JJ バトルスポット インドアフィールド監修の裏話

バトルスポット インドアフィールド監修の裏話

今回は千葉県のインドアフィールド、バトルスポット監修の裏話。

アミューズメント施設のご担当者からメールが届いたのは2014年8月。
「屋内アミューズメント施設にて、サバゲーフィールドの運営を考えております。立ち上げに伴い監修していただく事は可能でしょうか?」
おおーっ!! これは面白そうなお仕事。喜んで引き受けることにした。

まずは現地店舗を確認しにいく。
ボーリング、カラオケ、ゲームセンター、ビリヤード、ダーツなどなど、様々な娯楽施設が入った総合レジャー施設「JJ CLUB 100 千葉浜野店」。
現状では野球やサッカーのストラックアウトやバッティングマシン、ゴルフ練習機などが配置されているスポーツコーナー。その一角を潰してサバゲーコーナーにしたいという話だった。



レーザー測距してみるとフィールドとして使用できる範囲はおよそ幅24m、縦14mとかなり面積が小さい。
さてさて、このスペースでどのようなフィールドを作るのか?

話を聞くと運営会社側は全くのサバゲー未経験者で、担当者はとりあえずいくつかサバゲーフィールドを視察したという程度。施工については業者をいれるというが、監修と言ってもただ助言するのではなく、すべてを委ねられている状況。これは責任重大だ。

コンセプトワーク

なにはともあれ、とにかくコンセプトを練る。
担当者からユーザー層を聴くと親子連れや学生などの未成年者も多く、10歳以上からフィールドを利用してもらいたいという。もちろん来店する客層はサバゲー未経験者がほとんどだ。

サバゲーをするために来店しているわけではなく、普通に来店したお客さんにサバゲーをプレーしてもらうということになる。

かといって、ただエアガンを撃ちあうだけの初心者用フィールドというのもつまらない。サバゲー経験者にも楽しんでもらえるようなテクニカルなフィールドでもありたいという少々欲張りなコンセプトで行くことにした。

まずは関係者のイメージ共有を図るべく、手書きのイラストやフォトイメージ資料を作る。

このようなスライドを20枚ほど作成し提示。どういった部材が必要になるかを共有した。

インドアフィールドのメリット・デメリット

設計前にインドアフィールドの長所短所を考えてみた。
インドアはまず環境を常に一定に保てる。天候、気温、時間という自然条件に左右されることなく、設計者の意図通りにセットできるのはインドアフィールドの最大のメリット。
照明、音響などに工夫を凝らして狭さという短所を感じさせない造りにしなければならない。

同じインドアフィールドでも巨大な倉庫型のフィールドともまた異なる。
十分なスペースにリアルな街並みを再現するのではなく、サバゲーの本質的な面白さを体験できるゲーム性を重視したスペースを設計することにした。

サバゲーの本質、動く、隠れる、見つける、狙って撃つの基本行動に加えて、チームとして行動できる戦術性も兼ね備えたフィールド。

これらを念頭に置き、図面を描いていくことにした。

インドアフィールドのタイプ

インドアフィールドというと警察や軍隊の訓練などに使用されるいわゆるキルハウスを想像するかもしれない。だが、突入訓練とサバゲーは似ているようで異なる。

インドアフィールドには迷路のように入り組んだ構造になっているもの、バリケードを点在させたもの、リアルな街並みや建屋の内装をフルスケールで再現したものなど様々だ。
今回のJJバトルスポットの場合、広さから行ってフルスケール再現は無理。
敵の裏を取れて、ゲームが膠着しにくいということで迷路タイプを基本に設計することにした。



まずは不燃材の軽鉄と石膏ボードを使用して背の高さ以上の固定壁を立てていく。縦横直角だけではなく、斜めにも壁を配してプレーヤーの方向感覚を失わせるような構造にした。
テストプレーを行い、この壁は高さ2mに設定した。いくら図面でマップを書いてもそれが実際の立体空間に再現された際にどのように見えるのかはテストプレーをしてみないとわからないものだ。



平面的な戦いだけではなく、上下の立体的な戦闘にも対応できるようにした。
しかし、施設の都合上、天井高はわずかに3m強。とても2階建ての櫓などは構築できない。そこでキャットウォークをフィールド外周に配置することにした。



当初高さ150cmのキャットウォークを設置したが、初期テストプレーにおいて高すぎることが判り、100cmまで下げることにした。

キャットウォークに上がって眺めると高さ2mの壁越しに敵の頭だけが見え隠れする。索敵はできるが狙い撃つのは困難といった状況を作り、索敵の結果を味方に伝えるといった連係プレーが必要になるようにした。

立体的な射線設計

フィールド設計において重要なのが射線設計。どの場所からどこを狙えて、撃ち合いになるのかを想定して設計を行う。

キャットウォークの高さを生かした索敵と狙い撃ちはできるがそれだけではない。
壁の一部を意図的に低くしたり、穴をあけることで、立ったとき、しゃがんだ時、伏せたときなど、それぞれの姿勢変化に応じて射線の通りも変わるように設計した。



したがってJJバトルスポットには立っているだけでは敵を発見できないが、プローンすれば狙い撃てる射線といったものが複数存在し、それが立体的に交差している。
この射線の立体化により、思わぬところから頭や脚を狙い撃たれるといった状況が発生する。

もちろん上下の射線だけではなく、平面上の射線も想定している。横に移動すると壁が途切れ、その奥がわずかに見える、それ以上に移動すると再び見えなくなるといった前後構造を想定し、狙う速度と射撃の精度両方を駆使しないと敵をヒットできないような際どい作りにしている。これは同時に移動体への射撃テクニックも要求される。

距離感を錯覚させる照明づくり

とにかくJJバトルスポットはフィールドエリアが狭い。
これを打開するべく照明作りにもゲーム性を追求した。基本的にはローライトコンディション。つまり暗所での戦闘を想定している。
暗がりでは人の距離感覚が狂わされる。ただ暗くするだけではなく、天井に多くのダウンライトを設置し、明るいところと暗いところ、明暗のコントラストを強くした。

当然ダウンライトの真下にいれば敵から丸見えになってしまう。またダウンライトの光源の向きを調整し、逆光になるような箇所も作った。不用意に突撃しても逆光下で自分からは敵が全く発見できず、といったこともある。

暗所とダウンライトの組み合わせによって近くに敵がいるのに見えないといった視覚的な距離感を生み、長辺が24mというハンドガンでも楽々届く距離ではあるが、それを感じさせない設計にしている。

また複数のダウンライトはあらゆる方向に影を作る。バリケードや壁の裏で動く敵影を見つけて察知するといった緊張感を生む効果もある。

さらに階段や段差、バリケードなど足を踏み外しそうな個所やぶつかると危ない個所を照らすことで安全性にも配慮している。

また、これらダウンライトと天井のブルー蛍光灯はセフティからオンオフが可能にし、プレーヤーの好みでさらに暗所でのゲームが楽しめるようになっている。

演出上の照明

各キャットウォークにはブルーとレッドのLED照明を設置し間接照明としている。
フィールドを取り囲むように設置したブルーLEDは怪しさと幻想的な雰囲気を演出している。


またフィールド内に設置したジープの車体下には赤いLEDを使用。ポイントで赤いワークライトを設置して青い路地裏の奥に赤い光が差し込んでいるような奥行き感のあるライティングを施した。

モーションセンサー

人感センサーによるライトと音声トラップも設置した。プレーヤーがセンサー範囲に入るとLEDライトが点灯し、まるで敵に見つかってサーチライトで照らされたような演出効果を狙っている。

また、フィールド各所にセンサー音声トラップを配置。路地裏を通った際にセンサーが反応し音が鳴る。
引っかかったプレーヤーはドキッとすることはもちろん、この音や光を頼りに敵の位置を把握する手段にもなる。

音響による演出

インドアフィールドは音響面でも効果を演出しやすい。
サバゲー中にBGMを鳴らしながらプレーするユーザーも多い。今回はFPSゲーム風のBGMを3曲、オリジナルで作曲した。音楽はゲーム時間に合わせて5分とし、さらにゲーム中の残り時間を知らせるカウントダウンアナウンスも挿入した。
もちろんBGMは好みがあるだろうから、曲無しのカウントダウンのみというチョイスも可能にした。


仕上げとテイスト

アミューズメント施設内のサバゲーフィールドと言うこともあり雰囲気も重視した。
石膏ボードで作った壁にはレンガ風壁紙と樹脂モルタルで装飾し、エイジングも施した。


石膏ボード自体はかなり脆い素材でBB弾が当たると簡単に凹んでしまう。その上から粘りのある樹脂モルタルを施工することで表面の弾力性が増して保護するとともに、跳弾の抑制にもなっている。それでも凹むので施設保護と安全性の面からも0.8Jという威力規制を行った。

ジープインドアフィールドであるものの、撮影スポットとなりそうなジープも導入。
床への負担を軽くするためエンジンを取り外して設置した。
フロントウインドウも取り外したが、透明アクリル板を貼り、BB弾を弾くようにした。

最初は1/1スケールの軽戦車(II号戦車とか九五式軽戦車とか)などが欲しかったが、さすがに予算の都合もあり断念。
ドラム缶や木箱などにはエイジングやステンシルなども施した。

ストリート看板
また、フィールド各所にはテーマを決めてエリア化し、車庫、兵舎、武器庫、シェルター、市場などなど、荒廃した街並み、戦場の雰囲気を出すためのストリート看板や小物類も設置した。
エリア別にネーミングすることで作戦会議の際にも「兵舎を占拠して武器庫方面へ侵攻しよう!」などとコミュニケーションも盛り上がる。

フラッグホーンフラッグホーンはボックス内に設置した電子ブザー式。ボックスを開ける手間があるので走り押しを抑制でき、移動式なのでフラッグ位置を変更してプレーすることもできるようにした。

フラッグ
フラッグもアーミー、ネイビー、エアフォース、マリーンと4軍をイメージした名称にし、それぞの象徴となる看板を設置した。

今回必ずしもすべての提案が導入できたわけではない。消防法や施設保全、予算の観点から妥協せざるを得ない企画もいくつかあった。これらはまた次の機会に検討したいと考えている。

最後にもう一度テストプレーを行い、危険な箇所がないか、ゲームバランスはOKかなどを確認。照明関連、破損しそうな個所、危険な場所にはすべて養生を施し、小物類も固定した。

レギュレーションについては安全面・保全面からパワー制限を0.8J以下、セミオートオンリー、装弾数100発以下、ダッシュ禁止とせざるを得ない部分があったが、むしろハンドガン戦を想定している部分もある。この機会にハンドガン戦の面白さというのもぜひ体験してほしい。また、エアコッキングハンドガンオンリーのワンメイクマッチもとても楽しめるフィールドとなっている。

これらフィールドの造作以外にもレンタルガンや装備、備品類などの導入提案と手配なども行った。
またフィールド以外のシューティングレンジ、受付カウンター、更衣室の設置計画、公式WEBサイトの制作、レギュレーション制作、ゲームの運用方法、スタッフ指導、プロモーション展開計画などなど、あらゆる必要事項を企画提案した。

今回のように全くのイチからフィールド制作にかかわらせていただけたのは非常に楽しい経験だった。
アミューズメント施設内のサバゲーフィールドはサバゲー未体験でも気軽に楽しめるので、若年層も含めて多くの人にサバゲーの面白さを知ってほしい。
このフィールドから多くのサバゲーファンが生まれ、サバゲーマーケットの裾野が広がってくれることを望んでいる。

バトルスポット
千葉県千葉市中央区浜野町1025-240 CROSPO千葉浜野店 2F
JR浜野駅より徒歩8分
TEL 043-208-2151
http://www.battle-spot.com/
ハイパー道楽のレビューはこちら

2014/11/18

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