考察 ブローバック ガスガン

考察 ブローバック ガスガン 第2章

ブローバック・エアガンの歴史 ~マグナ前史~

さて、実銃の話ばかりしていても始まらないので、そろそろトイガンの方に話をむけよう。

今でこそ珍しくもなんともないものの、ブローバック・エアガンと言うのは、トイガン・フリークにとって、一種待ち望まれた存在であった。特に、MGCの93Rなど現在固定式と呼ばれるカテゴリーのガスガンが登場し、従来のエアコッキングの座を奪って以来、エアガンファンの間ではその感が一層強まっていたのではないだろうか。エアコッキング主流の時代は、発射の際にコッキングするといったアクションが存在したが、固定式の銃にはそれすら存在しないからだ。引き金を引くだけで、スパスパ連射できる固定式エアガンは、実用面では便利な反面、それゆえに何か空しさを感じる存在になってしまったように思う。後期、発射機能に関係なく、スライドが若干動かせるモデルも存在したが、かえって、空しさを強調するだけの存在にしかならなかった。

エアコッキングにも、ある種ブローバックと呼べるモデルが存在した。ヨネザワ/マツシロのスプリング・バック方式の流れを汲む、エアコッキング・ガンがそれである。これらは、いずれもライブカート方式を取っており、引き金を引き、弾(最初はツツミ弾、後にBB弾使用の物が出た)を発射した後、トリガーアクションによりスライドが機械式でリリース、スプリングの力により、ブローバック(?)し、空の薬莢がイジェクトされると言う物で、後退したスライドを再び、手動で押し込むと、次弾がロードされると同時に、エアコッキング(プッシュコッキング)される仕組みになっていた。44オートマグ、ロングスライドのナショナルマッチなどが発売された。オートマグはともかく、ナショナルマッチの方は、スライドだけでなく大きなシリンダーが後退するあまり格好の良いもではなかった。マルゼンの時代になり発売された、ナショナルマッチやSIG/P226は、シルエットもしっかりしており、なかなか、ファンをなかせる存在であった。ライブカート式のため、カート付きで現存する物にはなかなかお目にかかれない。もしマルゼンの方のカートをお探しのかたがおられたら、以外と問屋に有ったりするので、一度駄目もとで最寄りガンショップに問い合わせてみる事をオススメする。

最初のブローバック・ガスガンと呼べる製品は、恐らく、東京マルイのS&W M59である。この製品は、いわば、前述のスプリングバック式エアガンのガスガン・バージョンと言える製品で、厳密には、ガスブローバックではないのだが、手動ではなく、ガス・オペレーションにより、スライドを稼動させると言う点で、これまでの製品と比べ明らかに特筆すべき製品であった。仕組みを簡単に説明する。

この銃はガスがノンチャージの状態のときには、スライドがスプリングの力で後退した状態となっている。ガスチャージすると、銃内部のシリンダーにガスが流入し、そのガス圧でスライドが前進し、閉鎖状態となる。この状態でトリガーを引くと、シリンダーのバルブが解放されバレル内にガスが流れ、BB弾が発射される。内部のガスの解放によりシリンダー内が減圧すると、スプリングの力でスライドが後退、そのアクションに連動し、シリンダーのバルブが閉じ、ガスが再びシリンダーに圧力をかけ、再度スライドが前進するという仕組みとなっていた。

後はこの繰り返しなのだが、グリップ内にリキッドガスのボンベを収めた関係で、弾はスライド内に収めたため、折角ブローバック・アクションをもつのに、リアリティの欠けるレイアウトになってしまったのが残念なモデルであった。

この方式とほぼ同じ方式で、ヨネザワからブレン10が、ポイントからセンチメーターマスターなどが製品化された。

次に製品化されたのが、2WAY方式と呼ばれるブローバック方式のガスガンである。メーカーとしては、タナカ、マルシン、ポイントより、ほぼ同時期に複数のモデルが製品化された。設計は何れも、六人部氏の手によっている。

この方式をもつ製品で、特筆すべきモデルは、マルシンのガス・オペレーティングとなづけられたシリーズである。このシリーズは、日本トイガン史上初、また、現在でも唯一ハンドガンでモデルアップされたライブカート式のブローバック・ガスガンである。コルト・ガバメントS’70が1989年に発売され、 CZ75、ベレッタ92Fと計三種類がモデルアップされた。現在でも細々ながらではあるが販売が続いている息の長い製品である。

タナカからはコルト・ガバメントが、ポイントからはワルサーPPKが、それぞれこの2WAYの方式で1990年初めに製品化されたが、両者はケースレスの形態を取っていた。

2WAY方式の特徴は、2段式のトリガーアクションにある。トリガーを一段引くと弾が発射され、更にもう一段引くとスライドが後退する機構であった。形的にはプレシュートの機構であるのだが、この2段引きのトリガー操作はあまり好評ではなかった。

其処で、次に登場したのが、1WAY方式をもつ製品で、2WAYと同じく、六人部氏の手による設計で、タナカから発売された。これは、1段階のトリガーアクションで、スライド後退と弾の発射を行う物で、ロータリーバルブと呼ばれる新型バルブによりこれを実現した。仕組みとしては、トリガーを引き、メインバルブを解放すると、シリンダー内にガスが流入し、スライドを後退させる。スライドが一定距離後退すると、ロータリーバルブが切り替わり、シリンダー内のガスがバレルへ流出、弾を発射するというものである。

タナカからは、1990年春にベレッタ1935が、1990年末にはコルト380等が発売されたが、2WAYのときと同様に、本体内にガスボンベをもち、マガジンは割り箸マガジンと呼ばれる、旧来の形式を取っていたため、ファンを十分に満足させる事はできなかった。

そして、この方式で、ブローバック・ガスガンを一気にトイガン界のメジャーに押し上げる製品が1991年夏に登場した。固定式ガスガンのエポックメイカーであり"うちはスライドが稼動するガスガンはやらない"と公言していたMGCが言をひるがえし発売した、GLOCK17シリーズである。リアルな外観に加え、作動の確実さ快調さは、他の同時期のブローバック・ガスガンを完全に圧倒していた。GLOCK17というモダーン・オートの代名詞の様な銃をモデルアップした事も、今まで、実性能では、固定式ガスガンには到底及ばないという、ブローバック・ガスガンのイメージを一新するのに一役かったのかもしれないが、とにかく、爆発的なヒットとなり、その後多くのバリエーションを加え、現在に至るまで、実に20万丁を超える販売数となった。

この製品は、小林太三氏設計による作品で、同氏のMGC社員(当時副社長)としての最後の製品となった。同氏はMGCを去った後、タニオ・コバと言うデザイン会社を設立、MGC/P7シリーズ、JAC/ハイパワーシリーズなどを手がけたが、基本的には、このグロック17シリーズと同様の構造を持った製品であった。

一方タナカも、負けじと、六人部氏作でリアル指向のP08シリーズを同時期の1991年夏に投入している。作動面では、グロック17 に及ばなかったものの、ショートリコイルを再現するなど、モデルガンに比肩するリアルなディティールをもった、ブローバック・ガスガン初期の名作とよべる 1作となった。

さて、MGCのGLOCK17シリーズの登場により、販売成績としては一挙にメジャーの地位を確立したブローバックガスガンであったが、性能的には、まだ固定式ガスガンには及んではいなかった。

これは製品として未成熟というレベルの問題ではなく、初期1WAY方式の最大の欠点とも言える機構による物であった。1WAY方式では、まずスライドを後退させ、そのアクションにより、バルブを切り替え、BB弾を飛ばすが、この機構だと、スライドが後退している際中に、弾を発射する事になる。このため、バレル(とフレーム)には、スライドが後退する反作用で、前進しようとする力がかかり、実際には手首を支点にお辞儀してしまうのである。結果として、着弾位置は正標準より、かなり下となってしまう。サイトの設定によりある程度の矯正は可能だが、どの程度下へお辞儀するかは、当然銃のコンディションのみならず、射手によりかわるため、根本的な解決とはなり得なかった。

このため、爆発的なヒットをみたにもかかわらず、アキュラシーを求めるユーザーは、相変わらず、固定式を使用しているという現状であった。

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※本記事は1998年6月22日に「とむべあ」さんが自身のWebサイト「Wildbears」にて掲載されたものを、ご本人の了承を得て転載させていただいています。10年前の記事ではありますが、その内容は非常に興味深く、共感しましたので、ハイパー道楽への転載許可をいただきました。基本的には全文とむべあさんの文章をそのまま掲載しています。


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