」。ちなみに銃の背後に写っているバッジはU.S.マーシャル(United Marshal Service=合衆国保安官局)徽章である。

内箱レイアウト
玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイできる美しい内箱レイアウト。保護キャップ付きの銃本体。グリップにHOP-UP搭載モデルである事を示す帯。フルサイズマガジンも存在感抜群。箱入りのBB弾(0.25g)150発がと取扱説明書も付く。

マズル
銃身がスライド前面から少し突き出ているデザインが独特な表情を醸し出すマズルフェイス。6条のライフリングがモールド表現によって再現され、奥まった位置には真鍮製インナーバレルが見える。マズルやスライドの角の面取りがじつに綺麗でリアル。職人の国=イタリアで何世紀にもわたって連綿と引き継がれてきたクラフトマンシップさえも彷彿とさせる美事な造形だ。

トリガー
分厚い手袋をした状態でも扱えるよう大型化されたトリガーガードにはプルーフマークの小さな刻印も入っていてリアル。長めのトリガーはカーブの具合や左右エッジの丸みが程よい指当たりで、万人が「引きやすい」と感じるのではないだろうか? 実銃に於いては「ストロークや遊びが大き過ぎる」とか、「ダブルアクションもシングルアクションもやや重いのではないか?」と言われるトリガープルだが、このコッキングエアーハンドガンでは実測値で「724〜756g」と、やはりシリーズ中TOP3に入る軽さとなっている。右側のグリップパネルから突き出して見える外装式トリガーバーが動く様子も実銃同様に観察できる。

ダブルアクション
トリガーとハンマーはシングルアクションとダブルアクションの両方に連動。コッキングせずにパチン!パチン!と空撃ちして楽しむ事が出来る。

ハンマー
ハンマーを起こすとトリガー位置が後退するのも実銃同様のリアルな動き。実銃ではデコッキングレバーを兼ねたセフティはポジションを示す赤い丸ペイントも鮮やかで、思わず動かしたくなる程リアルだがモールド再現によるダミー。実際の安全装置としての機能はスライドストップ・レバーにあり、ハンマーが起きた状態でのみ上方に動かすと“カチッ!”と掛かる。

サイトピクチャー
フロントサイト、リアサイトとも小振りだが角がクッキリと立っていて狙い易い。BB弾を発射した際の狙点と着弾点も一致しており、0.25gBB弾ならば正照準で25〜30m先のA4用紙にほぼ命中する。また0.20gBB弾ではHOPがより強く掛かり、BB 弾がスゥーッと浮き上がって40m近く飛ぶ様子を視認でき、これもじつに気持ち良くて楽しい。なお実銃ではホワイトの2ダットもしくは3ダットが入るのだがこれは省略。気になる人は白いペイントもしくはシールで再現してみるのも面白いだろう。ハンマーが起きた状態で見えるファイヤリングピン・ヘッドも再現されている。

コッキング
コッキングの際、前半は弱いリコイルスプリングの力だけが掛かっている。14mm引いたところでシリンダーピストンの爪に当たる感触が手に伝わり、ここからは重くなる。なお、ショートリコイルは再現されていないのでバレルは後退しない。

スライド
14mmから先はシリンダースプリングの圧縮が始まるのでスライドはグンと重くなり、約40mm=ほぼ実銃のフルストロークまで引いてコッキングが完了。剛性充分な一体成型スライドは捩(よじ)れ感や軋(きし)み感もなく、また左右のダミー・セフティレバーがちょうど指掛けの代わりにもなって引き易いので、コッキングの感触こそ二段引きながらこのM92Fミリタリーは素早い連射がし易い。よってサバイバルゲームでの実用性はシリーズ随一かもしれない。

グリップ
ダブルカラムの15連マガジンを内包するグリップはかなりグラマラスだが握り易い。フレームの前後に刻まれたグルーブラインの美しさも相まったこの流麗なラインこそがM92Fの魅力であり、ファンには堪らないのだ。グリップのトレードマークはベレッタの「スリーアロー(=三本の矢)」ならぬ東京マルイ・オリジナルの「三つの剣と盾」に改められている。マガジンのベースプレートは別パーツなのでじつにリアル。

マガジン
マガジンは最上部の前後幅が僅かに絞られているものの、NATO標準規格のアウターケースを持つ実銃の軍用マガジンとほぼ同じ大きさ。マガジンポーチ等も実銃用がそのまま使える。内容こそ「MADE IN JAPAN」だが、位置といい字体といい刻印の雰囲気も実物ソックリ。装弾数は「22発」で84gの程よい重量があり、マガジンキャッチを押すとツルリと本体から滑り出てくる。

スペック


全長 217mm
重量 389g (実測値)
装弾数 22発
価格 3,500円(税別)
発売日 1997年12月25日
発射方式 スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載
初速 最高:59.3m/s
平均:58.24m/s
最低:57.4m/s
ジュール:0.339J

※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温26度、湿度62%、ACETECH AC5000にて測定。


2020/10/16

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