JANPS 2013 シューティングマッチ

JANPS 2013 シューティングマッチ

レポート: 石井 健夫

命中精度とスピード。そして様々に変化する射撃条件。これらの総合的テクニックを総動員し、満点=1920点を目指して世界有数のTOPシューターがシノギを削る。まさに拳銃界の最高峰競技会が、「NRAアクションピストルトーナメント」、通称“ビアンキカップ”だ。

大会は毎年5月、米国ミズーリ州コロンビアで開催される。1979年の初開催から来年で実に35回目という長い歴史を誇るこの大会は、日本のガンファン、とりわけシューター諸兄には「最も影響力のある人物」であるイチローナガタさんが1983年の初出場以来、1度も休まずに挑戦し続けている事もあり、まさに“永遠の憧れ”の対象となっている。

そんなビアンキカップのルールと精神はそのままに、射撃距離や制限時間をエアソフトガン用にアレンジ。また、「ターニンターゲット(=回転標的)」、「ムーヴァー(=移動標的)」、「電磁ロック機構付きのフォーリングプレート」といった、他に類を見ない超本格的なレンジ機材を投入し、毎年11月に静岡県掛川市で開催されているのが「JANPS」だ。

主催団体であるJANPS実行委員会の代表:ムラマツ トモヒロさん、副代表のハヤマ ヨシカズさんは、共に’90年代に本場アメリカのビアンキカップ出場経験を持つ。また、競技委員長のタカシマ ヒデマツさんは、かつてMGCが毎年開催していた「ジャパンビアンキカップ」に於いて、前人未到の3連覇という偉業を達成した経歴を持つ。

そんな彼らのシューティングに賭ける真摯な情熱が、なんと静岡県教育委員会に属する公共施設である「あすなろ体育館」での開催を実現・継続させているのだ。
また、このJANPSを「最も難易度が高く、チャレンジし甲斐のある大会」、「日本最高峰の大会」と位置づけているシューターも多く、参加者の半数以上が前日の搬入・設営に、全国各地から嬉々として集まってくるのが毎年の通例となっている。

2013年のJANPSは、11月9日(土)が設営・前日練習会、10日(日)が試合本戦、というスケジュールで、51名の参加者を集めて行われた...。

JANPSの開会式
会場となる体育館が解錠されるのは午前9:00。少しでも時間を有効活用するため、JANPSの開会式はその30分前に外で始まる。

その年シューティングシーンで輝いた人
「その年シューティングシーンで輝いた人」を紹介するのもJANPSの恒例行事。2013年は左からフルカワ ハルキさん(第23期APSカップ/ハンドガンクラス/フリー部門優勝)、サカイ タツヤさん(第28回JAPAN STEEL CHALLENGE優勝)、ヒラノ テツヤさん(第1回&第2回ELITE OPERATORS連覇)のお三方が讃えられた。右端は主催団体「JANPS実行委員会」代表のムラマツ トモヒロさん。

弾速規定は0.8J JANPSの弾速規定は0.8Jと定められている。その他、セフティ機能や出場クラスに合致した仕様であるか等、競技に参加する全ての銃に対して厳密なイクイプメンツチェックが行われる。
スクワッド 参加者は「スクワッド」と呼ばれるグループに分かれて4つのステージを順番に撃って行く。各スクワッドには「経験豊富かつ人物的にも優れた者」とJANPS実行委員会が認め、選任したスタッフが2~3名付き、初心者でも戸惑わず安心して競技ができるように配慮しながら進行する。

ジャパンビアンキカップ
JANPSはクラスやカテゴリーが細分化されているのでトロフィー(盾)の数が意外に多い。最も権威あるのはやはり、総合優勝者に与えられる「ジャパンビアンキカップ」だ。

賞品の山 賞品の山! スポンサーからの協賛品はもちろんだが、参加者各自が1点づつ何かしらのお土産を持参するのがJANPSの慣例となっている。使っていないトイガンや装備品を提供してもいいし、「地方名産品」でも良いのがユニーク。またイチローさんやトモ長谷川さん等、U.S.Bianchi Cup出場の日本人選手からは、本場ミズーリ州の本戦会場でしか入手できない記念品が提供される。
プレシジョンバイオBB弾GunsmithバトンからはプレシジョンバイオBB弾が全員に1袋づつ、参加賞として提供された。
コバヤシコウゾウさん ヒラノ テツヤさんJAPAN STEEL CHALLENGEのコバヤシコウゾウさん(左)と、ELITE OPERATORSのヒラノ テツヤさん(右)。自らも素晴らしいBIGマッチを主催・運営している彼等にとっても、JANPSはとりわけ「格の高い試合」としてリスペクトされている。
防寒対策 毎年11月の開催、という事もあり、防寒対策をあれこれ考えてくる参加者多数(笑)。幸い今年はそれほど寒くなかったが、射撃の待ち時間にコタツで寛げるのは良いですね!

全国各地から51名が参加
今年は全国各地から51名が参加。

“PLATE(プレート)” FALLING PLATE EVENT


FALLING PLATE EVENT 6枚並んだ直径8cmの円形標的を撃って倒す競技。的1枚に対し、1発しか撃てない。制限時間が来るとロックバーが作動し、当たっても倒れない。スタンバイ姿勢はハンズアップ。射撃姿勢は自由。

4m 4秒6発×2回
5m 5秒6発×2回
6m 6秒6発×2回
7m 7秒6発×2回
<計48発/480点満点>
素早く正確なドロゥは必須科目 ハンズアップからの素早く正確なドロゥは必須科目。特にJANPSでは1発のやり直しもできないところがプレッシャーをさらに高める。


唯一のジュニア選手
唯一のジュニア選手として「10歳以上用」のガン(=KSC/G17U18)で競技を行ったムラマツ タカヒロ君。主催者ムラマツさんのご子息なのだ。銃の性能に合わせ、ジュニア部門では射撃距離がやや近く設定される。

タイマーの操作。用紙への記録
タイマーの操作。用紙への記録。倒れたプレートを紐を引いて起こす作業。スタッフだけでなく、参加者も一丸となって試合運営を行うのがJANPS。みんなこの競技を愛しているのだ。

スタンバイ状態から素早くプローン
射撃姿勢は自由なので、6m、7mではプローン(=伏せ撃ち)で確実性を求めるシューターも多い。しかし「立ってハンズアップ」のスタンバイ状態から素早くプローンに入るには、熟練のテクニックが必要だ。手前はトモ ハセガワさん。

“BARRICADE(バリケイド)” BARRICADE EVENT


BARRICADE EVENT
転写式で弾痕が残る専用標的紙に6発を撃ち込む競技。標的は制限時間内しか正面を向かない。スタンバイ姿勢は両掌をバリケイドの板面に密着させた状態。射撃姿勢は自由だが、足がバリケイドと同幅の枠から出てはいけない。

4m 4秒6発×左右1回づつ
5m 5秒6発×左右1回づつ
7m 7秒6発×左右1回づつ
8m 8秒6発×左右1回づつ
<計48発/480点満点>

狙う標的の中心部「Xリング」は直径4cm
このステージの最大距離は8m。狙う標的の中心部「Xリング」は直径4cm。ガスブローバックハンドガンとしては性能の限界に近い数字。

カップガン
ガンごとバリケイドを握り込む独特の構え方。このためにいわゆる「カップガン」には、スライドを包み込むようなデザインの「シュラウド」や板面に銃を固定する助けになる「ウィング」が搭載されている。

マック堺さん マック堺さんはカップガンではなく、普通のダット付きレースガンで参加。しかし彼なりの工夫でバリケイドを活用して銃を固定し、射撃精度を高めている。

スコアラー
標的の弾痕を確かめ、点数を計算するスコアラーも、JANPS実行委員会が指名した「信用のおける人物」が担当する。撃ち終ったシューターが自分の標的に触れることは許されない。ドキドキしながら採点を見守るのはGunsmithバトン、オーツカ社長。

“PRACTICAL(プラクティコゥ)” PRACTICAL EVENT


PRACTICAL EVENT
制限時間内に規定段数を、指示された射撃方法で2枚の専用標的紙に撃ち込む競技。標的は制限時間内しか正面を向かない。スタンバイ姿勢はハンズアップ。

4m 2秒1発づつ、フリースタイル
4m 3秒2発づつ、フリースタイル
4m 5秒3発づつ、ウィークハンドオンリー

5m 3秒1発づつ、フリースタイル
5m 4秒2発づつ、フリースタイル
5m 5秒3発づつ、ストロングハンドオンリー

7m 5秒1発づつ、フリースタイル
7m 6秒2発づつ、フリースタイル
7m 7秒3発づつ、フリースタイル

8m 6秒1発づつ、フリースタイル
8m 7秒2発づつ、フリースタイル
8m 8秒3発づつ、フリースタイル
<計48発/480点満点>

ストロングハンドオンリーの射撃 ストロングハンドオンリーの射撃はU.S.Bianchiにはないアレンジ。制限時間5秒で全弾6発を8㎝径の10点リングに撃ち込むのは至難の業!

かなりの練習を積まないと
7m、8mといった距離では制限時間いっぱい有効に使い、狙い済ました射撃を行う事がハイスコアの秘訣だが・・・かなりの練習を積まないとこの「時間感覚」は身に付かない。

競技に慣れたシューターはプローンを駆使
この競技に慣れたシューターはプローンを駆使し、Xリングにズボズボ集弾させる。筆者=イシイ タケオ(左)とヤダ マサシさん(右)は、共にU.S.Bianchiの経験者。

ベテランシューターのミズタニ テツヤさん
ベテランシューターのミズタニ テツヤさん(左)から説明を受けるバトンアキバ店長=デイヴ カネコさん(右)。今年は練習期間が短くて叶わなかったが、来年はプローンで満射を目指す!

“MOVER(ムーヴァー)” MOVING TARGET EVENT


MOVING TARGET EVENT
移動する専用標的紙に各距離から規定弾数(6発もしくは3発)を撃ち込む競技。標的が見えている時間は約3.6秒。スタンバイ姿勢はハンズアップ。

4m 6発、右⇒左、左⇒右 各1回づつ
5m 6発 右⇒左、左⇒右 各1回づつ
6m 3発 右⇒左、左⇒右 各2回づつ
6m 3発 右⇒左、左⇒右 各2回づつ
<計48発/480点満点>

スティックシフトを装備したカップガン
移動標的の中心に弾を当てるためには、「ちょっと先」を狙わなければならない。これを「リードを取る」と言い、普通のガンを使う場合には各距離に応じて狙点を変えなければならない。しかし「スティックシフト」を装備したカップガンなら、常に中心を狙えば良い。ただし事前のデータ取りと精確なリード量の設定、そして競技中の正しい操作が必要となる。

フリーダムアート代表のマルヤマ シュウゴさん フリーダムアート代表のマルヤマ シュウゴさん。ご自身で開発されたマルイ/グロックベースのフルハウス・カップガンを使用。

モウリ トモヒロさん
PMC(=プレートマスターズチャンピオンシップ)で前人未到の4つ☆名人(=満射4回達成)を記録しているモウリ トモヒロさんですら、ムーヴァーでは23失点。

トモ ハセガワさんもかなり苦戦 トモ ハセガワさんもかなり苦戦。タイムオーバーの「カーテン撃ち」と、ガントラブルで1発撃てなかった回があり、40点を落とす。

JANPS競技委員長タカシマ ヒデマツさんの射撃
JANPS 2013でトリ(=Aスクワッドのシューターの中で、他の3ステージ合計点が最も高く、ムーヴァーを最後に撃つ人)を務めるJANPS競技委員長タカシマ ヒデマツさんの射撃と、それを取り囲むギャラリー。

結果は 結果は・・・惜しくも遠距離(6m or 7m)で放った1発が8点リングに飛んで「478点-32X」。しかし今大会でのムーヴァーTOPスコアを堂々獲得!

1発が8点リングに

JANPS 2013の優勝者 ムラマツ トモヒロ
JANPS 2013の優勝者はナント、主催者のムラマツ トモヒロさん! そして競技委員長のタカシマさんが2位(笑)。しかしあれほどの激務をこなしながらのこの成績には、参加者全員もちろん納得! 素晴らしい!
●1位 ムラマツ トモヒロ<1908点/141X>
●2位 タカシマ ヒデマツ<1906点/162X>
●3位 イシジマ ツネハル<1901点/146X>

ストックガンクラスのTOP3
ストックガンクラスのTOP3。
●1位 イマムラ ユウジ<1786点/93X>
●2位 ムナカタ トシヒコ<1750点/85X>
●3位 イケダ ナオアキ<1591点/93X>

ニューカマー(初出場)クラスのTOP3
ニューカマー(初出場)クラスのTOP3。
●1位 マスダ ノリユキ<1804点/94X>
●2位 バトン オーツカ<1788点/115X>
●3位 デイヴ カネコ<1772点/87X>

アンビシャスコース(2競技)のTOP3
アンビシャスコース(2競技)のTOP3。
●1位 サイキ ケンゴ<853点/55X>
●2位 ヨシダ タツヤ<851点/54X>
●3位 モリヤマ ケン<846点/58X>

エルダークラス(55歳以上/2競技)のTOP5
エルダークラス(55歳以上/2競技)のTOP5。
●1位 マスダ ノリユキ<917点/72X>
●2位 シンドウ タカオ<883点/62X>
●3位 タケイ ヒロズミ<881点/65X>
●4位 コダマ ヨウイチ<847点/53X>
●3位 モリヤマ ケン<846点/58X>

ジュニアクラス(18歳未満/2競技)優勝
ジュニアクラス(18歳未満/2競技)優勝。
●1位 ムラマツ ヒロタカ<901点/68X>

レディス(女性)1位
レディス(女性)1位。
●1位 イシイ ケイコ<1832点/117X>

LEMサプライとプロスペックディザイン
LEMサプライとプロスペックディザインの共同ブース出店。

フリーダムアート
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上越コレクターズ
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名人ショップ
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2013/11/27


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