ターミネーター4における近未来銃器学
解説:石井 健夫

ターミネーター4における近未来銃器学


2018年、人類とマシンの攻防

冒頭からスカイネット拠点への激しい攻撃作戦を展開する人類抵抗軍。“タンクキラー”の異名を持つA-10AサンダーボルトIIによる凄まじい空爆、複数のUH-1によるヘリボーン作戦の描写が度肝を抜く。2018年時点では「審判の日」以前の装備や兵士(特に米軍関係)がまだ相当数、残存している様子が見て取れる。

スカイネット拠点への激しい攻撃作戦を展開

ここで主人公ジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)はC-MOREサイトとSUREFIREのフラッシュライトを装備したM4を使用。ロアレシーバー、セレクター部分の文字が白と赤のプリントである事から「HK416」と解る。右側面が写ったスティール写真を拡大してみるとロアレシーバーに「Heckler & Koch」の文字、さらにボルトにも「Hkロゴマークが確認できる。

HK416を構えるジョン・コナー従来のガス直噴(=リュングマン)方式と異なり、HK416には閉鎖(=ショートストロークピストン)方式のガス作動メカニズムが採用され、AK並みに汚れに強く、少しの手入れでも快調に作動すると言われている。

HK416は、メンテナンスの手間や時間に多くを割けない核戦争後の未来世界ではうってつけだ。
また頭部に複数命中させられれば、少なくともT-600型ターミネーターに対しては.223(5.56mm×45)弾でも破壊・無力化の効果があるようだ。

ショートストロークピストン方式のHK416
ジョンの戦友ジェリコ大尉ジョンの戦友ジェリコ大尉が持つ短いFAL風のアサルトライフルはアメリカ製コピーの「SA58」だろう。R.A.S.及びSUREFIRE付きの21世紀仕様である。

この後に続く「ヘリの緊急離陸→ダメージを負って操縦不能→墜落横転」という衝撃体験をあたかもコックピットに同乗しているかのようなアングルで観客にも味あわせる長廻しシークエンスには圧倒される。
ヘリの緊急離陸から脱出するジョンに危機が上半身のみの姿で襲ってくるT-600の姿は『ターミネーター』第1作のクライマックスを髣髴とさせる。
サイドアームのHK Mk23で頭部を連射するも、T-600はビクともしない。結局この戦いはヘリに搭載されていたM60LMG(D型?)で決着!
サスガはライフル弾、威力抜群である。手馴れた銃でも上下逆さまだったらかなりモタ付くと思うのだが、サスガ歴戦の勇士ジョン・コナー、スムーズな射撃である。M60を連射しながら “ウォー!”と吼えるのはハリウッドの伝統か?

記憶を失った男、マーカスの数奇な運命


街をさまようマーカス・ライトいっぽう、自分が誰なのか思い出せぬまま街をさまようマーカス・ライト(サム・ワーシントン)が遭遇したT-600はすぐさま、右腕に装着したミニ・ガン GE M134で銃撃! 
画面からの判断だが距離は50mもないし、飛んでくる弾は.308(7.62mm×51)、しかも高性能なセンサーで正確に撃たれては、最初の数発で致命傷を負うはずなのだが、もちろんそうならないのが映画のお約束。
T-600の兵装まあ、風雪に晒されてセンサーもかなり痛んだり汚れたりしていた可能性はあるわけだし、M134のバレルも数多く撃てば加熱して傷み、精度は落ちていたかもしれない。

このT-600は左腕に40mmランチャー(M203か?)を持っているのだがここで銃器オタク的視点に立つ場合、両火器がジャムった場合にはどうするの? という疑問が浮かぶ。

実際M134は頻繁にジャムを起こす。素早いクリア技術の習得はミニ・ガンナーの必須条件。40mmランチャーはそれ自体単純構造のシンプルな武器であるが、あくまでも片手が空いていて排莢&装填がスムーズに行えるなら、の話。修理専用小型ロボットが随伴しているとか、小型メカニカル・アームが脇腹の辺りから伸びていたりすれば良かったのだが。

カイル・リースとレミントンM870 マーカスは、後に過去に送られジョンの父親となるカイル・リース(アントン・イェルチン)とここで出会う。
カイルはピストルグリップのショットガン(ドアブリーチング用のマズルブレーキとサイドシェルホルダー付きのレミントンM870)を手馴れた感じで使っているのだが、瞬時にマーカスに奪われてしまう。
ターミネ-ターとの因縁の対決 カイルT-600やHK(ハンターキラー)の攻撃を辛くも乗り切った後、カイルの隠れ家を訪れたマーカスは、ショットガンのグリップに紐を取り付けて手首に通しておけば先程のように容易には獲られない事を教える。
これは『ターミネ-ター』第1作でタイムスリップしてきたカイルがまずポリスカーからショットガン(イサカM37)を盗み、路地裏でストックを切り落とし、さらに手首に紐で通し、コートの下に隠す、という一連の行動に結びついてゆく。

ブレア・ウィリアムズハンターキラーとの壮絶な空中戦の末に撃墜され、辛くも脱出したA-10AサンダーボルトⅡの女性パイロット、ブレア・ウィリアムズがPDWとして身に付けていたのが、「映画に登場する大型拳銃」としてはスッカリポピュラーになった感もあるIMIデザートイーグル

様々な口径バリエーションが知られているが本作に登場したのは「.44マグナム」だ。
装弾数が少ない上に重く、何よりハンティング用、娯楽射撃用、というイメージが筆者には強いので、この手のアクション映画での登場にはいつも違和感を覚える。アニメ的な「画づくり」には良いのかもしれないが。

好意的に見れば資材不足の近未来戦争ゆえその場にあるものを使うしかなかった、と解釈できるが、この手の映画の監督やプロデューサーにはいまだ根強い「マグナム信仰」が残っているのかも知れない。それは後に戦死したジェリコ大尉の弟、バーンズの愛銃として登場するLARグリズリーマグナム(.50AE)にも当てはまる。

バーンズちなみにバーンズの逆恨みを買ったマーカスがこのグリズリーで至近距離から撃たれるが、彼の骨格はT-600のそれより数段強化されているとみえ、さしたるダメージも負わない。
それどころかこのシーン前後に行う地雷原の走破や、何十発ものライフル被弾にもビクともしない。
マーカスに用いられているテクノロジーとは?それは水中でジョンを襲うウナギ形のターミネーター「ハイドロボット」が.223や.45ACP(ジョンのサイドアーム、HK Mk23)で簡単に無力化するのと対照的である。
マーカスに用いられているテクノロジーは次世代型であり過去作『T1』~『T3』の主役メカだったT-800の基礎になる物、という位置づけと考えられる。

T4に登場するターミネーターたちの兵装


劇中に登場する印象的な敵メカとして、まずは巨大ロボット型の「ハーベスター」がある。
肩に背負ったプラズマ砲の威力は凄まじいが、この時代=2018年には、『ターミネーターII』の冒頭でT-800のエンドスケルトンが持っていたような小型タイプがまだ完成していないらしい。
従って「モト・ターミネーター」にはM134が2門、左右に取り付けられている。あれだけ撃ちまくるのに必要な弾薬をどこに収納しているのか? 

またその積載作業は誰が(何が)どのようにやっているのか? はともかく、ジャムに備えて(?)2門を搭載しているのは理に適った設定だ。


ハーベスターに捉えられトランスポーターで運ばれた人々が収容されるサンフランシスコのサイバーダイン・セントラル。その警備に当たるT-1は『T3』に登場した物の発展&大型化版らしい。両腕に搭載されたGE製ガトリング砲もそれなりに大口径のモデルに換装されているようだ。一緒に並ぶとT-600が持つM134が文字通り「ミニ・ガン」に、つまり小さく見える。また、このT-600の左手は空いており、.223口径のブルパップ「FN F2000」を携えている。

FN F2000を持つT-700FN F2000は工場内を警備しているT-700の標準兵装でもあるようだ。

ここに単身乗り込むジョン・コナーのM4は冒頭で使用していたHK416ではなく、Coltレシーバーのものに変わっている。

C-MOREサイト付きで、ハンドガードにはこれまたC-MORE製の小型ショットガン、2008年に米軍制式採用を勝ち取ったM26 MASSをマウントしている。

C-MORE社は‘90年代後半から映画産業とのタイアップを盛んに行っているので、本作でもM4のデザインを手掛けた可能性がある。しかし銃撃シーンでM26 MASSを効果的に使用していないのはやや残念だ。

スカイネット心臓部での壮絶な戦い!


T-800と戦うジョン クライマックスではT-800のプロトタイプとジョンが死闘を繰り広げる。
もはや通常の銃では歯が立たず、ストックと専用のフレームが付いたスタンドアローン(独立)型のM203ランチャーを武器とするが、最強の敵=T-800に与えられるダメージは少ない。

M203ランチャーを構えるジョン

ジョンの妻 妊娠中のケイト・コナー2018年の人類抵抗軍は辛くも全滅を免れ、ジョン・コナーも生命を繋いだ。
しかしスカイネットは遂に「21世紀初頭までの人類文明の遺産」である通常の兵器・弾薬では歯が立たないターミネーター、T-800を完成させた。さらに乗り物を維持・運用するための燃料や銃のための弾薬もやがては枯渇するだろう。

『T1』~『T3』までの過去作に断片的に示された映像でも、この未来戦争がこの先、人類抵抗軍にとってさらに過酷で苦しい状況になる事を我々は知っている。恐らく『ターミネーター4』は、我々に馴染みのある現用銃器が使われる最後のエピソードになるのではなかろうか?

最後に、作品中で非常に気になる点を見つけたので皆さんにご意見を求めたい。
カイル・リースら、スカイネットに囚われた人々が収容所に到着した場面で、追い立てられる人々を見下ろす建物の窓に4人の人影が見えるのだ。いったい彼らは誰なのか? 筆者には、あれがT-600やT-700とは思えないのだ。遠いシルエットなのだが柔らかな動きや物腰には人間らしさが感じられる。

スカイネットには人間の協力者がいるのではないか?
そうだとしたら彼らは誰で、その理由は何なのか?

既に製作が開始されているという『T5』、『T6』には、彼らが深く関わってくる気がしてならない。

銃は人を殺さない。人が人を殺すのだ。

2009/11/10

■解説者プロフィール
石井 健夫(いしい たけお)
1967年12月、東京都生まれ。銃器レポーター、射撃選手、映画評論家。月刊COMBATマガジン(WPP刊)、ストライク・アンド・タクティカル・マガジン(カマド刊/隔月)にてレギュラー執筆。海外の試合や訓練にも積極的に参加する体験派ライター。世界最高峰ハンドガン コンペティション「NRAビアンキカップ」マスター シューター、IDPA(インターナショナルディフェンシブピストルアソシエーション)エクスパート シューター。
●DVD『Strike and Tactical DVD Magazine vol.0 実弾射撃教本<入門編>石井健夫の良くわかる実銃シューティング』好評発売中



■作品DVD・BD情報
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© 2009 T Asset Acquisition Company,LLC. All Rights Reserved.
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■YASのハミダシレビュー
主人公のジョン・コナーは、あのガン=カタで有名な映画「リベリオン 反逆者」のクリスチャン・ベイル。彼のガンアクションは優雅さすら漂う。ストーリーは息付く暇もなく、一気に展開。2018年の近未来戦争が最新の映像技術で表現される。とくに好きなシーンは「ターミネーター2」へのオマージュともいえるモトターミネーターとのカーチェイス。
登場銃器も豊富だし、ぜひこれはブルーレイを買って観たい作品!!


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